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始まりの予感



現時刻は夜の八時頃。


「………」


マーチェより、カルデラの父からの決闘の言伝を受け取った神宿は今、慎重に呼吸を整えながら魔力を調整していた。


「ふーっ」


手のひらに、集めた魔力は振動を繰り返しながら、今にも激しく弾け飛びそうになっている。

神宿は、それを何とか維持し続けようと奮闘する。



ーーーだが、



「っ!?」




次の瞬間。

バリィン!!! と音と共に、神宿の目の前で形成されていた宙を浮く剣が砕け散ってしまった。

そして、その場に沈黙が落ちた後で、




「っはぁー! ダメだーっ!!」



バタン! と体を床に倒し、神宿はそう嘆くのだった。




今、彼がいるのは自身の住まう学生寮の一室。それも、剣道場を連想させる広い居室の中央となる場所だ。


そして、そんな彼が行なっていたのはオリジナルの魔法の作成である。



「上手いこと、いかないよなぁ〜」



大幅な魔力消費で疲れ切った溜息を吐く神宿は、自身の手のひらを見つめながら今一度、オリジナルの魔法。

その作成工程を思い返していた。





まず初めにオリジナルの魔法を作るために必要な土台を作る『魔法陣展開』作業。


次に、オリジナルの元素たる魔力を貯める器を作るための『魔力体形成開始』作業。


そして、最後の作業となるのが、オリジナルの基礎たる根源の注入。

移動性、威力性、持続性、効力性を器の内部に蓄積させる『魔式構築完成』作業。




これら三つの作業が取り入れる事で、オリジナルの魔法が完成すると言われている。





のだが、


「うーん……」


二つまでの作業は、カルデラから教えてもらった認識の捉え方によって難なく進める事が出来るようになった。


しかし、その後にある『魔式構築完成』が未だ一向に出来ずにいたのであった。



(途中までは…多分、あってる。と思う…だけど、最後が何か足りないんだよなぁ…)



学園にある文献を色々と漁って調べてみてもこれといって情報は見つからず、こればかりはどうにも解決できない、と神宿自身も若干とそう悟りつつあった。


ーーーだからこそ、同時に思ったのだ、




(こんな時に、師匠がいてくれたらなぁ…)




神宿の師匠、根絶の魔女アーチェ。

今何をやっているのだろう、と思う神宿だった。










そして、その頃。

その当人たるアーチェはというと、


「アーチェさん! 助けてくださいー!!」

「アーチェ!! 次はこっちも頼むー!!」

「ぎゃあ!? アーチェ、俺今モンスターに噛まれてるーっ!!」


彼女は今、大賢者ファーストに押し付けられた仕事ーーーーいわゆる凶悪モンスターの駆除に連日連夜と駆り出されていた。

そして、



「もういやーーっ!! 会いたいよー! トオルくぅーん!!!」



迫り来る大群モンスターを魔法で消しとばしながら、アーチェはそう泣き言を叫ぶのであった。













そして、それから数日が過ぎたころ。

それは突然の知らせだった。



「今日からこのクラスに入る転入生を紹介します」


そう話す担任教師に続き、教室のドアが開かれ、そこから神宿のクラスに一人の少女が入ってきた。


長い白髪をなびかせ、どこか自信家のような笑みを絶やさず見せる少女。


チラり、と神宿に視線を向けつつ、


「?」


その視線に気づき、怪訝な表情見せる神宿に対して笑みを浮かべながら、



「それでは、自己紹介をお願いしますね」



教師に言われた通り。

少女は、元気な声で自身の自己紹介を始めた。






「初めまして、じゃな。私の名前はファースト。以後よろしくなのじゃ!」






転入生、大賢者ファースト。

それが神宿 透とのファーストコンタクトだった。


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