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来襲

…寝過ごしました。





それは、ある日の休日の朝。

神宿の住む学生寮。

その玄関先でーーー



「はぁ、はぁ、はぁっ」

「………………」



涙を溜めながら、その手を振り切った少女ことカルデラ。

そして、そんな彼女の目の前でーーーー今しがた娘に全力ビンタを食らって気絶した男、剣豪シサムの姿があった。


そしてーーーーーー神谷は思った。



(こんな茶番見せられて、俺にどうしろっていうんだよ…)



と。







剣豪シサム。

彼は貴族の中でも、少し変わり者とされる男であった。


というのも、本来なら貴族としての立ち姿や性格、諸々がキッチリとされている。

それが貴族。なのだが…



『アヤツの見た目は一見して貴族ぽいのじゃが、実際はガサツの塊みたいなものじゃからな』



事実は異なり、何でも力技で解決する脳筋男だったらしい。


だからこそ、本来なら軽い礼を交わすだけで済むはずの話を神宿と決闘しにいくと言い始めた。

らしい、のだが……



「…………」



まぁ、こんな話はもうどうでもいいほどに、学生寮へと戻った神宿はテーブル席にて茶を飲んでくつろいでいた。


そして、その視線をチラリとリビングの広間へと動かすと、そこにはーーーー




「ねえ、わかりますか? お父様? 色々とデリケートなお年頃の女の子が、自分の黒歴史を男の子の前で暴露されたーーその気持ち、わかりますかッ?」

「お嬢様っ!? それだけはダメですっ!? お父上様が死んでしまわれますっ!?」

「ま、待ってくれっ! 愛しのカルデラよ!! それは我が一族の秘法ともいえる剣であって、そんなもので剣豪が斬られたとあっては」

「いいじゃないですか? 剣豪? フフフッ……そんな馬鹿げた英豪なんて捨てて……いいえ、今日この日を持って! 娘である私自らの手で終止符を打ってあげますっ!!」



床に尻込みながら、青い顔をする剣豪シサム。


相対するは、剣豪の持つ聖剣を振り上げるカルデラとそんな彼女を羽交い締めにして、止めようと奮闘するマーチェ。



ーーーそんな彼らの茶番劇が、もうかれこれ数十分と続いていた。



「と、トオル様っ!? 止めるの手伝ってくださいっ!!」

「無理。ってか、カルデラに手を出すなって言われてるんだよ」

「そうですよ! これは父と子の問題! だから、私から手を離してください、マーチェ!!」

「それこそ無理ですっ!!」



本来なら加勢に入った方がいいのかもしれない。

でも、マーチェの奮闘が凄いようにーーーカルデラの怒りもまた凄かったのであった。






ぎゃあぎゃあ!! と喧しい光景に溜め息を漏らす神宿。

だが、そこでふと浮かんだ小さな疑問に神宿は頭を動かしていた。



(ってか、アイツ…なんでカルデラの昔のことを知ってるんだ? いや、そもそも、歳からして、あのオッサンと知り合い、っていうこと自体、おかしくないか?)




この騒動の始まりは、転入生である白髪の少女。ファーストによるものだった。



ファーストが、カルデラの秘密を暴露した事から話は始まりーーーーーー流れるように神宿が剣豪シサムから決闘を持ちかけられていることを知ったカルデラが、寮で待ち伏せをしてからの奇襲に移ったのだが…



学園内でのこともさることながら、謎多き少女、ファースト。



「……ファースト、か…」



と、呟く神宿。



「何じゃ? 改まって」

「いや、アイツが来てから、もう色々と無茶苦茶になったなぁ…って思って」



と、相槌に答える神宿で、あっ……







「は?」









途中から介入してきた声に、直ぐさま顔を振り向かせる神宿。

すると、そこにはーー





「やっほー、じゃ?ちょっと、遊びに来たぞ?」




手をヒラヒラと振りながら、笑う少女。

ファーストが何かいた!?


寮の鍵はきっちりと締め、また出入り口からここまで距離があるにも関わらずに!?




しかも、また知りたくもなかったのに……




「っ!? ふ、ファーストっ!? やはり、お前の仕業かっ! この老いぼれがっ!!」

「誰に物を言っておるのじゃ、戯け。お前の不始末じゃろうが」

「黙れ!このロリクソババアがっ!! っ!?」

「お父様? よそ見ですか?」

「ちょ、カルデラっ!? 待っ、ぐぎぎぎっ!! む、娘をたぶらかしおって! それが大賢者のやることかっ!!!」



マーチェの手を振り切り、聖剣を振り下ろすカルデラ。


聖剣白羽取りで、何とか斬られるのを防ぐ剣豪シサムの口からとんでもない言葉が飛び出してきた。



ロリクソババア?

大賢者?



その気になる単語の数々に、ただ一人。

困惑する神宿でなのであった。



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