赤ずきん
それから二日後。
時が経ち、魔法学園に在中する生徒たちは今、学園のグラウンド端に立ち、時が来るのを長々と待っていた。
時間は夕暮れ時に差し掛かる頃合いだが、
(それにしても、貨車とか乗り物とかで来ると思ってたんだけど……)
舞踏会にそぐわない正装、いわゆるタキシードに近い服に着替えさせられた神宿が見つめるグラウンドには、
(まさか……魔法陣で一斉にテレポートしてくるとは思わなかったな……)
その地の面精一杯に複数にも交わりながら、尚且つ規則正しく並べられた魔法陣たちが教師たちによって書き記されていた。
そして、夕陽が沈みかける時。
魔法陣は神々しい光を放ち、
「ようこそ。このような場においで頂き誠に感謝しております!!」
総勢五十人近い貴族の団体が魔法学園にやって来たのであった。
そして、夕から夜へと変わった頃。
場所を移し、皆が今学園に配置されている体育館らしき場所に集まっている。
体育館とは言ったが、実際にはどこかの式典場ではないかと疑いたくなるような豪勢な場所だった。
また周囲には数々の布で覆われたテーブルが置かれていた。
そして、その上には滅多に口にする事はないだろう、豪勢な料理が配置され、
「魔法陣でのテレポートって、また大々的だよな」
「まぁ、確かにそうですね」
また周囲の生徒たちも貴族の出が多く、この場に来た親しい知人たちと和気藹々な話を続けている。
神宿とカルデラはそんな彼らを見渡しつつ、食事に手をつけていた。
ちなみに、カルデラの衣装はというと青が特徴的なドレス姿をしている。
神宿に、綺麗だな、と言われて舞い上がっていたのは、また今後の話として…
「ところで…」
気まずそうなカルデラの視線の先。
神宿自身あまり見ないようにはしていたのだが………流石にそう言うわけにもいかずして、
「………………
「あれ、物凄く目立たないですか?」
「………まぁ、大丈夫だろ。師匠のだし」
と、簡単に話を済まそうとした所で、
「目立つでしょうがーっ!?」
その直後。
神宿たちの目の前で、一人の少女が叫び声を上げたのである。
だが、そんな大音量の叫びに対しても、周囲の者たちから反応という反応は見えない。
まるで最初から何もないかのように、自分たちの会話を続けているのだ。
だがしかし、それでも続けて目の前の少女は騒ぎ続けている。
「みんなドレスとタキシードなのよ!? それなのに、何で私だけこんな姿なのっ!? せっかく衣装も見繕ったのにっー!?」
「………いや、まぁ、気持ちはわかるけど……お前場合仕方がねぇだろ。まだ、あの噂も解消できてないんだし」
「そ、そうですよ。それに、何というか……その…」
苦笑いを浮かべる神宿とカルデラは、もう一度目の前に立つ、一人の少女を見る。
そしてーーーーーー生暖かい宥めるように視線を送りながら、
「「まぁ………赤ずきん、みたいで可愛いから(ですよ)」
「っーーーーー!?!? 好きでなってるわけじゃないのにーっ!!」
廃貴族である事を隠すためだよー? と。
ニコニコ顔の賢者アーチェにそう言われ、そして、強引に上から認識阻害の魔法を施した赤いローブを着替えさせられた少女カフォンは、
「赤ずきんって! 赤ずきんーーーーーーって!!」
涙目で喚き続けるのであった。




