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修行とその裏側で




夕食を終え、カルデラたちの寝る部屋などを紹介し終えた神宿は今。


「ふぅ………」


時間が夜の八時頃を指す中、学生寮の一室。

まるで剣道場を連想させるような大きな居室の中央にて、両手に魔力を注ぎ込みながら二つの魔法を同時発動させる修行を行なっていた。



そして、少し離れた場所から、カルデラとマーチェは真剣な表情でその修行を見続けている。


「…ねぇ、マーチェ」

「はい。何でしょうか、お嬢様?」

「今、トオルがやっている修行は私にも出来ると思いますか?」


カルデラにとって、それは純粋な質問だった。

嫌味などといった感情もなく、ただカルデラ自身の実力であれらの修行をこなせるのか、彼女はそれを知りたかったのである。


しかし、そんなカルデラの問いに対し、マーチェは首を振りながら答える。


「……正直なところ、おそらく今のお嬢様ではあの状態での発動は困難だと思われます」

「………そう」


正直なところで、その答えは分かっていた。


何故なら、カルデラが見つめる先で魔法を維持し続ける神宿が修行を始めてから早一時間以上の時が経過しているのだから。


「…………」


当初カルデラは、単に魔力の残量が多いからあれだけ魔法を維持できるのだ、とそう思っていた。


だが、そんな最中でカルデラはあることに気づいたのである。



それは神宿の手のひらに現に今も発動し続ける二つの魔法。

同じ質量で同じサイズ、それらが始めてから一向に揺れていないのだ。


本来、一人前の魔法使いであったとしても多少の誤差として威力やサイズなど違いが見受けられる。



それなのに、何故神宿の魔法は今もなお同じ状態をキープし続けられているのか。


(…まさか)


その答えは、簡単だった。

つまりは一定の魔力消費量を維持しつつ、神宿はあれらを発動させ続けていたのだ。



(普通なら、どちらかの魔法に揺らぎがあるはず。でも、トオルはそんなズレを一つも見せずに今も魔法を維持し続けている)



事実上、強い精神力と技術力が必要とされる、高いレベルの修行内容。


カルデラはそんなレベルの修行を難なくこなす神宿に対して、いつしか尊敬にも似た念を抱くようになっていた…。






「ふぅー」


そして、二時間ぐらいの時間が過ぎた中で、神宿は手のひらの魔法を消し、大きく息を吐く。


「お疲れ様です、トオル」

「お…おお」


そう言って駆け寄ってきたカルデラはトオルに綺麗なタオルを手渡す。


最初は修行中、何度も邪魔して声をかけてくるのではないかと思っていた、のだがさっきまでのお転婆が嘘だったかのように今は物静かに神宿を見据えていた。


(…うーん、なんか調子狂うな)


額に溜まった汗を拭き取りつつ、内心でそう思う神宿。

すると、そんな彼に今度はマーチェの方から質問が投げかけられた。


「それにしても、トオル様はよく二つも魔法を維持させることが出来ますね?」

「ん、ああ。師匠からは最終四つの魔法を同時に発動できるよう頑張れって言われてるんだけど、中々うまく行かなくてな。まぁ、とりあえずは今のところは二つまでが限界なんだ」

「なるほど」


そう言って神宿は両肩の調子を確かめつつ、再度室内の中央へと戻っていこうとする。

カルデラは首を傾げながら、


「まだ修行をなさるつもりなんですか?」

「ん? まぁ、さっきのは準備体操みたいなものだったからな」


神宿が何げなく口にした言葉に驚くカルデラとマーチェ。


だが、そんな二人に対し。

神宿は振り返りながら、苦笑いをした表情わ浮かべ、



「で。今から本修行なんだけど……カルデラとマーチェさんは出来るだけ部屋の端っこに避難しててくれないか?」

「え?どうしてですか?」

「いや、もしかしたら失敗するかもしれないからさ」



何が? と首を傾げるカルデラとマーチェ。そんな彼女たちに、神宿は頭をかきながら、





「いや、だから。オリジナルの魔法の作成がだよ」




そう言って、少し自信なさげに頰をかく彼の姿があった。









そして、神宿が修行に取り組んでいた。

その頃。




そこは誰も知らない、ロエソクの火だけが明かりを保つ、暗闇の室内。

そんな闇に支配された中で、


『それでは、今より対談を開始したいと思う』


老人の声に耳を傾ける、数人の魔法使いたちの姿がそこにはあった。

そして、その中に、



「ふわぁー」



一人欠伸をつく、女性の姿。

根絶の魔女。

賢者。

と呼ばれた魔法使い、アーチェの姿がそこにはあったーーーーー。






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