魔法学園への入学
まさか、こんな急展開になるとは思いもしなかった。
その翌朝の今日この日。
神宿 透は賢者アーチェがいつの間に用意してくれていた学生服や諸々の荷物を持ちつつ、ある場所へと向かって歩いていた。
というのも、昨日学園に入学しろと言われてからはーーーもう、後の祭りだったのだ。
何故なら、睡眠、準備、食事と手早く(強引に)すまされ即学園近くの林へとテレポートさせられたのだから。
まるで、色々難癖をつけてくるだろうから先にやっちゃえ! と、手早く事を済まされたような気分だ。
まぁ、だてに一年間一緒に住んでいた師匠なだけあって、図星かといえば図星なのだが…。
「……そういえば最後に師匠のやつ、なんか言ってたよな」
そう言って神宿は、テレポートさせられる間際にアーチェが言っていた言葉を思い出す。
『ちなみに悪目立ちすると色々大変だろうから、寮も含めて色々調整しておいたからねー?』
調整ってなんだよ、と思いもしたが。
テレポートされた着いた先で、ふといつの間にかポケットに入って手紙に気づいた神宿がその中身を開くと、そこには神宿がこれから寝泊まりするであろう学生寮への行き道が記されていた。
おそらく、この寮が調整やら何やらをした建物なのだろうが…。
「………はぁ」
……とりあえず、着いてから諸々考えよ。
そう自己完結した神宿はもう一度溜息を漏らしつつ、重い足取りで手紙に書いてあった学生寮へと向かった。
ーーーーーーーーので、あったが、
「いやいやいや、それにしたって……オンボロすぎるだろ、これ」
着いた先にあったものーーーーーそれは今にも吹けば壊れてしまいそうな、木造建築の寂れた二階建ての学生寮の姿だった。
いや、確かに外での野宿に比べれば……マシと言えばマシなのだろうが…。
「…………って、今更言ってもな…」
アーチェの元へと戻りたくとも、神宿にテレポートの魔法も使えるわけでもなく、その上金銭もそんなにない。
(……もう腹をくくるしかない)
色々と諦めムードを漂わせながら神宿は渋々そんな寂れた寮の扉を開き、中へと入っていくのだっだ。
そして、その数時間後。
正確にはその一時間後くらいなのだが、神宿は今、学園にやってきている。
寮で手早く支度をし終え、手紙の裏に書いてあった道順を辿って学園へとやって来たのだが、
「……」
……うん、いやはや…、
(まさか、外見だけがボロボロで中はしっかり整えてるって…。ホント、アイツにはいつも驚かされてばっかだよな)
神宿が入っで行った学生寮。
そのボロボロだった建物の外見が嘘だったかのように、寮内部はキッチリとした造りになっていた。
各部屋と用意された個室に加えて、神宿の自室には綺麗なベットに加えて必要な魔法の書。
その上、キッチンがあるリビングにはアーチェの家で使っていた必要最低限の家具や料理器具が揃えられていたのだった。
(………まぁ、ただ一人に対してあの寮の大きさはどうかと思うけど)
神宿はそう内心で呟きながらも、師匠のしてくれた事に嬉しさを感謝していた。
そして、だからこそ、これ以上わがままを言ってはいけないなと思いながら、神宿は手紙の最後の一文にあった、教師へと挨拶するように、との文を読みながら学園内の職員室にへと向かって歩いていた。
すると、その時。
ちょうど通路の角に差し掛かろうとした矢先で神宿は一人の女子生徒とぶつかりそうになった。
「きゃっ!?」
共にぶつかりはしなかったものの、後ろへとふらつく女子生徒。
「っ!」
神宿は慌ててそんな彼女の腕を掴み取り、何とか倒れるのだけは阻止できた。
「悪い、大丈夫だったか?」
神宿がそう声を掛けると、対する彼女も同じように謝る仕草を見せ、
「あ、いえ。こちらこそ、大丈夫でしたか?」
「ああ、俺は別に大丈夫だけど」
そうですか、とそう言って、手を離した神宿に向き直った彼女は手慣れた仕草で頭を下げながら、
「貴方も私と同じこの学園の学生のようですね。申し遅れましたが、私の名前はカルデラといいます」
「あ、ああ……えーっと俺の名前は、神宿 透って言って」
「カミヤドトオル?」
「あ、トオル。トオルでいい」
「? と、トオルさん、でよろしいのですか?」
「ああ、それで合ってる」
この世界では、苗字という概念がない。
なので神宿はアーチェに呼ばれているように下の名で自己紹介をしたのだが、
「そうですか。……なら、トオルさん、これから同じ学園の生徒として、共に立派な魔法使いになるよう頑張りましょう」
それでは、と言って礼儀正しく礼をして去っていく女子生徒のカルデラ。
その立ち振る舞いや、清楚な外見、また言葉使いなどからも、普通の市民とはどこか違ったものを感じた。
神宿はそんな離れていく彼女を見つめながら、
「うーん、あれってやっぱり貴族とか、か?」
そう勝手に想像しながら同時に、性格のきつい貴族とはまた違うんだな、と思う神宿なのだった。
そうしてカルデラと分かれた後、学園の職員室にたどり着き、自分がこれから通うクラスへとやって来た神宿は、
「このクラスに転校してきました、トオルです。よろしくお願いします」
言葉を噛まずに自己紹介を言えて、何ごともなく入学出来た、とそう思っていた。
ーーーーーーだが、
「おい、貧乏野郎」
「は?」
いかにもどこの学校にでもいそうな悪ガキもとい、子分を連れた男子生徒が突然と話しかけて来たのだ。
しかも、その上、
「お前、今日から俺の手下な? いいな?」
「………いやいや、何で?」
「は? 何口答えしてんだ、お前!」
「おい、貴様!! カリオカさまがせっかく声をかけてくれたんだぞ? 何だその態度は!」
先に話しかけて来た男子、カリオカの後ろに続く子分の生徒たちが共に怒った様子で神宿に言葉をぶつけてくる。
とはいえ、いきなり手下になれと言われて直ぐにハイ、と答えるのも神宿的には正直嫌だった。
仮に神宿が弱々しい性格だったなら、怯えてハイとすぐ答えていたのかもしれないが、
(はぁー、最悪だなぁ……)
また厄介な奴に絡まれた。
神宿が大きな溜息を漏らすと、どうやらそれが感に触ったのか、
「お前! 今から俺と決闘しろ!!」
と。
「ーーーーーえ?」
かくして入学初日から、初の対人対決に巻き込まれてしまう神宿なのであった。




