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乙女の秘密




図書館。

昼休み終了まで、後ちょっとの時間にてーーー



「遅かったですね?」

「あ、ああ……まぁ」


食い散らかした弁当を片手に、カルデラは眉間にしわを作りながら神宿を睨んでいた。


「………」


これでも結構頑張って走って来た神宿だったのだが、それでもさすがに二、三キロと離れた位置にある図書館までは……遠かった。


階段上り下りのプラスで、正直疲れ切っていた。





「それで? トオルも転入生にメロメロだったというわけですか?」

「いやいや、違うから」

「じゃあ、何で遅れたのか。説明プリーズー?」


一通り説明しつつも、カルデラはそう言って笑顔を向けてくる。

ダラダラと冷や汗を流す神宿は、


「…………単に、忘れてただけで」

「何で私の約束が後回しになるんですかっ!!」


バン!! と机を叩き、カルデラは大きな声を上げるのであった。





(はぁ、勘弁してくれ…)


本当なら今日、図書館でカルデラと共に勉強をしながら、マーチェが用意してくれた弁当を共に食べる予定になっていた。


そのため、神宿自身も今日の分の弁当を用意していなかったのである。






ーーーつまりは、ペコペコなのだ。






こんな事になるんだったら…軽くご飯でも握って持ってくるんだった、と後悔する神宿。


すると、そんな時。



「所で、その子。…………誰ですか?」

「は?」



突然、そんな言葉が出てきた。

未だお冠モードのカルデラの声に導かれ、顔を動かす神宿。



すると、そこにはーーーー





「何でここにいるんだ?」

「うむ? そんなの、面白そうじゃったからじゃ」



そう言って、ニタリと笑う少女。

転入生ファーストが神宿の背後にピッタリとくっついて立っていたのであった。









「初めましてじゃな。私の名前はファースト! 以後よろしくじゃ」

「いや、それもう聞いたから」


図書館のテーブル席につく三人。

神宿は本日ニ回目となるファーストの自己紹介にそうツッコミを入れた。

が、そんなことよりもーーーーー




「ねぇ、トオル? どういうことですか?」

「痛い痛いっ!? 顔掴むなっ、カルデラっ!? ぐぎゃっ!?」



現在進行形にて。

カルデラから繰り出される顔面アイアンクローを食らって、悲鳴を上げる神宿の姿がそこにはあった。


と、そんな時だった。




「む? カルデラ?」




ファーストが発したその声に、カルデラと神宿。二人の動きが止まる。


そして、対するファーストは顎に手をやりながら、思い出すようにして……





「もしかして、お主。七歳になるまで、おねしょをしていたとい」

「いやぁあああああああああああああああああああーーっ!!!」






その直後。

赤面したカルデラが、ファーストの腕を強引に掴みとり、そのまま本棚の裏へと走り去ってしまった。



『何で知ってるの!! 何で知ってるの!? 何で知ってるのっ!!?!?』

『知ってるも何も、聞いたからじゃ』

『誰にっ!?』

『そうじゃのう。確かあれは、べろべろに酔っておった、お主の父に』

『あのおバカあああああああああああああああああーーーっ!!!』



どうにもカルデラの父親は、酒に酔うと娘の自慢をしたがるバカ親だったらしい。


カルデラにまつわる羞恥満載の裏話を全てを知っていたファーストは、そんな彼女にニッコリと笑いながら、


『そんなに恥ずかしがらんでも、大丈夫じゃ』

『何がですかっ!?』

『あの小僧も、もしかしたら聞き逃していたかもしれんじゃろ?』


その言葉に過敏に反応したカルデラは、直ぐさま本棚の影から、顔を出す。

そして、置いてけぼりの神宿を見た。









「…そ、その……き、聞いてない……から」

「じゃあ何で顔逸らすんですかああああああああああああーーーっ!!!」




こうして、カルデラの悲痛な叫びが図書館に木霊すのだった。








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