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魔弾




一人の少女の手に収められたのは、一丁の拳銃。

カルデラの剣と相反するように、染められた朱色の武器だ。



目を見開きながら、未だ驚いた表情を浮かべるカフォン。


だが、その一方で、



「ズルイ!」




カルデラが大きな声を出して、抗議の言葉を口にするのであった。








「っ、ズルイと思いませんか!? 私のは振るどころか持ち上げることさえ出来ない武器だっていうのに!」

「まぁまぁ、そう怒らないでー?」

「ぅぅぅー! だって!」

「うーん……でも、あれだよねー? あ、もしかしてカルデラちゃん、あの人の事で悪口とか言ったりした?」

「え………」

「そっか……言っちゃったんだねー?」

「えええっ!? たったそれだけで、あんな仕打ちしますかっ!? こ、子供過ぎじゃありませんか!?」

「うーん……ど、どんまいー?」


そんなー!? と騒ぐカルデラを宥めるアーチェ。


そんな彼女たちから離れた場所では、神宿がカフォンから銃を受け取り、その構造を深く観察している真っ最中であった。



「ね、ねぇ……こ、これって何なの?」

「ん? 何って銃だけど」

「銃? ねぇ、銃って何?」


聞き慣れない言葉に首を傾げるカフォン。


どうやらこの世界には、銃という武器は未だ開発されていないらしい。



……だとするなら、何故開発もされてもいないこんな武器を大賢者ファーストが作ることが出来たのかは謎として…




「うーん、それにしても…リボルバー、だよな。これって」



神宿はそう呟きながら、銃弾が納めれられている箇所となるシリンダーを開く。

だが、そこには、



「は?」



銃弾が込められているはずの六つの穴。そこにあるはずの弾が一つも装填されていなかった。



(いやいや、ちょっと待てよ。そんなわけないだろ、普通に考えて……弾一つぐらい、用意して…)



と、神宿がそこまで考えた、その時。


ふと、一つの可能性に神宿は気づいた。

そしてーーー



「なぁ、師匠! ちょっと、頼みがあるんだけど」












場所を移動して神宿たちは今、男子寮の外にある人気のない小さな広場に来ていた。


そして、この場の周囲には予め師匠であるアーチェには、魔法のバリアーを展開してもらっている。

今はカルデラと何やら話し込んでいる様子だが…。


そんな広場の中央にて、




「こ、これを…入れたらいいの?」

「ああ、それでいいから」



神宿に言われるがまま、カフォンはその手にある、紅の銃弾をシリンダーに装填する。




その一弾は、アーチェに頼みこんで魔力だけで形成してもらった試作段階の銃弾だ。


急だったこともあり、弾はそれ一つしかないのだが、




「よし。それじゃあ、あまり周りの事とか気にしなくていいから、その指にかけてるやつを引いてみろ!」




そう言いながら、少し後ろに下がりつつ様子を伺う神宿。




「ええ……わ、わかったわよ……」



カフォンはその手にある未知の武器を震える手で握りしめながら、深く呼吸を整えた。


そしてーーー指をかけ、




「ッ!!」




そのトリガーを引いた。















「「「「え?」」」」









がーーー何故か、何も起こらない。


カフォンを除く神宿たちもまた、その結果に表情を固まらせていた。



本来、神宿の知る知識の中では、銃はトリガーを引く事によって銃弾は撃ち出される仕掛けとなっている、そのはずなのだが、



(……やっぱり、普通の銃じゃないってことなのか?)




未知の銃。

その使い方すら分からず、難しい表情を見せる神宿。

だが、ーーーーーーーーーーーーその時。






《バレット魔力量ヲ確認》






それは突然の事だった。

その機械的な音声は、他でもないカフォンの持つ銃から聞こえてきたのだ。



「え?」



怪訝な表情で、カフォンは自身の持つ銃を見つめる。

その間にも、声は勝手に喋り続け、





《魔力測定、完了。魔弾ーーーーフレイムバレット。発射ヲ許可シマス》




ついには、攻撃の合図を言葉にし始めた。



「っ!? カフォン! 銃を上に向けろ!!」

「え、えっ!?」

「早く!!」


神宿の声に戸惑いながら、無我夢中で銃を空に向けたカフォン。



そして、その次の瞬間。






「「「「!?」」」」


銃身に一つの小さな魔法陣が展開された、その直後。


ドォン!!!!!! という強烈な音と共に、銃口からは銃弾ではないーーーーー高速の火炎弾が空に向かって発砲された。





そして、アーチェのバリアを強引なまでに突き破りーーそこで力尽きたように炎は四散して、消えてしまったのだった。







「う、うそ、だろ…っ……」



賢者が張ったバリアを打ち破った。


神宿がその光景に開いた口が塞がらずにいた。



その一方でカフォンもまた銃を撃った際の反動で地面に倒れていたが、その顔には未だ驚愕の表情が見て取れ、




「……何なの、これ…」




そう呟きながら、カフォンはその手にある武器を見つめるのであった。




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