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行き着く先は生か死か  作者: yudarium
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第9話

 僕たちの存在は瞬く間に校内へと知れ渡った。学校が近付くに連れて増えてゆく視線。それも時が経つにつれて治まった。

 僕といる時は常に浮かべている彼女の笑顔がそうさせたのだろう。頬を薄く染め、目が潤んでいるようにさえ見える彼女の笑顔は老若男女の弱点であるかのように思える。


 現在僕は幸せの絶頂にいると言っても過言ではない。だが、どんな時にも何かはあるもの。僕にとってのそれは予感だった。シュネを失う気がしてならないのだ。予感と言ったが、明晰夢とも言える。


 

 古く廃れた西洋式の建築物が立ち並ぶ何処か見知らぬ街に取り残されている。常に視界の何処かにはシュネがいる。勿論、見えていて追わない筈はなく、走る。それも、何故か10代後半の姿でだ。


 曇天の合間より洩れる月光に照らされた路地は羅生門と似た不気味さを保っている。地面に詰められた石は苔類に覆われその表面は殆どが隠され、脇に生える植物は無風なのに揺れている。しかし、これらの何れも僕の心をその闇へと捕らえる事は出来なかった。


 僕は目の前にいるシュネを追う。ただそれだけの夢に何かを感じている。細部に到るまでくっきりと思い出せる程の明晰夢。その風景も相まって、決して良い未来を考えることはない。シュネにこの話をしたところ、彼女も似た夢を見るようだ。日にちは違うが。夢で彼女は僕の姿を視界に捉えている為、近付こうとはするものの、逆に離れてしまうそうだ。僕たちは繋がっているとも言えるこの事を考えずにはいられなかった。


「シュネ、夢の事は勿論心配だよ。でも考えても仕方が無いんだ。心配な時は僕が傍に居る、こんな姿じゃ頼りないけど安心してくれないかな?」

「直奈くんがそう言ってるのに安心しないわけがないよ! 頼りにしてますよ、私の大切な人!」


 今実際にお互い不安だろう。どちらかが一方的に安心させても駄目だと思う。お互いに安心させて、心に余裕を作らないと。

 この状況を打破するには二人の時間を増やすべきかな?


「学校始まってまだ一度も遊んでないから久し振りに二人で遊ばないかい?」

「何処に行くの?」

「う~ん、全然そこは考えてなかったよ」

「私ね、行きたい所あるんだけどそこでも良いかな?」

「どこ?」

「プール!」



 この前の会話があり、僕たちは市民プールに来ている。


「どう? 私の水着姿は?」


 正直に言わせて貰うと頭、いや、身体中に電気が走った。種類とかには詳しくないから細かく言うと、黒のビキニで、紐で縛るタイプだ。彼女の透き通るような白い肌と、凹凸のしっかりとしたラインがこれでもかと言うほどに強調されている。そこに彼女の恥じらった表情と後ろで手を組んでいる格好も足され、言い表せないものだった。


「かわいすぎるよ……」


 つい、こんな風に洩れてしまうのは仕方が無い。周りの男性なんて視線を奪われ、転んでいるやつですらいる。若干体の一部が傍にいる女性からの目覚ましで赤くなっているやつもいる。


「ほ、ほんとう? ありがとぅ」


 湯気が出るのではと思うほどに紅くなった彼女は最後の方はかすれそうになりながらもそう言った。


「ひゅうひゅうー、熱いねー」


 これは進也。本当はシュネと僕の2人っきりで一日を過ごす筈が、何故かダブルデートになってしまった。何故か。原因については現在も捜査中です。


「おい進也。お前さぁ、一応ダブルデートの形ではあるけどちゃんと玲奈とコミュニケーションとれよ?」

「うん、分かってるよ」


 僕とシュネがダブルデートという話に首を縦に振らなければならなかったのは、こいつらの現在の状況である。

 僕が玲奈に直接言った後は、多少緩和されたみたいだが、依然として関係がギスギスしているみたいなのだ。


「す、直奈! 私の水着姿はどう? 似合ってる?」

「似合ってるよ。けど、玲奈が最初に尋ねるべきは進也じゃないの?」


 彼女は急に口を閉じ、俯くと、小さく呟いた。


「進也、私はどう?」

「すごく似合っていると思うよ!」

「そう、ありがとう」


 結局静かになってしまった。こいつら付き合ってるんだよな……? 進也の玲奈を想う気持ちは少し重いかもしれないけど、別に初期にありがちなのではと思う。

 だが玲奈に明らかな問題がある。僕を諦め切れていないのが見え見えなのだ。


「僕たちはボールとかの用意するから、二人はここで待ってて。じゃあ行こうか、シュネ」

「うん」


 少し歩いて彼女は僕に申し訳なさそうな顔をして僕に尋ねてきた。


「直奈くん、私たちが危惧してた問題って玲奈さんの事なのかな?」

「現時点だったらその可能性が高いよね」

「見ず知らずの私が直奈くんと付き合った事が悪いのかな?」

シュネは弱々しい声でそう言ってきた。それは違うと言い切りたい所だが、実際少しありそうな為少し間が開いてしまった。


「正直それはあるかもしれない。だけど、僕はシュネが好きだ! この気持ちは嘘偽りなんかじゃない!」

「ありがとう……」

すると彼女は泣き出した。

「私、私ね、ずっと玲奈さんの事情を知ってから気懸かりだったの」


 やっぱりそうだったのか。薄々感じてはいたけど、僕が皆を苦しめてたのか。ダメダメなのは僕だったんだ。


「何をうじうじしてるの? あなたは私じゃなくてシュネちゃんを選んだ。だったら、その幸せをしっかりつかんでなさい! 私はもう諦めの、心配しなくて良いの、直奈」


「玲奈、ありがとう」

「シュネちゃんもだよ! 直奈が決めた事をあなたが気に病む必要は無い!」


「うん、うん!」

「じゃあ、楽しもうか! 準備してきたんでしょ?」

「あっ、やってきます」

投稿始めたばかりに比べ、学業が忙しくなるのでペースが落ちると思います!

本当にすみません

いつも読んでいただきありがとうございます!

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