第7話
今日は地元の夏祭り。屋台などといった魅力が少なく、病災を祓う事がメインである昔ながらの祭りだ。その為、中学生や高校生は同時期に行われる他地区の祭りへ行ってしまう。残っているのは、小学生以下か、社会人以上である。
せっかくシュネと来ているというのに、誰にも自慢が出来ない。
「直奈くん、この祭りって昔ながらのものなんだよね?」
「そうだよ! あ、やっぱり楽しくないかな?」
「絶対にそんなことない! でも、高校生みたいな人が全然いないのはそういうことだよね?」
「うん、現代の祭りというと屋台とか花火とかそういうものがメインとされてがちだけど、実際は納涼祭だったり、僕らの夏越の祓だったりが目的だったんだよ。お、始まるみたいだ! 行こうか!」
「うん!」
僕らは手をつないで向かった。以前、夏休みはあんまり会えないと言っていたが、実際は会いたくて結構会っていたのだ。それが功を奏して、手をつないぐということが可能になった。
無事、夏越の祓が終わった。彼女は初めての経験が珍しかったらしく、終始真面目にしていた。
この後は、盆踊りをやり、その場で宴会をやって11時位にはお開きになる。
盆踊りが始まった。彼女はやはり踊り方がよく分からないようだ。これはエスコート失敗かと思い、近付こうとすると、
「あら、べっぴんさんがいると思ったらシュネちゃんじゃないの! 紀子さん、こちらが直奈坊の彼女さんだよ!」
ラーメン屋の叔母さんである、恵里子さんがやって来た。そして紀子さんということは、踊りを教えてもらえる! 紀子さんは、この地区の踊りを伝える会の副会長だった筈だ。
「あらあら、可愛らしい彼女さんだこと。 シュネちゃんていいのかな? 私は紀子、踊りが分からなそうだけど、教えようか?」
「はい! ぜひ、お願いします!」
彼女は紀子さんと一緒に教わりながら踊っていた。紹介していなかったが、今日の彼女は浴衣である。勿論、恐ろしく映えている。周りの人達も気になっているようで、ちらちら見ている。さらに、そこに多少のぎこちなさが入った踊りだ、可愛すぎる。主観抜きでも美少女なのは間違いない。
盆踊りも終わり、最後の宴会が始まった。僕たちは、恵里子さんのラーメンを食べて、小川の方へ歩いていた。
「まだここに来てから短いけど、凄く楽しいよ! イギリスで長いと感じた時間もあっと言う間!」
「僕はシュネに笑顔が増えてくれて本当に嬉しいよ、その笑顔は僕の心を照らしてくれるから。これからもそばにいてくれますか?」
「ぜひ、私をそばに置いていてください」
そう言って彼女は目を瞑り、少し足を曲げた。ここで自分から行けなければ男ではないな。そして僕も目を瞑り顔を近付けて行った。
お互い顔が真っ赤になっている。湯気でも出てんじゃないかと思う程に、体中が熱い。しちゃったんだよな、き、きす。
「か、帰ろうか」
「そ、そうですね。帰りましょう」
この日、僕は、シュネは、自分の手にある幸せを感じながら、床につくのであった。
夏休み明け、今日から学校だ。そして、実力テスト。テスト勉強は、彼女が出来たからおろそかになるのではと危惧していたが、逆に彼女の存在によりやる気になっていた。
「直奈おはよう!」
「お、久しぶり玲奈!」
「夏休み明け直ぐで申し訳ないが、今回こそ私が勝利をいただく!」
「それよりさ、進也とはデートしたの?」
「えっ……」
急に彼女は言葉が詰まったようだ。
「おいおい、まさか……」
「一回だけしたよ。でも、なんか進也、途中でへこんでさ」
「僕の事は諦めたんじゃないのか?」
「へっ? 漏れてたの?」
「漏れてたもなにも、それじゃあ折角告白してくれて進也に失礼だろ! 本気になれないならさ」
「私はずっとあなたが好きだったの、でも、上手くその気持ちを表せなくて」
「僕には今彼女がいる。これは本当だ。だから、悪い。その気持ちには応えられない」
「え、そうだったの…… そうだったんだ、遅かったんだね」
「分かった、これからは進也の事を見るよ。ちゃんと、ね」
「ごめん、だけどそうしてあげて」
やっぱり僕のこと、好きだったのか。でも、その気持ちには応えられないし、進也にも失礼だからこれで良いんだよね。
あれ? なんか隣の教室が妙に騒がしい?
「うぉっ! 超絶美少女だ!」
「まじだっ!」
「この辺境にようこそ!」
なんだろう。これ、シュネの事を言ってる気がする。そして、シュネが恥ずかしくしてるな。きっと。でもテスト直ぐ始まっちゃうから、後で直ぐに行こう。
テスト終了後、隣の教室に向かうと案の定!美少女と騒がれてたのはシュネだった。僕が扉に現れた瞬間待ってかのように彼女は飛び込んで来た。いや、受け止められませんけど。そして、僕たちは廊下に転がった。
起き上がると、目の前は人集りだった。
「あれ? シュネちゃん? 何で、そいつにくっついてるの?」
顔に見覚えのない奴が話し掛けて来た。僕がそれに答えようとすると、口元に手を当てられた。
「直奈くんは、私の彼氏なんですぅ!」
「「えええぇっ!!」」
三組の男子の全員が叫んだ。そこには、進也の姿もあった。驚くから仕方が無いか。因みに叫んだのは三組男子だけでなく、その場にいた殆ど全員がだった。
すみません。これから、少し事情により話の内容を早く進めます。本当にすみません。
いつも読んでいただきありがとうございます!