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聖勇舞踏会




ーーーそれは、神宿が一人の少女を助けた。

その数日後のことだ。



「聖勇舞踏会?」

「そうなの! 何かいきなりそれが明後日にこの学園で開かれることになったのよ!」



学園の休み時間の最中。

カフォンがそう言って騒いでいるのを神宿を耳にしていた。

ーーーーだがしかし、この時までは神宿自身、それが自身に深く関わってくるなどとは全く思ってもみなかった。








学園の授業が終わり、男子寮に帰って師匠であるアーチェの話を聞くまでは…。





「聖勇舞踏会って……ねぇ、トオルくん。ごめんだけど、もう一回言ってくれるー?」



そう言って頰を引きつらせながら、そう尋ねる師匠こと賢者アーチェに神宿はカフォンに聞いた話をもう一度説明する。

ちなみに、その舞踏会が開かれると聞き、慌てた様子だったカフォンとカルデラは急ぎ自宅に帰ると言って、今この場にいないわけなのだが、



「はぁ〜〜〜〜〜〜っ」



……そんなことより、今目の前で大きな溜め息を吐くアーチェの方が気になって仕方がない。


「……な、なぁ。何か、物凄く嫌な予感しかしないんだけど、ってか俺関係ないよな? だって舞踏会って貴族とかが踊る奴だろ?」

「………んーーーーまぁ、そう言い分は当たってるっていえば当たってるんだけど、ちょっと足りないっていうかーー……」


は? と首を傾げる神宿に対して難しい表情を浮かべるアーチェは小さく咳き込みつつ、今回行われる舞踏会の名前を説明してくれた。






「えーと、聖勇舞踏会の聖勇っていうのは、聖女と勇者を掛け合わせた言葉なの」

「………ん?」

「つまり、明後日にはあの学園に各地の聖女と勇者が揃って集まるってわけなんだよー?」





……………一時。

その場に沈黙が落ちる。


だが、神宿は直ぐさま反応するかのようにダラダラと汗を流しながら……アーチェに尋ねた。



「そ、それって……ぐ、偶然か?」

「んーー……普通に考えたら……偶然じゃないと思うかなー? だって、トオルくん。一応勇者候補の一人だし」




その言葉通り、神宿 透は転生者であり、また勇者候補の一人でもあるのだ。


しかし、その事実は公に広まってはいない。

とはいえ、以前に一度、ある一人の賢者によって勇者とバレ、災難な目にあった経験もあった。


「……ってことは、つまり……俺が勇者候補だって事は向こうにバレてるってことなのか?」

「………どうかなー? まだバレてないとは思うけど、十分注意しないといけないかもだね。とくに、バレたりしたら色々振り回されるのは確実だから」



だって貴族だしー……、とぼやくアーチェの言葉に神宿は大きな溜め息を吐く。

しかし、その言葉も満更的外れでもないのだ。


これまで、神宿が勇者候補だと知るものは数少なくはいた。だが、それでも下手にその事実を漏らす者はいなかった。


しかし、今回の舞踏会では数多くの貴族たちが集まるだろう。そして、そんな大々的な場所で神宿が勇者であることがバラされたとすると……。



「………」



それは間違いなく、大きく世界各地へと拡散されてしまうだろう。

それほどに『勇者』という言葉には大きな影響力があるのだ。



「………な、なぁ」



もちろん、バレないよう神宿自身も十分に警戒はする。

しかし、それでも心もとないのが本音な所だ。

………だから、神宿は、




「師匠。……今回だけでいいから、一緒についてきてくれないか?」




……そう尋ねつつ、アーチェに視線を向けたのだ。……が。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーしかし、





「……ごめんね、トオルくん。……それは、無理なの」




アーチェはそう言って、顔を背けたのだ。

そして、動揺する神宿に対して、彼女はその理由を述べる。

ーーーーーーそれは、









「……私、聖勇舞踏会から出禁くらってるから」

「……………………え?」








……それは何とも恥ずかしい話、かつて舞踏会が行われた際。

アーチェは酒に酔い、その舞踏会を破茶滅茶にした経験があったのだ。



そして、今後舞踏会に出る事を禁止されたのだという。




「……し、師匠」

「……ご、ごめんなさいーっ!!」




今この状況で、そんな話を聞きたくなかった上、物凄く不安が募った。


顔に手を当てながら溜め息を吐露する神宿。

そんな彼に対し、涙目のアーチェはそう言って何度も謝るのであった。




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