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◆森の魔女に出会う



三人組の冒険者から逃げ、森を歩くこと早数時間が経つ。

滝から落ちるという自殺行為に近い行為のおかげもあって、何とか捕まることを回避した神宿は今、


「ここまで逃げればっ……大丈夫か……?」


濡れた衣服を魔法の火で何とか乾かした後、目指す場所もない森の中を一人彷徨っていた。

正確な位置までは分からないが、それでも今いる現在地が、滝があった上流とは違う下流の到達点でもある山頂とは真逆の森林地帯ということだけは分かる。


だが、例え同じ森林地帯であったとしても、神宿は未だこの森には一度も足を踏み入れたことがなかった。だから、行く道すら分からず常に警戒をしていないといけい状況に陥っていたのだ。

……その上、何より追ってがあれで諦めてくれたという保証もなく、



(とりあえず….…落ち着ける場所を探さないと……)



一先ず旧凌ぎでもいい。隠れ家となる森の安全地帯を探すべく、神宿は歩き続けるのであった。







そして、かれこれまた数時間。

森の中を歩き続けるも、周囲には草木や樹木のみが生えしきっているだけだった。

山頂付近の森林に比べ、岩場で囲まれた場所や川沿いといった場所も見当たらず、神宿は途方に暮れていた。

……いや、そもそも転生した初日で森の安全地帯を見つけれたこと自体、奇跡に近かったのだろう。


「はぁ……」


これはもう危険覚悟に野宿するしかないか……、と神宿が冷や汗を垂らしながら、そう諦めかけていた。

だが、そんな時だ。


「?」


草木をかき分け歩く途中で、突然と大きく開けた場所に出ることが出来た。

そして、そこにはーーーー




「…………家?」




小さく開けた草原の中央。

見るからにアンティーク感のある木造建築で作られた一戸建ての家がポツンと佇んでいた。

また、入り口となるドアは開きっぱなしになっており、玄関付近のそこには物干し竿が立て掛けられ、干したばかりだろう大布が風によって、ゆらりゆらり靡いていた。

まるで、今さっきまで誰かがいたような……、





「ここで何をしているの?」





その直後。

突然と背後から掛けられた声に神宿は全身をビクつかせながら前へと飛び退いた。

そして、神宿が驚いた表情で後ろに振り返ると、そこには、


「あらあら、ごめんなさい」


それはまさしく異世界ありきの魔女衣装に身を包んだ、一人の美女がニコニコした様子で笑いながら立っていたのである。

神宿の行動を見て、面白がっていたのだろう。

だが、一方の神宿にとっては動揺によって、冷静な判断が出来ず、



「ま、魔女っ!?」



思ったままの言葉を口にしてしまった。

そして、遅れて容易に声を出してしまったことに焦る神宿。

だが、対する彼女は、きょとん、とした顔でその言葉を受けた後、しばらくして、


「まぁ、そんなあっけらかんに言われてしまうとは……あらあらいけないわね」


神宿に即答で魔女と見抜かれながらも笑みを浮かべ続けていた。


(うっ……何かヤバそう……っ)


その不気味な笑みを浮かべる彼女に対し、神宿は警戒してゆっくりて後ずさる。

そして、そのまま体を振り返らせ、その場から逃げようとした。

次の瞬間、




「はい、ちょっと待ってね?」




ビシリッ!?! と、全身がまるで金縛りにあったかのように神宿の体は立ったまま、その場から動けなくなってしまった。

ーーーーそして、


「ま、魔法っ!?」

「別にとって食おうとはしてないから、よかったら家に上がって?」



ズルズル、ズルズル、と石像を引きずるかのようにして、有無なく神宿は彼女に引っ張られるまま家の中へと連れ込まれてしまうのであった。







この世界では、魔女=魔法使いと呼ばれているらしい。


初めにその事を魔法使いである彼女、アーチェから説明を受けた神宿は今、リビングらしい場所へと連れられ、止む無くしてテーブル前の椅子に座らされていた。

そして、目の前にハーブティーの入ったコップと菓子を出され、


「はい、どうぞ?」

「…………」


アーチェに食べるように勧めれていた。

だが、神宿はというと、今だ警戒した表情でアーチェを睨んでいる。

とはいえ、金縛りの魔法を掛けられたあげくにそのまま家へと連行されたのだ。

警戒するな、という方が無理があった。


「…………」


だが、今目の前にあるのは、この世界に来て久方ぶりとなるちゃんとした食べ物。

神宿は鳴る腹に顔を赤めながら、警戒しつつもその飢えの欲求には耐えられなかった。

そして、止む無くして毒味するように、それらを手に取り、


「もぐもぐ……う、上手い……」

「そう?」


彼女の言葉に頭を頷かせながら、菓子を頬張りハーブティーを飲む神宿。

まともな食事を摂取できた事に神宿の心は落ち着きを取り戻した、そっと安堵の息が漏れた。


そして、そんな微笑ましい神宿の様子を眺めるアーチェは笑いながら口を動かし、




「本当に毒食べても平気なのね?」




そう言葉を口にした、その直後だった。

ぶーーーーーーッ!? と神宿は口に含んでいたハーブティーを噴き出した。

いや、衝撃的な言葉にそう反応せずにはいられなかった。


そして、神宿の様子にアーチェはクスクスと笑いながら、




「流石、自然治癒スキルをもっているだけはあるわね?」




女神から与えられた、神宿しか知り得ないスキルの名を言葉にして溢したのであった。



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