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観戦する者たち



カリオカと神宿。

二人の決闘に決着がついたと同時刻。


人知れず密室と化す学園のある一室にて、神宿たちの戦いを観戦する者達がいた。




「はぁ…、全くこういうことはこれっきりにしてもらいたいものだ」


そう言葉をついたのは、学園長ガーク。

目の前に置かれた水晶を見据え、溜息を漏らしていた。

だが、観戦者はもう一人いた。

それは彼と向かい合う位置で椅子に腰掛ける一人の少女。



「何を言っておる? 結果的に解決したのじゃから、何も問題はないじゃろ?」



白髪を靡かせる魔法使い。大賢者ファーストは不敵な笑みを浮かべていた。








本来、この魔法学園において大小構わず起きた騒動は決まって学園長の元にある水晶に映し出される仕組みとなっている。


そのため、当然カリオカの悪行も既にガークの耳には届いており、



(次に問題を起こせば、退学は免れないな)


近く、カリオカを退学させる手筈をガークは整えていた。






だが、そんな時だった。

ついに当人たるカリオカが、同じ貴族のカルデラに対して決闘を申し込む、という騒動を再び巻き起こしたのだ。


もう目を瞑る余地はない、と判断したガークは直ぐ様、カリオカに退学を通達するべく行動に移ろうとした。

しかし、その時。



「いや、待て。ガークよ」



偶然と学園に足を運んでいた少女、大賢者ファーストがその動きを制止させたのだ。








「下手をしたら、我が学園の生徒が死ぬかもしれなかったんだぞ?」

「いやいや、考えすぎじゃろ? こんなの、ただの子供の喧嘩じゃぞ?」

「………」

「それに今日この日にワシがこの場にいたんじゃ。 もしもの可能性も起きやせん」


そう言って、容姿に似つかない笑い声を出すファースト。


己の力なら、こんなチンケな争いなど一瞬で終いにできる。

そう遠回しに語る彼女に、ガークは再度大きな溜息を漏らした。








そして、それから数分と他愛もない会話が続き、ようやく一通りにその場の空気が落ちついた頃、



「さて、それはいいとして。…このクソガキはどうするつもりじゃ?」



ファーストは、カリオカの処遇に対してガークに尋ねてきた。


今も水晶内に映し出された演習場では、気絶して倒れるカリオカが見える。



「おそらくじゃが…こういう奴は、このまま野放しにしておくと後々問題ごとしか起こさんとワシは思うぞ? お前もそれぐらいわかるじゃろ?」

「………ああ。そんな事は言われなくてもわかっている」



貴族の中には温厚な者たちもいる。

だが、そのほとんどがプライドが高く、その悪い例がまさにカリオカのような少年だった。


「………….」


本来なら、学園長として…こういった対処はとりたくはない。

しかし、事がことなだけに、もうそれしか答えが見つからないのも事実だ。



ーーーーーだから、ガークは、




「カリオカ、ならびに背後についている他二名の生徒もふくめ、彼らを退学にさせるつもりだ」



ーーーそう、決断した。

この先にある学園の平和のために、彼らを切ることを。






「ほぉー」


ガークに言葉に対し、ファーストは感心した様子でそう声を漏らす。


というのも、昔ながらの旧友でもある彼がここまではっきり決断する姿を見たのはこれが始めであり、ファースト自身も少し驚きを隠せずにいたのだ。






だが、それでもまだーーー


「じゃが、それでは弱いな」

「っ、何だと?」

「はぁー、まったく。お主は昔からツメが甘いのじゃから、これは性格にもやるものじゃな…」



ファーストはそう言いながら、自身の手のひらに小さな魔法陣を展開させる。

そして、小声で何かを囁き、そのまま魔法陣を閉じてしまった。


「………おい、ファースト。お前、何をした?」

「何、別に学園にまで被害をもたらすつもりはないぞ? ただ、まぁ、あのクソガキには少し仕置が必要じゃと思ってな」

「………」


何か嫌な予感がする。

そう感じとったガークが苦い表情を浮かべる中、ファーストは悪めいた笑み浮かべ、





「子供も子供なら、大人も大人じゃ。共に仕置をしておいてやるのが筋じゃろ? まぁ、ワシは何もせんのじゃがな?」






ファーストは、容姿違わぬ高笑いをつくのだった。


その言葉の裏にあるーーーーもう一つの結末を友に隠しながら…。





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