第6話
シュネさんのお胸が主張が激しくなくなり、慎ましくなりました。すみません。
「言いたいことはね……」
「うん、」
言い淀んでしまう。世界でも珍しいのではないだろうか。実際に会ったのは僅か2日。それでも、二人は確かに、互いを想い合っている。一度口が止まったのは、前例を聞いた事がないからではない。僕自身、これが初恋なのだ。僕も殻に閉じ籠もり気味だった頃があった。青春の初期をそうして過ごした僕が恋愛の味を知らずに今まで生きてきたのも仕方が無いのではなかろうか。
僕は誰かによって殻から連れ出してもらった訳ではない。寿命が決まっているかもしれないという残酷な現実を自分で諦め、妥協し、受け入れて今に至る。故に他者を大して必要として来なかった。そんな中、彼女はに家族以外で初めてそばにいて欲しいと感じた(実際に多少はそういった人物がいた可能性はあるが)。
「シュネ、僕の寿命は本当に8年なのかもしれない。それに君と一緒にいると兄弟にすら見えてしまうかもしれない。それでも、そんな僕とでも付き合ってくれますか?」
「もちろん!」
返事をし、僕の手を握ってきた彼女の笑顔は、今までで一番のものだった。その笑顔を絶やさせない決心が固まったよ。
今日は月曜日、学校に来ている。もちろん高校生に課せられた課外の為だ。昨日は彼女とおしゃべりでもしたかったところだが、県トップクラスの進学校の課外は許してくれなかった。課外の癖に、予習の量が膨大過ぎる。コツコツ進めてきたが、完璧な予習を心掛けている僕は多くの時間を必要とする。
まぁ、僕は執着心の強過ぎる彼氏という輩ではないから少しトークをして我慢した。ネット情報では、初期は熱々で、会いたくて仕方が無いらしい。実際その通りだった。
課外は夏休み終了二週間程前まで続く。その間に夏祭りが待っている。彼女と課外中に会うのはその日は勿論のこと、他に三日間だけとなってしまった。彼女も夏休み明けから高校に通うらしく、勉強が忙しいらしい。因みに、どこかは教えてくれなかった。
「すなっちょ、おはよう!」
「おはよう、玲奈」
今日はすなっちょで行くのか。登場回数が一度の為判明していない方が多いだろうが、彼女が僕を呼ぶ時の名は日替わりなのだ。種類が少ない為、被ることも多い。
「すなっちょ、今日なんか嬉しそうだね」
「そうかな?」
彼女と付き合っていることは、秘密にしとこうかなぁ。いずればれるし、その時までは。ここは、違う言葉を言っておこう。
「あのね、図書館に僕が読みたかった本が新しく入荷されたんだよ!」
「へぇ~、それは良かったね!」
「あれ? 玲奈こそ嬉しそうだね?」
「聞いて驚け! 私、玲奈は、彼氏が出来ました!」
「やったじゃん! 誰? 誰?」
「三組の小山進也!」
「あいつか~、お幸せにしてください!」
「すなっちょとが本望だったりするんだけどね」
「え、本当に?」
「い、いや、何でもないよ! 取り敢えず、今の進也には秘密にしといて!」
「了解」
鈍感系主人公を演じるつもりは一切無いから、そぶりがあったら気付いてた筈なのに。もしかして、小学生の時のポテチだったりするか? バレンタインに渡されたから、笑って受け取った記憶があるんだけど。流石にそれはねぇ。
「あら、進也、おはよう。 どうしたんだい? 幸せそうな顔をして?」
「出てるの!?」
「出てないよ。さっき、玲奈から進也との事聞いてさ」
「原さん……何で言っちゃったんだ……」
「原さんって、付き合ってんのに」
「俺が告白して付き合えたのは良いんだけど、彼女はなんか悲しみの中はいて、そこに偶然だった気がしてさ。なんか、踏み込めて無いんだよ。なんか聞いてない?」
「本人に聞きなさいよ、リア充さんよ」
「やっぱり、直接だよね?」
「だろうね。じゃあね」
「うん」
僕に原因が大有りみたいだね。でも、そういうのは当事者で解決すべきものだし。無干渉、無関心の態度を貫こう。
僕はシュネとの関係をもっと深めるという望みがあるのだから。あ、絶対に重いとは思われないようにしなければ。
放課後
僕はたまに生徒会の会計などの仕事をやっている。役職は無い筈だが、先生と前会長からの熱い推薦でせめてボランティアだけでもとなってしまった。
それ以降、生徒会の業務が滞っている時には手伝いに行っている。最近では、真面目に役員にならないかという打診も増えてしまった。外見もあれだから、頼られるのは正直凄く嬉しい。でも、それ以上に大事な事があるしね。
「直奈くん、こっちの書類もお願い!」
「了解です」
現在は会計の打ち込みをやっている。会計は二人いるみたいなのだが、一人は休みでもう一人は一年。そういう事で手に余っているようだ。そこは、二年となり地味に経歴も積み始めた僕が教えようではないか。
「そこはこっちだよ」
「あ、間違った。そうですね、こっちでした! って、あれ? 直奈先輩!」
「あぁ、千夏ちゃん、今日はずっと居たんだけどね。随分と集中してたみたいだね」
「先輩に教わったやり方忘れて旧式でやってて、困ってたんです」
「そうか。じゃあ、与えられた分も終えたし、後は千夏ちゃんに教えて帰ろうかな」
そうして僕が彼女のそばに立ち、細かい指摘をしていった。
「おっ! だいぶスピードが上がってきたんじゃない?」
「はい! 先輩のお陰ですよ!」
「じゃあ、そろそろ失礼しようかな。はい、これ。一応簡易的にだけど、やり方書いといたから。これでも分からなかったら、聞きに来てね」
「私に教えながらだなんて、凄いです!」
目をきらきらされながら褒められた。これで、頼れる先輩のイメージは外見さえ無ければ完璧だな。
「では、僕は失礼されてもらいますね」
彼女に教えた事もあって、今日は想定してた電車の一本遅れかな。じゃあ、ゆっくり歩いてこう。
いつも読んでいただきありがとうこざいます!