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貴族に追求され、師匠の正体を知りました




次の日。

学園の授業を終え、昨日の続きをするべくカルデラの指定する学園内の飲食店へと向かった神宿。

だが、そこで彼は、



「どういうことですかっ!!」



何故か開口早々、カルデラに無茶苦茶怒られていた。


「ちょ、何でそんな怒ってんだよっ!?」

「何で、じゃありません!そんなのきまってるじゃないですか!!」

「はぁ?」

「トオルが教えてくれたあの魔法についてですっ!!」


どうやらレイズヒールについて、難癖をつけている様子だったが、


「いや、あの魔法がどうし」

「ヒールの上位はハイヒールというものなんです!!」

「…え」

「だ・か・らっ!!トオルが教えてくれたあの魔法はーーーーーオリジナルの魔法だったんですっ!!」



苛立ち交じりにそう大口で叫ぶ、カルデラ。

神宿は、そんな言葉を聞きつつーーーーー





「はぁっ!?」


教えた本人でさえ、この驚きようだ。

神宿の反応に対し、側にいたマーチェも、ああ…やはり…、などと呟いている。

が、今はそれどころじゃない。


「いやいやいや、師匠はあれがヒールの次だって言ってたんだぞ!? 嘘だろ!?」

「いえ! 世間ではハイヒールというものがヒールの上位魔法とされて認知されています! 私だってオリジナルの魔法だったなんて聞かされて驚いてるんです!!」

「…えー」

「あの後色々と情報を集めて見ました。でも、やはりレイズヒールなんてものはどの書にも載っていないんです!」


神宿同様にカルデラもまた驚きを隠せなかった。


オリジナルの魔法がどれだけ神聖なものかは、当然彼女も知っている。

だからカルデラは、放課後のここに来るまでの間に学園内にある色々な文献または情報を探り漁った。

しかし、いくら探せど神宿が教えてくれた魔法は見当たるどころか、そのカケラ一つすら見つけることが出来なかったのだ。


「ま、マジかよ…」

「そもそも、トオルにその魔法を教えてくれたお師匠さんは何て名前の人なんですか?こんな魔法を知ってるなんて、絶対ただものじゃありませよ」


そう言ってジト目で見つめるカルデラに対し、神宿は困った様子で答えつつ、


「って、そうは言っても特にそんな凄い魔法使いって風には見えないし、ってか俺もよく知らないから」

「ちょっ、知らないって」

「第一、名前がアーチェってことくらいしか」


神宿がそう師匠の名前を口にしながら顔を上げる。

すると、そこにはーーーー




「「……………」」




口をあんぐり開け、驚愕の表情を露わにしたカルデラとマーチェの姿があった。


「ん? どうし」


茫然とする神宿に対し、カルデラはその震えた唇を動かしながら、言う。


「こ、根絶の、ま、魔女……っ」

「は?」

「と、トオル…、あ、貴方、本当にあの魔女の弟子だっていうんですか!?」


その怯えにも似た言葉に対し、神宿は訳もわからずただ首を傾げるしか出来なかった。







『根絶の魔女』


その者はーーー数少ない大賢者のうちの一人でもある魔法使いの一人。

その者はーーー敵味方関係なくその者の肉体全てを支配する魔法を有する存在。


そして、その者はーーー人だけでなくモンスターですら手駒にとることから、全ての生き物を根絶させかねない力を持った魔女、と噂された魔法使い。



それが、根絶の魔女と呼ばれた師匠、アーチェの正体だった。








「と、つまりは物凄い魔法使いだという事なんです! わかりましたか!?」

「…………あ、ああ…」


カルデラの説明を受け、神宿は初めて師匠アーチェの正体を知る事ができた。


(あの師匠が…なぁ)


最初は驚きを隠せなかった。

だが、例えその事実が本当であったとしても、師匠であるアーチェと一年間共に過ごしてきた彼にとっては、



「そうか、そんな凄い魔法使いだったんだなぁ」

「そうですよ、全くもう」

「いつも寝坊助で声かけないと起きてこなくて、服もロクに着替えないし」

「…ん?」

「飯なんてロクに作れなくて、料理を爆発物に変えるヘンテコな特技しか持ってないと思ってたんだけど」

「え、っと、ちょっと」

「部屋に閉じこもってばっかで、たまに中から変な声出してる、正直イタイ奴だなぁ、としか思って」

「ちょっと待って!? それ以上言わないでください!! 私、そんな情報知りたくないし聞きたくないっ!!」


神宿の口から漏れる、知ってはいけない賢者の秘密を聞かされたカルデラは、急ぎ彼の口を塞いだ。


こんな事を、もし誰かの耳に入り、またその本人にバレたりしたらと思うとカルデラは恐怖で震えが止まらなくなってしまう。


「っ、そ、それじゃあ、話を戻しますけど」

「なんか、言葉使いが変じゃ」

「うるさい! まだ心臓バクバクなんですから、余計な事は言わないでくださいっ!!」


カルデラはそう言って大きく深呼吸をつつ、落ち着きを取り戻そうとしている。


その一方で、神宿はさっきの話を聞いていた際、頭に浮かんだ一つの疑問をふと尋ねてみた。


「な、なぁ」

「はぁー…ん? なんですか?」

「いや、さっきからちょっと気になってる事があったんだけど」

「?」


首を傾げるカルデラに対し、神宿は言う。





「オリジナルの魔法って、普通使うって難しいんじゃないのか?」





何故、神宿がそんな事を口にしたのか。

それにはある理由があった。


神宿は現在、師匠であるアーチェから、オリジナルの魔法を使えるよう修行課題を出されている。

がしかし、半年経って尚、神宿は一度としてオリジナルの魔法を成功した試しがなかった。




それなのに何故、オリジナル魔法であるレイズヒールはあんなに簡単に使えているのか?


そこが神宿にとって不思議でならない事だったのだ。



(普通に考えて、オリジナルの魔法って超難題の魔法なんだよな? だって、作る工程自体、あんなに難しいのに)


質問を投げかけながら、内心でそう思う神宿。

だが、そんな彼の問いに対し、


「トオルは何を言ってるんですか?」

「え?」

「まぁ、確かにオリジナルの魔法は確かに神聖なものです。でもーーーー」


カルデラは不思議そうな表情で、こう言ったのだ。






「そもそも、この世界にある魔法は全てがオリジナルの魔法なんですよ?」






その言葉は同時に、神宿の新たな疑問の種となったのである。?


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