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ガールズチャレンジ





それは、ある日の夕方。

学園から帰った男子寮にて、




「というわけで、今から私たちで夕食の晩御飯を作りたいと思います!」




リビングの中央に立つ長髪の少女、カルデラがそう宣言をした。


そして、そんな彼女を他二人であるカフォンとアーチェは見守っている。

当初は突然リビングへと呼び出されて共に首を傾げていた二人だったが、彼女が語った言葉により、その意図が直ぐに理解することが出来た。


ーーーーというのも、



「ちなみにトオルは今、部屋でダウンしてます。なので、今回はトオルに頼らない方向でやりたいと思います!」


神宿は今、大賢者ファーストから出されたド級の修行内容にバテ、最近では修行を終えたらすぐ布団に寝堕ちてしまう日々が続いていたのだ。

幸い、晩御飯などに至っては神宿が朝のうちに作り置きしてくれているオカズのおかげで飢えをしのいではいるが、



(((女三人もいて、何もしないって……色々まずいですよね(よね)(ですねー)…)))



料理全般を神宿一人に任せっきりの毎日。

そんな大変な作業を少しでも肩代わりしたい、そう思った彼女たちは、



「それじゃあ、頑張りましょう!!」

「「お…おー」」




ーーーかくして、女三人による(デス)クッキング、いや…ガールズチャレンジが開始される事になるのだった。












だが、一見まとめ役として話の中心にいたカルデラ。

………そんな彼女と打って変わって、カフォンの方がまだ真面だった。



「あ、アーチェさん? ……それ、何?」

「んー? あーこれはねー」



そう言って賢者アーチェが片手に持っているのは一羽のニワトリらしき食材……だった。

全身紫色の羽を持ち、また頭のトサカには何故だか無数の棘が見え、



「疲労回復の血を持つコカドリアンのト」

「絶対それ入れないでくださいっ!!」




カフォンは全力で断固阻止の叫びを放った。

一方のアーチェは不満げな表情を浮かべながら、


「えー、でもー」

「ダメっ!! 効果とかは今は横に置いて、まずは形から完成させるの! 後、そんなの入れたらスープが絶対変な色になるから!!」


……何とか、劇物混入を阻止することに成功するのであった。

ーーーーそして、また一方で、



「カフォン? これでいいでしょうか?」

「ん? えーと、どれど……」



カルデラに声を掛けられ、振り向くカフォン。

しかし、そこには……あるはずの食材がなく、


「これ、何?」

「ん? 何って、ただ野菜を切っただけ」

「原型どこいったの!? もう汁しか残ってないじゃない!?」


無茶苦茶な微塵切りをしたのか、まな板にはすでに野菜の原型は残ってはいなかった。

ただ残っていたのは野菜の水分だけであり、



「てへ」




ーーーーと、可愛らしく舌を出すカルデラなのだった。



「アーチェさん、離して! コイツに今から銃ぶっ放すからっ!!」





そうして、かれこれ一時間程の時間が経ち、


「アーチェさん!! 今度は何入れようとしてるのっ!?」

「カルデラ! それ焼き過ぎ!! 焦げてるから!!」

「アーチェさんーーっ!? お願いだからもうワケがわからないもの入れないでーーっ!!!」

「カルデラ、あ、アンタ….お、鬼でしょ!?」





ついに。




「で、出来た…っ!」




皿の上に一品。

どこからどう見てもおかしくない、オムライスが完成したのである。


「よし! 後はこれをトオルにたべて貰えば」

「…………」


カルデラがそう意気込む一方で、床に手をつけ疲労しているカフォン。

と、


「あれ? アーチェさんは」


カルデラかアーチェの存在がないことに気づき、辺りを見渡していると、




「トオルくん、連れてきたよー?」

「離せーーーっ!?!?」




植物の縄で縛られて神宿がアーチェによってリビングへと引きずられながら連行されている真っ最中であった。


「何で縛ってるんですか?」

「だってトオルくん、いつも逃げるから」

「あー」


カルデラとアーチェが共に意気投合している一方で、




「か、カフォン。お前ら……俺を殺すつもりなのか?」




真剣な表情を浮かべる神宿は、そう言ってカフォンにそう語りかける。

だが、対するカフォンは口を紡ぎながら、顔を背け、


「わ、私も頑張ったの!」

「な、何を………?」

「………と、止めるのを。……あの二人が色々なモノを入れ」


次の瞬間、神宿は全力でジタバタしながらイノ虫のようにその場から逃げようとした。

しかし、


「どこ行くんですか? トオル」

「ダメですよー?」


行く手には既にカルデラとアーチェの姿があった。

そして、その手にはオムライスが乗った皿があり、


「だ、大丈夫。……そ、その、見た目的にはとくに問題はないから」

「っ!? お前っ、それって中身がヤバイって意味じゃ」

「……………」

「そこで黙んなよっ!? 無茶苦茶怖いだろうがっ!?」


カフォンの反応で、より一層に恐怖が増した。

しかし、既に手遅れなわけであり……、





「それじゃあ、はい! あ〜ん」





強引に口を開けられ、ズボッ! と。

















その後、神宿の意識は次の朝まで目覚めることは無かった。


………だが、その後日。

神宿は大賢者ファーストに、他三人の夕飯を作りに来て欲しい、と頼みに行くのであった。


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