表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

138/156

新たなる邂逅




時は経ち、学園の機能がほぼ完全に元通りになった今日(こんにち)

そして、学園が全生徒たちに試験として出す予定のレベレストダンジョン攻略の期限まで残すこと後三ヶ月となった、ちょうどその頃。



「今から対人戦を行いますので、皆さんは各チームに分かれてこちらに集合してください!」



校舎前のグラウンドでは監督として選ばれた男性教師による指示の元、各生徒たちが各々とチームを固めながら動き出していた。

しかし、その一方で、



「ところで、トオルはどこ?」



ツインテールが特徴的な少女、カフォンはそう言って不機嫌な顔色を浮かべている。

彼女が探しているのは同じ寮に住む少年、神宿 透という一男子生徒なのであるが、



「えーっと、なんでも寝坊したみたいで」



そうカフォンの問いを答えたのは、ポニテールの髪型をした一人の少女、カルデラだった。

彼女もまたカフォンと同じチームメンバーの一人であり、また神宿と同じ寮に住んでいる一女子生徒であるのだが、



「なんで!? だって朝出る時、部屋の中でトオルってば返事返してたじゃない!?」

「え…っと、何でも二度寝しちゃたみたいらしく………さっきアーチェさんから連絡が来たんですよ」




アーチェというのは神宿の師匠であり、また数少ない賢者の内の一人だ。

今は休養とかなんとか言って、男子寮でグッタリとくつろいでいるのだが…。



「って、どうするのよっ!? 私たちのチーム、一人欠けてるんだけど!?」



……いや、いまはそんな事はどうだっていい。

問題なのは、同じメンバーである少年、神宿 透が今この場にいないということだ。



「「…………」」



二人は共に見つめ合いながら、沈黙の後に大きな溜め息を漏らす。


というのも、対人戦において神宿はチームの要でもあるのだ。

しかも、今日授業で初となるチームによる対抗戦。 それなのに、その本人がいないときた。


……それはもう、溜め息もつきたくなる。




「残るチームは順番に列に並んでください!!」



だが、そうこうしている間にも着実と生徒たちが教師の元に集まり、あと少しで対人戦が始まろうとしているのも事実だ。



「もう! 後でトオルにネチネチと説教してやる!」


カフォンはそう言って、ムカムカと不満を漏らしながら皆が並ぶ列へと向かって歩み、



「まぁ、後もう少ししたら来るらしいので」



カルデラはそう言って苦笑いを浮かべながらカフォンの後に続きつつ、腰に納める剣の柄にそっと手を乗せるのであった。















ーーーーーーそして、同時刻。

そこは学園へと向かう道の中間にある街通り。

人々で賑わう人の波が道行に続く中、


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁっ!」


素朴なローブを身に纏う一人の少女は荒い息を吐きながら、走り続けていた。

そして、彼女は後ろを何度も気にしながら、



「誰か! 助けて!!」



彼女は行き交う人々向かってそう叫び続け、助けを求めていた。

ーーーーーしかし、


「何やってんだ、あの嬢ちゃん?」

「助けてって、後ろに誰もいないよな?」


彼女が走り去った後で人々がその後ろを見るも、誰の姿も見えない。

そして、何もないことに首を傾げる者もいれば、その一方で、その大半の人々が彼女の言葉に対し、


「アレだろ? 興味を示してほしいとか、そんな感じなんじゃないのか?」


彼女の言葉を、嘘、と結論付けたのである。

そして、彼らは嘲笑いながら視線を外し、いつも通りの道を歩いていく。


ーーーーーーだが、そんな人々の中で、




「……………」




一人の少年だけが、そっと眉を顰ませていた。












どれだけ叫ぼうと、助けは来ない。

どれだけ逃げようと、それは追ってくる。


荒い息を吐き続けながら、路地の行き止まりに追い詰められた少女は体を震わせながら振り返り、それを見る。




それは宙を浮く、小さな箱。

しかし、その箱の表面には小さな魔法陣が展開されており、そこから、


「ひっ!?」


ビュン!!! という音と共に、高速の魔力弾が少女の頰すれすれを掠めながら路地の壁へと着弾する。

そして、恐怖に震える彼女の元へと、ゆっくりとその箱は近づいてくる。



「いや、来ないで……っ!」



逃げる道を失い、助かる道もない。

少女は震えながら、もう叫ぶことしかできなかった。

ーーーーーーーだが、そんな抵抗も虚しく、瞳に映るそこには、箱の魔法陣から次の魔力弾が打ち出されようとされ、





「いやぁあああああああああああああああああああああああああーっ!!」





少女は涙の溜まった瞳を瞑りながら、悲痛な叫び声を上げた。


ーーーーーーーその時だった。








それは、その場所から数キロ離れた地点。

高台の上で、



「ウォーター《ホーミングボム》」



その言葉共に、その一撃の矢は放たれた。










そして、次の瞬間。

宙を浮く箱の横腹めがけ、水の矢が直撃と同時に爆発を巻き起こした。



「っ、ぇ………?」



突然と起きた光景に少女は目を瞬かせながら、茫然とする。

だが、その矢が直撃した小さな箱はといえば、そのまま地面にゴトンっと落ちながら事切れたように機能を停止させたのであった。











そして、高台の上でそっと息を吐く少年。



「まぁ、これで大丈夫だろ。……他に、アレみたいなのは見当たらないし」



緑色の光、アーチャーウィンドを身に纏う神宿 透はそう言って自身の力を解いた。



あの小さな箱状のものが何だったのかは分からない。

後、何故ーーーー彼女と神宿にしか見えていないのかも、皆目見当はつかなかった。

とはいえ、それを深く追求する気は神宿にはなく、


(まぁ、何にしてもややこしそうな事には変わりないだろうし)


と、内心でつぶやく神宿。

だが、ふと視線を変えると、高台の上から見渡せた学園のグラウンドでは、既に何やら授業らしきものが始まっており、



「って、やばっ! 俺遅刻してるんだった!?」



神宿は慌てて急ぎ、その場を後にするのであった。











しかし、この時。

神宿はその事に気にとられーーーー気づくことが出来なかった。



それは路地の奥。

小さな箱に追い詰められていた少女が、片目の前に小さな魔法陣を展開させ、神宿の姿を目視していた事に。


ーーーーーそして、




「……………やっと見つけた。私の…勇者さま…」




この邂逅が、のちの騒動を引き起こすきっかけとなる事に…。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ