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初めての修行



男子寮での修行の開始。

気合い十分で、やるわよ! と意気込むカフォン。


ーーーーーと、そこまではよかった。




「とりあえず、お前は俺と一緒に魔法の維持! その練習をやれ!」

「な、なんでよ!?」


神宿の怒鳴り声に怯えながらも反論するカフォン。

現在、二人がいる場所は修行のためしか使われていない空きの学生寮の一室であり、準備運動を軽く終えた神宿たちは、その場所で共に魔法の練習をやり始めた。


………のだが、



「仕方がねぇだろ! まさかお前が魔法を維持すら出来ないなんて、聞いてなかったんだから!」



カフォンの実力を図るため、魔法を撃ち出すのではなく止めるーーーいわゆる維持をしてみてくれと頼んだ神宿。

だが、当人たる彼女はといえば、維持? と首を傾げる反応ときた。



「だ、だって! そんなの今までやったことないし、第一魔法って撃ってなんぼのものでしょ!?」

「そんなわけあるか。魔法だって攻撃以外にも色々やりようがあるんだよ。防御とか、操作とか、もっと色々」


と、長々説明する気配を醸し出す神宿に、カフォンは指をさしながら、




「そもそも! 貴方の魔法の方がおかしいのよ!! 何なの、あの魔法の後に付け加えてる変な言葉とか!」




彼女が言っているのは、神宿が魔法を使う際に口にする《ボム》《アロー》《スプレッド》といった言葉の事だろう。



「……仕方がねぇだろ、俺は本当に上位の魔法が使えないんだから」

「……本当に?」

「ああ、本当に、だ」


神宿はそう言いながら溜息をつきつつ、自身の修行でもある初期の魔法を維持をやり始め、




「ほら、グダグタ言ってないで、お前も見よう見まねでもいいから始めろ」

「ぐぅ、ぅぅ…」



カフォンも、やむなく魔法維持の練習をやり始めるのであった。










「…………」

「っ、あっ!?」


バシャン! という音と共に、カフォンの手のひらに形成されていた水の魔法が破裂した。


ーーちなみに、開始して早三十分。

失敗の数はそれも合わせて計二十回目となる。



「……なぁ?」

「っ、何ですか…ひぐっ…ぅぅ…」


失敗の連続で若干涙目となるカフォンに対し、神宿は不思議そうに尋ねた。




「何で水から始めてんだ?」




初期の魔法には基本の四属性がある。


火、水、風、土、と、それらは魔法のベースでもあり、そこに強化や変化といった調整を行うのがこの世界での基本でもあった。


だから、初期の魔法。その操作など、後々に極めて重要になるのだが、




「…そ、それは……み、水の方が、何でかわからないけど…やりやすそうだったから」

「ああ、なるほど…」


水の魔法は他の魔法に比べて形も柔軟に変化でき、一見扱いやすそうな魔法に見える。

だが、



「一応言っておくけど、水の魔法の方が維持するって難しいからな?」

「っ、なんで今更言うの!? もっと早く言ってくれも良かったじゃない!?」

「いやぁ、……なんて言うか俺も師匠にそうやって教えられたから」



教え手のやり方は伝染する、と。よく話には聞くが、現にそうだったらしい。


ひ、酷すぎる…、と更に涙目をウルウルされるカフォンに神宿は軽く謝りつつ、



「ほら、試しにウィンドでやってみろよ?」

「ぅぅ…本当に、早く言いなさいよね…もう…」


カフォンは頬を膨らませながら、手のひらを前にへと突き出した。

そしてーーーーーー





「ウィンド!」





唱えた、その直後。














バコン!!!! という破壊音と共に、修行場の壁が半壊した。



「「…………」」



ガラガラ、ボト、と壊れる壁と、それらの破片。


そんな現状を見つめる神宿とカフォンは、しばし無言のまま、顔色だけを青くさせつつ………、




「お前、当分……風の魔法、禁止な」

「………はい」




そう言葉をつくのであった。







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