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魔法具



ーーー純藍の剣。

それは他の色を許さない、純粋な藍一色で染め作られた長剣だった。


「うーん。多分だけど、この剣はカルデラちゃんの適性を見極めて作られたものだと思うんだー?」

「作られたって、ここでか?」

「うん、あれでも一応大賢者だから」


と、深々と剣を観察しながら話し込む神宿とアーチェ。

ーーーそんな中で、





「あ、あの……こ、これ! どうでもいいので、早く戻してくれませんかっ!?」




そこには、剣を持つーーーいや、剣から手を離せない泣きっ面で大声を出すカルデラの姿があった。

というのも、



「お、重い、んですよ、こ、これ!」


現状において。

純藍の剣の柄は今、彼女の手に乗った形になっている。

しかも、またこの剣が物凄く重いときたのだ。



「……っていうか、そんなに重いんだったら、離せばいいんじゃねえのか?」



と、そう尋ねる神宿。

ーーー全くその通りですあり、側から見れば、それは剣から手を離す。

その行動で、事は済むように見えただろう。

だが、一度考えて欲しい。




離す動作すら許されない、そんな激重の剣を持たされた人間はどうなるだろう?





「そんなのわかってるんですよ!! 離せないから助けてって言ってるんですっ!お願いしますから、早く戻してください!! じゃないと私の手、このまま剣と地面で押しつぶされちゃいますからっ!!」



怒りと泣き、二つを両立させるカルデラの手はもう既にプルプルと震え出し、そろそろ限界が近いらしい。


だが、カルデラが持てないような剣を果たして神宿が持てるかどうかすはわからかい。


だから、……どうにかしてやれよ、と視線を向ける神宿に対し、アーチェは小さく息をつきながら、





「はい、これで大丈夫だよー?」





ひょい、と。

その重い剣を難なく片手に持ち上げるのだった。













「…まさか、師匠がそんな怪力バカだったなんて、知らなかった」

「えっ、ちょ、トオルくん!? それ本気で言ってるの!?」



神宿の発言に慌てるアーチェ。

いや冗談だよ、と言いつつ神宿はテーブルの上に置かれた二枚の紙を見つめる。


「それにしても、賢者って何でもありなんだな」

「いやいや、あの人だけだからねー? あんなバケモノクラスの賢者なんて、滅多にいないよー?」


自分は違うよ、と冷や汗を流しながらそう告げるアーチェ。


「……本当、どうだか…」


神宿はそう呟きながら、視線を離れた場所へと向けた。

すると、そこにはーー





「んーーー」

「何て言うか、警戒した猫みたいだな」






離れた場所から、ファーストから貰い受けた紙を睨みつけるカルデラの姿と、また苦笑いを浮かべるカフォンの姿があるのだった。







「まぁ、カルデラが剣、っていうの何となくわかるんだけど」

「え、どうして」

「だって、お前の父親。剣豪なんだろ?」

「あ」


その指摘に遅れ気づくカルデラ。

実際、どういう経緯でその剣が渡されたのかは分からないが、小さいまででも関わりはあるだろう。


だが、それは一先ず置いておくとして、



「残るはもう一つなんだよな」

「………」



神宿が気になっていたのは、もう一枚の紙についてだった。



「…カフォン」

「…え、ええ。わ、わかってる」



カフォンは胸にやった手をぎゅっと握りしめ、深呼吸をしながら気持ちを整える。



本当なら、無理維持をしてそれを使わせることには神宿もまた小さな抵抗はあった。


だが、カルデラの剣を見るにそれはカフォンにとって十分な戦力となる魔法具である事は明白だった。



「…………」



ダンジョン探索の試験まで、もう半年もない。

その間に、カルデラとカフォン。二人の魔法技術のレベルが高飛びするかと尋ねられれば、微妙だった。



だからーー



「う、ウェイポンオープン!!」



カフォンには、力が必要だった。

例え、それがトラウマの糧になろうとしても……




(皆んなの、足手なんかにっ、なりたくない!)




カフォンはそう、強く願ったのだった。









眩い光がリビングを純白に染める。

そして、数秒もせずして光が治まってくる中で、




「……こ、これって」




カフォンの手にある魔法具。

それは。





一丁の純朱の銃だった。





この世界では未だ広まっていない、未知の銃がカフォンの手におさまっているのだった。




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