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ドッチボール?




現在。

校舎前のグラウンドには、一学年全員が列を取って集合している。

神宿もまた同じようにその決められた列に並んでいるのだが……、



「ぉ、重いっ!」

「ぜーはーぜーはー」

「おまっ、掴みかかってくるなよっ!?」

「た、助けてくれー!」




……いやはや、これはもう完全なまでに地獄絵図だった。


クラスの内、その大半が日常的に魔力を使って楽をしていたらしく、重いのを軽くしようと試みて失敗している様が、あちこちで発生していた。


またかろうじで魔力操作に長けた者は、ぎこちない動きで列についてこれていはいるのだが…。


「………」


目の前で何人も地面に突っ伏しいる光景を目の当たりにされ……流石の神宿も顔をひきつらずにはいられなかった。

と、そんな時。




「と、トオル」




後ろから突然と声を掛けられ振り返ると、そこには腕輪をつけたカルデラの姿があり、その顔色は若干青くなっているようにも見え、



「ん? カルデラか、どうした?」



そう尋ねた神宿。

対して、カルデラはキョロキョロ周囲を見渡した後、神宿を列から引っ張りつつ、その唇を動かした。





「ね、ねぇ……これって、もしかしてなんだけど……あの人の」

「ああ……何でも、お前らの修行を見ていたファーストが、学園の授業を変えないと、とか言って」





ーーーーーーその次の瞬間。


ガシッ! と神宿の胸ぐらを掴み上げ、カルデラは今度こそ顔を青くさせながら小声で叫んだ。



「(それっどういう事なんですかっ!? 昨日のを見てって、それじゃあ完璧に私たちのせいじゃないですかっ!?!?)」

「うっ、ぁ、いや………まぁ、うん」

「(せめて否定ぐらいしてくださいよーっ!! 私はまだしも、カフォンさんなんて、さっきから、もう決壊しかけなほどに涙目なんですよっ!?)」



ホラ! と言われて、カルデラが指をさした方向に視線を向けてみると、



「……………」


ーーーーーーーそこには全身をプルプルとさせながら、涙目満載のカフォンの姿があった。


その顔からして、もう完全に自分のせいだ、と思っているようであり、



「………まぁ、あっちは性格が性格だからな。気持ちはわからなくもないけど………それに比べて、お前って案外神経図太いんだな」

「っ! それっ本気で言ってるんですかっ!!!!」



ガァー!! と怒りに身を任せたカルデラが襲いかかってきそうなったーーーーその時。







「なんじゃ、意外と元気なようじゃな、小娘よ」







そんな彼女の肩に、ポンと手を置かれた。



「ひっ!?!?」



そして、神宿は見つめる中、カルデラの背後にテレポートで姿を現らわした少女ーーー大賢者ファーストは笑みを浮かべ、




「よし、それぐらい元気なら放課後の修行も倍に」




ーーーーーーーその直後。

カルデラは血相を変えて、脱兎のごとく、その場を走って逃げていくのであった。










そうこうしている間にクラス同士の対決順が決められていく。



「えー、それでは今から各クラス対抗で玉当てを始めたいと思います」



教師がそう言ったように、多少と名前は変わってはいるが、その配置のやり方から見て、それは至って平凡なドッチボールという競技だった。




ーーーーーしかし、ただ一つ、違う事を除いて…





「よし、それではこれを使って始めるように」


と言って教師が手渡したのは真っ黒なボール。

何故か恐る恐るとソレを生徒に手渡す様子が見受けられたが、



「よっしゃ!!」



別のクラスの男子生徒はそのボールを受け取り、競技は始まった……。



「はん! ようは魔力を使わないで投げりゃいいんだろ!!」



そして、男子生徒がそう叫びながら、全身に纏わせていた魔力を切り、そのままボールを相手選手へと投げようとーーした。


その次の瞬間。




「うっぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!」




直後。

ボールから発せられた電気によって、その男子生徒は一撃で感電ノックアウトしたのである。













その一部始終を見ていた神宿は、あえて隣に座るファーストに尋ねる。



「………何アレ」

「む? ああ、あれは簡単な仕掛けでな? あのボールに微量の魔力を流さず一定の時間が放置しておると、勝手に放電するよう魔法を掛けてあるのじゃよ。後、もう一つと仕掛けもしておるのじゃが、何、死なないで程度の魔法じゃから大丈夫じゃよ」



ケラケラ笑いながら、そう教えてくれる大賢者ファースト。

しかし、現状のグラウンドでは、




「うきゃあああああああっ!!?!」

「ぎゃああああああ!?!?」

「いじゃああああああえあああ!?!?」




ーーーこれは、もう完全に地獄絵図だった。

最初のくだりで楽をしようとした生徒から順に倒れていっているのだから…。






しかし、そこで神宿はふと呟いた。



「…でも、これあんまやりすぎると、生徒の方からボイコットみたいな抗議が出るんじゃないのか?」



この授業はあまりにも限度が超えすぎている。

いずれ生徒の方から逃げ出す者が現れる。



そう神宿は思ったのだが、




「ん? 何を言っとるのじゃ? じゃから王族貴族と名をつけたじゃろ?」

「………は?」


またしても出たその言葉に首を傾げる神宿。

対してファーストもまた驚いた様子で、首を傾げ、



「何じゃ、お主あの馬鹿弟子から聞いておらんのか? 」



そう言って彼女は、その言葉の意味を簡潔に答えてくれた。




「王族貴族という名は、言うならこの世界の国々を担う十貴族の事を指し示しておるのじゃよ」

「十貴族?」

「うむ、後、奴らの命令を無視した者は即刻死刑!! ……という怖い怖い噂を持った貴族でもあるのじゃがな」



ーーーそして、最後に不穏なことまで教えてくれた。





うぎゃああああ!!! とボールに当たって飛んでいく生徒の姿が見える……。



そんな次々と倒れていく生徒たちと、ファーストの言葉を聞いた神宿は頭を手で抱えながら、






ーーーーーーそれ、脅迫、だよな?





と、そう思うのであった。




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