修行の倍?
ドッチボールに要した授業によって、グラウンドに集まる生徒たちが皆バテバテになっている中、
「な、なぁ? 何でも、お前そんなにっ、平気そうな面してんだよっ?」
神宿と同じクラスでもある男子生徒が、荒い息を吐きながら、そう尋ねてきた。
一瞬、その問いに固まってしまった神宿だったが、しばらくして頰をかきながら、
「……さぁ、な。……たまたまだろ」
「っ、たまたまって、意味わかん、ねぇっし」
軽い調子で話をそらし続けていた。
幸い、皆他人どころではなかった為、追求はされずには済んだのだが…。
しかし、そんな神宿は……まだ知る由もなかった。
大賢者ファーストが密かに仕組んでいた、策略に対して…。
神宿のクラスが、何とか勝ち上がっていた頃。
カルデラとカフォンは今、互いにクラス同士が対戦相手となり、絶賛対決の真っ最中であった。
そして、
「手加減、しませんよっ、カフォンさんっ!」
「わ、私こそっ!」
何の巡り合わせか、二人だけの一騎打ちという展開に陥っていたのである。
本来なら、周りから歓声やら何やらと聞こえてきてもおかしくないはずだ。
だがしかし、他のクラス同様、皆バテバテになっており、声を出す気力すら残されていない状態でもあったのだ。
幸い、カルデラとカフォンは神宿の元で少しの間、修行していた事もあって余力が残っていたわけなのだが、
「「……………」」
互いに真剣勝負ということもあり、睨み合うカルデラとカフォン。
そして、先にボールを手に持つカルデラが、息を落ち着かせながら、
「っ!!」
ボールを投げようとしたーーーーその時だった。
「ちなみに、負けた方は修行を倍にする予定じゃからなぁ〜」
ーーーーーと。
どっかの誰かさんからの声が、聞こえてきたのである。
そして、ピタリ、と固まるカルデラとカフォン。
「「………………」」
互いに顔を見つめ合いーーーー沈黙の後に、ニッコリと笑った。
ーーーーーそうして、その次の瞬間。
「ふん!!!」
「っ!!!」
さっきまでの空気は一変した、ガチバトルが勃発したのである。
互いに魔力全開で投げ合っていることもあって、ボールからは鳴ってはいけない音が次々と聞こえてくる。
しかも、
「ぶっごっ!?」
「よ、避けるなぁ!? こっち、来るだっ、アンッ!?」
「ぎゃああああ!?!? ボールが男の大事な」
「ちょっと男子っ!? 何言おうとしてるのよっ!?」
再び、落ち着き始めていた地獄絵図が再開してしまう始末だ。
次々と男女共に悲鳴が聞こえてくる中、神宿は顔を引きつらせながら、
「お前、ホント鬼だな」
「にゃはははっ!! これぐらい愉快の方が面白いじゃろ?」
そうして、ご満悦の大賢者に対し、神宿は顔を手を当てながら溜息を吐くのであった。




