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再会



獣人だけが持つ力『カフタ』

その力によって、先の未来。自身の敗北わ視たガルアは、未だその現実を受け止められずにいた。


「ふざけるな…っ」


震える拳に怒り。

震える体に怒り。

そして、



「貴様が」



そしてーーーー。





「貴様のような奴が、この俺より強いわけがないんだッ!!」





怒りに任せた一振りを、目の前に対峙する神宿に向けて放とうとした。


ーーーーその時だった。







「そこまでかしら」









パシュ!? という奇妙な音と共に、ガルアの見えない斬撃がその直後に相殺された。

それを行なったのは、一つのか弱い手。



一瞬にして神宿の前にテレポートした天然の聖女である少女、ミーティナだった。




「…お、まえ」



突然の事で困惑する神宿に、ミーティナは顔だけ振り向かせながら口元を緩ませる。

しかし、その一方で目の前に対峙するガルアの表情には、明らかな怒りの感情が露わになっていた。


「邪魔をするなッ!! まだ勝負は」

「ええ、確かに選定戦は今も執り行われている最中ですね。だけど、選定戦とはそもそも貴方たち個人ではなく周囲の者たちの目が重要になってくるのです」


そう言って、怒りに燃え上がるガルアとは相反して、冷静な表情を浮かばせるミーティナは小さく息を吐き、






「そして、現に今。貴方はそこの彼に勝っている。これ以上勝負を続ける意味はないでしょう?」





ガルア自身が勝利していることを、周囲の視線を含めて、本人にわからせるように語りかけていく。

その言葉通り、誰もがその言葉に異論を唱える者はいなかった。


だが、対するガルアだけがその言葉に納得が出来ず、


「何が勝負だ……こんな、ふざけた真似をされたままで」


更に言葉を繋ごうとした。

ーーーーーだが、







「ーーーーーーそれに。私は今、そこまでと言ったのよ?」






ミーティナがその言葉を発した次の瞬間。

その場の空気が凍った。

それはまるで、触れてはいけない一線に足を一歩、踏み入れたかのように、



「聞き分けなさい」



ミーティナは聖女としての顔ではない。

王族貴族、第二令嬢の顔を垣間見せた、瞬間でもあった。


「ッ……」


ーーーーそして、ガルアは震える拳を握り締めながら、頭を下げ、





「それでは、皆さん。この選定戦の勝者として、そこにいるガルアこそが選定の勇者として選ばれることに異論はありませんね?」




ーーーーミーティナが発したその言葉によって、多大な拍手がその場一帯をうめつくす形で勇者を決める選定戦は幕を閉じる事になった。










「トオル! 大丈夫ですか!?」

「……あ、ああ」



結界が解けた後、神宿に駆け寄るカルデラはそう言って不安一杯の表情を露わにさせている。

外見上、大きな傷といった怪我は見受けられないが、神宿の口の端からは血が流れた痕が微かにある。


カルデラは直ぐ様回復の魔法を神宿に掛けようとした。

だが、



「っ、それより……カフォンの奴はどこ言ったんだ?」



神宿が投げ掛けた言葉に対し、カルデラは遅れて気づいた様子で周囲を見渡す。

しかし、貴族たちの並ぶ列やその場付近に赤ずきんを被る少女ーーーカフォンの姿は見受けられなかった。







選定戦を終え、側近である貴族を連れて校内を歩くガルア。

だが、そんな最中でガルアは、ふと足を止めると、


「お前たちは先に行って待っていてくれ」


そう言って、側近たちをその場から外させた。



そして、誰もいなくなったその一本道でもある校舎の廊下。

ガルアはそんな通路端に顔を振り向かせると、




「…………」



そこには周囲の視線から身を隠す赤ずきんを被る少女、カフォンの姿があった。



「……ガルア」

「久しぶりだな、カフォン」



そして、カフォンとガルア。

廃貴族と呼ばれるようになる手前まで親しい仲であった友と、数年ぶりの再会を果たすのであった。



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