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一つの秘密



大賢者ファースト。

賢者の中でも、かなり優秀な位置に立つ存在であり、また根絶の魔女アーチェの師匠だとも言う。


だから、神宿の所在も含めて既に知っているとも言っていた。





「と、いうわけじゃ」

「…………」


白髪の少女ファーストから説明を聞き終えた神宿は今、頭を手で抱えながら重い溜息を吐いていた。


ちなみに、カルデラたち一向にはしばらく席を外してもらっており、向こうではカルデラVS剣豪シサムのガチバトルが勃発しているらしいのだが、


「どうしたのじゃ?」

「いや、その、まぁ………色々情報が入りすぎて、頭パンクしそうになってるだけだから」


アーチェの師匠。

さらには女神から転生させれれた自分が勇者候補の一人だという。


ーーこれが、頭をパンクせずにいられるか、と神宿は思った。





「それで? アンタは俺に勇者になれ、って言いに来たのか?」


しばらくした後で、神宿は核心をつくような質問をファーストに投げかける。

一瞬、キョトンとしたファーストだったが、


「別にそういうつもりで来たわけじゃないぞ?」


そう言って、笑みを浮かべつつ、


「ただ不肖な弟子が育てた勇者候補がどんなものかと思って見に来ただけじゃから」

「……そうかよ、それで? アンタとしてはいかがなものだったんだ、俺は?」


皮肉めいた言葉をつく神宿。

そんな彼にファーストは再び笑いながら、








「何、女神のスキルがまたこれでもかとお主の成長を妨げておるな、と思っただけじゃ」









ーーーその言葉に対し。

表情を凍らせる神宿の様子を、ファーストは見逃さなかった。

それほどに、大賢者は彼が胸の内に抱え込んでいる悩みを一瞬にして見抜いていた。








その頃。

学生寮の外では、


「お嬢様っ!? それはあまりにも姑息すぎますっ!!」

「そうだぞ、カルデラ!! それは、禁じ手だ!」


非難の声を上げる男たち。

対するカルデラは、ドスの篭った声を出し、


「大丈夫ですよ? お父様? もう私が生まれているんですもの。だからーーーーその腰の下にあるものは、必要ないと」

「「男の尊厳が無くなるからっ!!」」


剣豪シサムは、父親としての資格を失いかけていた。









「……は? な、何言って」



頰に冷や汗を垂らす神宿。

そんな彼を追い詰めるように、ファーストは言葉を続けていく。


「アーチェから話は聞いておる。何でも初期魔法以外の上位魔法は教えてもらっていないんじゃろ?」

「…あ、ああ」

「まぁ、アヤツはそもそも真面な魔法が苦手なたちじゃったからな。己が得意じゃないものを教えるのは余りに理が叶っておらん。じゃから、お主にオリジナルの魔法を作るように進めたんじゃろうが」


ファーストはそう言って、神宿を見据えながら、




「そのせいで、アヤツは弟子でもあるお主の悩みを見つけることが出来んかった」

「!?」

「まぁ、不肖な弟子じゃから、仕方がないのじゃがな」



自分の弟子に対して、キツイ言葉を言い続けるファースト。

そんな彼女に、神宿は押し黙るようにして話を聞いていた。


ーーーー不肖な弟子、と何度もアーチェを蔑む言葉を聞きながら、


「ッ…」


神宿は、小さく歯を噛み締めながら、苛立ちを募らせていた。





「どうしたのじゃ? もしかして、怒っておるのか? ーーーーじゃが、私が言っていることは事実じゃぞ? あのポンコツは本当にダメダメじゃからな」

「っ! お前、いいかげんに」



そして、ついに声を荒げようとした神宿。

だが、そんな彼の動きを見透かすようにーーーーーーー大賢者ファーストは真剣な表情を浮かばせて、言ったのだ。









「なら問うぞ? 何故、アヤツはお主が上位魔法を使えない事を見抜けなかった?」











それは、この異世界に来てからの一年間。


神宿が誰にも話さず、また師匠であるアーチェにも隠していた一つの秘密だった。




ーーーー上位魔法が使えない。



その理由は、転生した神宿に与えられたーーーーーーーー自害阻止スキルと自然治癒スキル、であった。



そして、それは。

混雑した高位のスキルによって引き起こされていた、女神でさえ知る由もなかった、支障だった。



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