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第二令嬢




選定の聖女、ミカナの言葉によってその場に一瞬の沈黙が落ちる。


「お前、何言って…」


神宿は彼女の口から突然と発せられた言葉に対して動揺を露わにさせせ、顔を引きつらせていた。

だが、その直後に、




「聞き捨てならないな、選定の聖女よ!」




沈黙を打ち破るような大きな声を上げ、貴族の波の中から、数人の配下を引き連れた男がやってくる。

それは選定の勇者として選ばれた青年ーーーーーガルアだ。




「……貴方ですか」


だが、そんな彼に振り返ったミカナは、そう呟きながら冷たい瞳を向ける。

その一方でガルアはそんな彼女の前に立ち、同時にその後方にいる神宿を睨みつけながら口を動かした。


「選定の勇者として選ばれた俺を無視して、こんな名もわからない、貴族でもない平民のような男を勇者などと」

「確かに。……彼の素性は私も詳しくはわかりません。しかし、彼は私を守ってくれたのです。選定の勇者と呼ばれた貴方ではなく、この彼が」


その発言に周囲がどよめく中、少し離れた所ではカルデラとカフォンが神宿を睨んでいる。


まるで、またか……と、眼力で訴えて掛けられているかのように。




「っ………な、なぁ」



神宿はそんな彼女たちの視線に冷や汗を流しつつも、この場を治めるべく背中を見せるミカナに声を掛けた。


「はい、どうしました?」

「……っ、いや、その。あ、アンタを助けたっていうのは……俺じゃなくて、多分他の人じゃ」

「いいえ、貴方でしたよ。街中で誰も助けてくれない中、貴方だけが追っ手に追われていた私を助けてくださったじゃないですか? ……風を纏った弓から放った矢で」

「!?」



風を纏った弓ーーーそれは、神宿の持つアーチャーウィンドの事を言っているのだろう。


神宿の言葉に対して、まるでその事実を見ていたかのように、そう答えながら口元を緩ませるミカナ。

矢に関してならまだしも、神宿の手にあった弓の形状すらも彼女はしっかりと答えていた。


(コイツ……あの距離から俺の姿が見えたっていうのか?)


神宿は頰に冷や汗を垂らしつつ、目の前で対峙する選定の聖女、ミカナに対して強く警戒する。

だが、その最中でーーーーー





「ふざけるな…」





その言葉と共に、ミカナの背後にいた青年。

ガルアの口から、その怒りを滲ませた言葉が漏れた。そして、それと同時に彼の体から赤いオーラのような光が纏わり始めたのだ。



神宿とミカナは共に顔色を険しくさせながら、構えようとした。




ーーーーーーだが、その時。









「鎮まりなさい」









美声とも取れる、その声によってその場の騒音が一瞬にしてピタリと止また。

そして、


「っ………申し訳ありません、ミーティナ様」


怒りをこみあがせていたガルアが頭を下げて、片膝を地面につきながら謝罪する中、



「別に構わないわ」


もう一人の聖女。

ミーティナがいつの間にか神宿たちの直ぐ側まで歩み寄っていた。



そして、ミーティナは神宿と向かい合い、その唇を開く。


「貴方、名前は何というのかしら?」

「………トオルだ」


選定の聖女であるミカナとは違う、どこか異様な空気を纏う聖女ミーティナ。


警戒を続けたまま答えた神宿に対し、ミーティナは小さく、……そう、と答えた。

ーーーーーそして、




「……確かに、選定の聖女の言葉が本当であるなら、貴方こそが勇者として選ばれるべきなのかもしれないわね」

「なっ!?」




その発言によって、その場一帯は再び大きく騒つく。

しかし、ミーティナは続けて口を動かし、


「でもね。正式な選定として、ガルアもまた選定の勇者として選ばれた者なの。だから一時の発言だけで変更することを認めるわけにはいかないの」


彼女はまるで、その場にいたミカナにそう言い聞かせるように言葉をつなげる。


ミカナもまたその言葉に対して反論がない様子で、顔を伏せていた。







ーーーーーーーーだが、その次にミーティナが語った言葉によって、






「だから、今から場を要した、もう一度選定戦をやってみようかと思うの?」

「「「!?」」」






場は一瞬にして騒乱に包まれた。

そこにいた誰もが驚きを隠せない中、



「その方が、後腐れもないでしょ?」



ミーティナは優しげに笑いながら、そう答える。



…………。

一瞬、何が起こったのか分からず固まってしまっていた神宿。

だが、遅れて目の前の事態に気づき、直ぐ様今の発言を撤回させようとした。

だが、


「……って、ちょっと待てよ!? 何で俺が」

「口を慎め! この平民がっ!!」



片膝をつくガルアは神宿を睨みながら、その言葉を遮り、






「彼女は聖女にして、王族貴族の令嬢でもあるのだぞ!!」







その事実を口に出したのだ。



王族貴族。

その言葉は、この世界に住む住人、貴族たちでさえ恐れおののき、反論すら出来ない上位に立つ者たちの事を指す言葉だった。





(……コイツが……王族貴族…?)





驚いた様子でミーティナを見つめる神宿。

対する彼女は、そんな神宿に対して口元を緩ませ、



「はい、私は王族貴族の第二令嬢ことミーティナです。よろしくお願いしますね…………トオル」



ミーティナはそう答えるのであった。



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