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露見




夢の中。

意識の奥へと眠るカフォンはその時。ある光景を見ていた。

それは、かつて存在していたカフォンの家族、いや幸せの風景だ。

父と母、それに使用人たちも集まり、皆笑い合いながら穏やかな日々を過ごしていた。





ーーーーだが、



「!?」



それは風景は再び変革する。


まるで次の映像へと移り変わったように、カフォンがその瞳で新しい光景を目の当たりする。





それはーーーーーーまさしく地獄そのものだった。







燃え盛る火に包まれた、廃墟とかしたカフォンの屋敷。

また、その屋敷の玄関扉は開かれ、通路のいたるところには倒れる使用人たちの姿があった。

そして…….、



「に、げろ……」



通路の奥。


貴族ギアンによって、地面に倒れ踏みつけられるカルデラの姿。



そして、ギアンによって、首を絞められている神宿の姿が、そこにはあった。










「嫌ーーーっ!!!」




悪夢から逃げるように飛び起きたカフォン。大量の汗を流し、荒い息を吐く。

そんな彼女の傍で、


「大丈夫ですか、カフォン様」


カフォンの家に使える使用人、ラフリサの姿があった。



「はぁ、はぁ、っ、ラフリサ…どうして…」

「はい、カフォン様が体調を崩されたとお聞きしましたので、こちらの寮へと赴いたまででして」


ラフリサの言葉に導かれるように辺りを見渡すカフォン。

その部屋の内装を含め、ここが男子寮の一室である事は確認することが出来た。


そして、その上で窓の外を見た時、既に時間は朝を過ぎている事も理解することができた。





「ねぇ、ラフリサ…」

「はい」

「カルデラさんと、トオルは?」

「……っ」



カフォンはここにいない二人の所在を彼女に確認した。

仮に学園に行っているのであれば、長くこの部屋で休んでしまった事に対して謝罪したいと、そう思っていたからだ。




だが、



「ラフリサ?」

「あ、いえ。カルデラ様とトオル様は今学園の方に通っておられますので」


そう言って笑うラフリサ。

その言葉の内容からは、至って何の変哲もない普通の言葉に思えた。


しかし、その時。

ラフリサが見せたある仕草に対し、カフォンはある記憶を思い出した。




それは生前生きていた母から教えてもらった言葉だった。



『ラフリサはね。嘘をつく時、両手を握るの。本人は気づいてないようだけど』








「カフォン様! どちらへ!」


止めようとするラフリサを押し切り、廊下を走るカフォン。

カルデラの部屋に行ったが、そこには誰もいず、彼女はもう一人の部屋へと向かっていた。



「トオル!」



それは普段なら立ち入る事のない、神宿の部屋だ。


ーーーーだが、そこにも彼の姿はない。

カフォンは荒い息を吐きながら、考えすぎだったか、とそう思いかけた。



「…ぇ」



その時。

彼女は見つけてしまったのだ。

彼の部屋。そこに置かれたゴミ箱の中に入れられた、グシャグシャに丸められた一枚の紙を…。









「カフォン様、はぁ、っ、こちら…だったのですね」


遅れてカフォンのもとにやってきたラフリサ。

足が遅い分、ここまで来るのに時間をかかってしまった。


「さぁ、帰りましょう。カフォン様」


ラフリサはそう声を出しながら、カフォン元へと歩いていく。

だが、その時。


カフォンの手には、






「ねぇ、ラフリサ……これ、どういう事?」





ーーーー丸められていた紙が広げられていた。

そして、そこには神宿たちに対して決闘を通知する内容が書き記されていた。








カフォンが何故それに気づいたのか。

それは決闘通知に使われていた紙自体に理由があった。



それは一見すれば、何の変哲もない通知書にも見えただろう。

だが、その紙には一般的な紙とは違った、ザラついた肌触りがある。

そして、何よりその紙自体がーーーーーー貴族がよく使用するソレと酷似していた。




「ねぇ、決闘って、どういう事…」

「カフォン、様…」


震える手で紙を握りしめ、そう尋ねるカフォン。


神宿の部屋にコレがあった。

それだけでも驚きを隠せなかった。

だが、何より不安を引き立てたのはーーーラフリサが嘘をついた事だった。



学園へ通いに行った。


その言葉に嘘があったのなら、それはつまり……、



「…もしかして、今日なの? ねぇ、まさか……トオルたちが、今……ギアンと決闘してるっていうの?」

「…………」

「ねぇ!! 答えてよ、ラフリサ!!!」




怒りを叫ぶようにして、ラフリサを睨みつけるカフォン。

それは使用人である彼女に対して初めて見せた怒りだった。


ーーーだが、




「!?」




その時。

怒りを忘れるほどのものを、カフォンは見てしまった。




今まで決して涙を見せ事のないラフリサが、その時、泣いていたのだ。

唇を紡ぎ、決して問いに答えない。だが、それでも彼女は泣いていたのだ。



「…………ぁ」


そして、何よりーーーーその答えない事自体が答えだった。



「ッ!!」



カフォンは紙をその場に投げ捨てながら、ラフリサの横を突き抜け、走り去ってしまった。



そして、カフォンは裸足のまま走り続け、男子寮を後にした。

ーーーーー今まさに決闘が行われている、学園へと向かうために…










「…ごめん、なさぃ」



遠くなっていく彼女の足音を耳にしながら、その場に座り込んでしまったラフリサ。


使用人なのに…。



カフォンの側に、一番多くいたはずなのに……。



何もできない自分がいる……。






ラフリサは瞳から、こぼれ落ちる涙が床を濡らす。

そして、彼女は感情を吐き出すように、




「ごめん、なさい。…ごめんっ、なさい…」




ーーー何度も、何度も、謝り続けていた。


ーーー神宿やカフォン。二人を対し、ラフリサは謝ることしかできなった…




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