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二つの魔法具




一試合の決闘が終わりを迎えた後、気を失ったカルデラはそのまま保健室へと運ばれて行った。


オリジナル魔法の砲撃魔法はそれ一発に大量の魔力を消費してしまうため、今回カルデラが倒れたのもそれが原因だろうと、大賢者ファーストは語っていた。



「あの馬鹿弟子は、後で折檻じゃ」



後、そんな言葉も呟いていた。






破壊の後は大きなものだった。

だがしかし、破壊された結界は教師数人の手によって再構築され、周囲の安全が確認し終えた上で、



「やっと俺たちの出番だなぁ」

「………」



神宿とギアン。

二人による第二試合が今まさに始まろうとしていた。







「まぁ、俺の妹は普段から遊ぶことが多くて魔法具の扱いにはあまり慣れてなかった。だから、負けたのは仕方がなかった事なんだ」


倒れたルティアを下僕たちに運ばせるギアンはそう言葉を語りかけてくる。

だが、対する神宿は睨みを効かせまま何も喋らない。

そんな神宿に対し、ギアンは鼻で笑いながら、



「だが、俺は違う」

「………」

「この試合でお前に本当の魔法具の使い方ってやつを教えてやるよ」



そう言って、ギアンは凶悪な笑みを浮かべた。

まるで、弱者をいたぶる事を楽しむかのように…





ーーーーーーそして、




「それでは試合を開始してください!」




結界の外で立つ教師の掛け声によって、試合が開始された。

その直後に、


「ウィンド、ウォーター《スクリューアロー》!!」


ーーーー先に動いたのは神宿だった。

即座に二つの魔法を酷使させ、水の矢をギアン目掛けて放つ神宿。



「ハッ! 何だその小せえ攻撃は!」



対するギアンはそう言って笑うと、指をパチンと鳴らした、その次の瞬間。

ギアンの指にはめられていた指輪が光を放ち、宙に突如として、水の矢を防ぐ魔道具が召喚される。



神宿の攻撃を防いだモノ。

それは彼の妹であるルティアが使っていた魔法具に酷使した黒一色の盾だった。

まるで悪魔の声を体現しているかのように、盾から不気味な笑い声が聞こえてくる。


「ッ!」


先手必勝の攻撃は防がれた。

だが、そんな事は等、神宿には関係ない事だった。



ギアンを倒す。



その覚悟が揺らぐことはないのだから。




神宿は続けて弦にかけるための矢を作り出す。


「アース《ボム》!!」


橙色に染め上がった光が神宿の手に集まり、矢と化す。

更に加え爆発の特性を付け加えた、神宿は再び矢を放った。



「また同じ手かよ!」


ーーーだが、それもまた黒い盾によって簡単に防がれてしまう。

盾に接触し、そのままそこで砂煙を上げて爆発してしまったからだ。


ーーーーーーだが、しかし、




「ウォーター《ボム》!!ファイア《ボム》!!」



その攻撃が防がれる事は既にわかっていた。

神宿の狙いはもっと別にあった。



連続で二つの魔法を放つ神宿。

水に火と、一直線に進む魔法は盾に直撃した瞬間に爆発する。

だが、その直後。

火の熱に当てられた水が、その場一帯に水蒸気が噴出させる。


「なっ!?」


砂煙と水蒸気。

二つの煙が混ざり合い、神宿とギアンの視界を微かに防ぐ中…



「アース」


ーーーーその視界が隠された一瞬のつくように、



「《ホーミング》!!」



神宿は今度こそ、ギアンを倒すためにその矢を撃ち放った。


その一矢は全く見当はずれな場所へと放った攻撃。

だが、それはギアンの真横に接近したと同時に急カーブをかけ、そのままギアンを倒せる距離まで狭めていく。

そして、そのまま矢がギアンに触れかけようとした。




ーーーその時だった。




「ーーーあめぇよ」




突如出現した剣が、その一撃を粉砕したのだ。






水蒸気と砂煙が四散する中、平然とした様子で立つギアン。

だが、その周囲には、


「!?」


宙を浮く盾。

そして、更に突然出現した剣を持った鎧の片腕がギアンを守るようにして健在していたのである。









「二つの魔法具…じゃと」



結界の外で観戦していたファーストは、その異様な魔法具を観察するように見据えていた。


魔法具の同時使用。

それらの行為については前例がないわけではない。

事実ギアンの妹であるルティアもまた二つの魔法具を使っていたのだから…。

ーーーしかし、



(何じゃ、この違和感は…)



魔法具を使うにあたり、術者には二つのデメリットが生じるはずだった。

…精神力と魔力、それら二つの消費が。

だが、



(アヤツからは、全く疲労が感じられん……何故じゃ)



ノーリスクで魔法具を操る様には、何かカラクリがある。

そう確信したファースト。



だが、その時。



「なぁ、賢者様よぉ!」



結界内にいたギアンが大きな声を出しながら、ファーストを睨みつけてきたのである。

そして、怪訝な表情を見せる大賢者に対して、ギアンは口元を緩ませながら、





「ーーーー早く行かないと、手遅れになるぜ?」






その言葉を贈った。

その直後。



「ーーーーーッ!?」



その瞬間、何かに気づいたファーストの瞳が大きく見開き、同時に怒りの表情を露わにさせたのである。


「ファースト…?」


その異変は神宿にも感じ取れるモノだった。

何故なら、彼女がここまで怒りを露わにさせる様を見たのは、これが初めてだったからだ。



「ッ、すまん。小僧…」


小さな声で、そう呟いたファースト。

その次の瞬間。彼女はその場から退場するようにどこかへとテレポートしていった。








ギアンの言葉によって、ファーストが退場した。

いや、せざるに得ない状況になってしまったからだと判断した神宿がギアンを睨みつける。


「お前、アイツに何を…」

「何、ちょっとした情報を教えてやっただけどだよ」


ファーストがその場から退出した事に対して、ニヤけ面を浮かべるギアンは再び視線を神宿へと戻す。


そして、警戒を固める神宿に対してギアンは口を動かしながら、



「一応先に言っといてやるが、妹と同じようにこっちの魔力切れを狙おうとするんだったら無駄だぜ? 」

「は?」

「なんせ、俺には」



自慢するように、その言葉を吐くのだった。




「ーーーストックが、沢山いるんだからよぉ」






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