新たな動きーキーナン王室ー
ーとある場所でー
「姫様が出奔されて早10年。月日の経つのは早いものですな。」
寂しそうな声が呟く。
「我らの悲願の為にも早いお帰りを願いたいものですが。我らの力不足こそが原因。情け無い限りです。」
悔しさの滲む声が答える。
「伝令!姫様が近くお戻りになられる予定です。」
「なんと!」「おー。」
いくつもの声が、喜びと驚きを声に乗せる。
ーキーナンの王広間ー
「伝令が参りました。」
「伝令!カルエラ村、村長よりの緊急救援依頼。
コアンの森でサーマル村やリエド村など多数が井戸の水が枯れ始める現象が発生。カルエラ村に近隣の住民が集まり、食糧不足が深刻。至急食糧支援求む。」
赤い豪華な椅子に座る王は、金髪の髪をなびかせてその端正な顔立ちを曇らせる。
「やはり、報告通りですな。精霊の加護の森で井戸の水が枯れるなどあり得ません。この異常事態には何かあると考えなくては。サラディーナだけの問題ではありません。」
宰相のブナンベルトが話す。
そこに更に伝令が来る。
「伝令!ゼッヘルからの伝令です。」
「ご報告します。
コアンの森で異常事態発生。サーマル村など多数の村で井戸の水が枯れ、川も干上がっている。
原因は、ララパンと判明。大木に寄生する魔獣の一種で根を張り近くの魔力を吸収。これらに寄生された森ではら木々が枯れやがて、川の水も枯れていく。この駆除には、マルマーサが必要。
原因究明は、異邦人『圭』によるもの。
尚、泉周辺にもララパン発生による被害。
精霊に危機迫る事態。
しかし、この事態に、異邦人『圭』の魔力による歌声で泉復活。精霊族の伝説の能力に擬似。
この歌声に、精霊も顕現す。
更に、『圭』より魔力を吸収のち、祝福を授け泉周辺の復活を成す。
また、カルエラ村の危機に際しても、この『圭』の提案により食糧提供される。これにより、危機脱出。近隣住民の感謝が集まる。
更に、ララパン駆除の為、マルマーサ捕獲作戦に乗り出す模様。
確認不足なれど、村人の中にスパイ混雑。
ただ今、確認中。」
静かに聞いていた王が立ち上がる。
「今こそ、動く時。宰相、頼んだぞ。」
覇気のある声が響く。
宰相の顔が渋る。
「はっ。」
カルエラ村では、フーの治療が始まった。
魔力を限界まで放出する事が、かなりの危険な状態だと皆の認識だが、精霊の祝福により思ったより軽度ですみそうだ。
話し合いが続いている中、圭はすでに眠り込んでいた。
「呆れたものよ。あの様に魔力を精霊に取られた挙句、何度も歌に魔力を乗せて放出するとは。いやはや、異邦人のバカらしい程の力、見せてもろうたわい。流石の圭でも、疲れたと見える。
しかし、マルマーサとは。。。また難題がきたの。」
ドルタンドの言葉に一同が頷く。
圭の眠る部屋の前でひとり、メルビスが扉に向かって、深く頭を下げた。