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授業の意味




黒いボールには、魔力を通さないと放電する仕掛けが施されていた。

だが、その他にもう一つと仕掛けがあり、




「っ、こんなもん!」



目の前から投げられて来るボールを、キャッチするべく動く男子生徒。

しかし、魔力を全身に纏わせながらでは、真面に動けず取れない。


だから一瞬だけ魔力を切って、ボールをキャッチしてから再び魔力を纏わそうと彼は考えたのである。






が、しかし、



「よっしゃ!」



と、ボールをキャッチした。

その次の瞬間。



「ブギャア!?」


まるでビンタを受けたかのように、ボールを受け止めた男子生徒の体は後方に吹き飛ばされ、ピクピクと陸に上げられた魚のように痙攣しながら気絶………






「やりすぎじゃないですが!? あれ!」



血相を変えて戻ってきたカルデラが、神宿の隣りに座るファーストに対して抗議をしにやって来た。


というのも、先程からすでに数十人とばかりに外野やら、はたまたベンチやらに次々と生徒たちが運ばれていっているのだ。



ーーー抗議もしたくなる。


「何を言っておる。これも修行じゃよ」

「なっ、修行って!」

「第一、これぐらいで根を上げてどうするのじゃ? 小僧なんぞ、皆と同じ条件の中でも平気で動けておるじゃぞ?」



ファーストにそう言われてカルデラが隣を見てみると、確かに神宿だけは至って平然とした様子でその場に座っている。



「うっ……確かに。で、でも…それは、だって…」

「確かに、コヤツはワシの弟子の、そのまた弟子でもある。じゃが、事実。コヤツは魔法を身につけて、まだ一年しか経っておらんのじゃぞ?」

「……………」



以前、話の中で神宿がアーチェの弟子になった経緯を耳にした事があった。


その期間の短さにも驚いたが、それよりも先に賢者の弟子であることの方に意識が集中していたとも言える。



「………」



真面な指摘を言われて、確かにそうであると黙り込んでしまうカルデラ。



しかし、それでもやはり、賢者に教えてもらった差が大きいのでは……、と。



ーーーーーそう思ってしまうのだ。




顔を伏せてしまったカルデラに対し、神宿は声をかけようとする。

だが、それより先にファーストは小さく笑みを浮かべながら、再び口を開く。



「賢者賢者と皆がそう呼ぶが、事実中身はそうは変わらん」

「…え」

「今やっておる修行だってそうじゃ。側から見れば逸脱しておるかもしれん。じゃが、これは賢者のみならず魔法使いなら誰しも通る修行なのじゃよ」



そして、その大賢者らしい言葉にカルデラと神宿が驚く中、



「まぁ、ちょっとした高レベルの修行であるのは本当じゃが、それでも事実は変わらん。お主に必要なように、この小僧ですら必要とする修行なんじゃから」

「…そ、それって」



ファーストは二人の視線を確かめながら、唇を緩ませつつ、答える。



この無茶振り的な修行は、魔法使いとなるであろう子供たちの急激なレベルアップを目的としたものである。


だが、それとは同時に、





「つまりは、お主らに渡した魔法具。それを使いこなすための修行じゃという事じゃよ」





大賢者ファーストは、そうイタズラっぽい笑みを浮かべながら、そうして修行の真意を教えるのであった。













「わかりました! 私、頑張ります!!」



そう言って、カルデラは早々に自分のクラスへと戻って行った。



そして、そんな彼女を見つめながら、神宿はファーストに尋ねる。




「なぁ、俺に必要になってくるって、どういう」

「もちろん、お主が悩んでおる二つの特性を付与させようとしている件についてじゃよ」



ファーストは何でも見透かしているかのような視線を向けながら、




「何、一日や二日で結果が出るものでもない。じゃから、お主も精々授業を楽しめ」




そう笑って答えるのであった。



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