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貴族と貴族



あの移動教室での一件から、数日が過ぎた頃。


学園の授業を終えたカルデラは、いつものように放課後この時間。

神宿が待つ学園内の飲食店に向かうべく、急ぎ足で渡り廊下を通り過ぎようとしていた。

ーーーーーーーだが、そんな時。



「よぉ、カルデラ」



ふらり、と目の前の道を遮るように、校舎の影から一人の少年、貴族のカリオカが姿を見せた。

そして、今までロクに会話もしてこなかったカルデラに対し、彼は突然とそう話しかけてきたのだ。


「カリオカ…」

「おいおい、挨拶してるんだから返事くらいしろよなぁ?」


いつにも増して強気な発言をするカリオカに、カルデラは無言を続け、そのまま横を通り過ぎようとする。

しかし、そんな彼女の腕を、カリオカは強引に掴み上げ、



「まぁ、待てよ?」



卑しげな表情でカルデラを見据える。


「っ! その手を離してくださいください」


カルデラは直ぐ様、その手を払いのけ後ろに距離を取る。


「つれねぇなぁ?」


カリオカはそんな彼女の様子に笑みを浮かべる。

そして、その瞳で彼女の四肢を見渡し、自身の唇を舐め始めた。

まるで品定めをするかのようにーー



「っ!?」


その仕草に悪寒を感じたカルデラは直ぐ様、その場から離れようとした。

だが、




「おいおい、貴族である俺をほったらかして、お前ーーーーーまた、あのトオルとかいうやつに会いに行くのか?」





その直後。

彼の言葉に、カルデラの足が止まった。

カリオカは押し殺したような笑い声を上げつつ、言葉を続けていく。


「はぁー、お前らは隠してたつもりだったんだろうけど、もうバレバレなんだよぉ」

「カリオカ…貴方」

「でも、普通に考えても釣り合わないと思わねぇかぁ? だって、お前は貴族だぜ? 本来ならあんな貧乏野郎よりも、まず先に俺みたいな貴族と親しくするのが当たり前のはずなんだけどなぁ?」

「っ…誰が、貴方なんかと」

「いやいや、それが俺たち貴族の世界じゃぁ常識な事だろ?」


確かに、貴族同士においては同じ地位に立つ者同士、関係を気づくことは一般化されていた。

互いの言葉を交わし、相手との友好関係を図る。

それは貴族という世界においても、欠けてはいけない常識の一つだった。

だが、



「それは貴方だけの理論でしょ? 私を勝手に入れ込まないで」



貴族であるカルデラは、そんな伝統的な常識を嫌っていた。


貴族だろうが、平民だろが関係ない。

誰にでも接し、身分など関係なく、繋がりたい。


それが、彼女の真なる願いの一つでもあったからだ。

カルデラは凄んだ瞳でカリオカを睨みつけ、


「おぉおぉ、怖い怖い」


そう茶化した言葉を出すカリオカを避け、今度こそ、その場を後にしようとした。

だが、




「でも、まぁ…いいか。お前が俺に付き合えないっていうなら仕方がない。代わりに、俺はアイツの寮にでも挨拶しに行こうとするかなぁ」

「っ!?」



カリオカの言葉が、強く彼女の心をその場に縛り付けた。


「っ、カリオカ! 貴方、一体彼に何をするつもりなんですか!」

「何って、ただの挨拶だよ? お前が相手してくれない分、アイツに色々と付き合ってもらおうかと思ってな」



そう言って笑うカリオカは、更に愉快そうに笑う。

そして、



「あ、でも、もしかしたら、俺のとっておきの魔法をアイツに見せる機会もあるかもしれねぇな?」



カリオカの言葉が同時に、カルデラの精神を強くざわつかせた。


カリオカが得意とするのは炎の魔法。

そして、その言動の裏にある意味を、彼女は理解してしまった。

ーーーーーーだからこそ、彼女は、




「これ以上、トオルに手を出さないでください!!」





普段なら見せない怒りを露わにさせ、カリオカを睨みつけた。






「トオル、ねぇ」


その親しげな呼び名に、ヘドが出る、と感じながらカリオカは短く笑う。


「なら、取引だ」

「!?」


そして、カリオカはカルデラに対して提案を持ちかける。



それは、本来なら大人である貴族同士しか許されていない信仰たる戦い。


「俺とお前、貴族同士の権利をかけた決闘をしようじゃねえか?」


貴族と貴族。

争いの中心に立つ神宿が知らない中で、カルデラとカリオカ、二人の決闘がこうして幕を開けるであった。




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