第5話
《シュネ視点》
この町に来るまで私は自分の人生でドン底と言える時間を過ごしてきた。家格の所為だ。そう考えたのは数え切れない。母方の祖父が倒れてこっちに引っ越すとなった時は、感謝すらしてしまっていた。
引っ越す前から喋れなくて苛められる恐怖心もあり、母に日本語を習っていた為、自分で行動していても良いと言われた。だから、図書館に行ってみた。この時私はまさか恋に落ちるなんて思いも寄らなかった。
図書館で本を読みながら歩いていると誰かにぶつかってしまった。
「ふぁっ」
つい驚いて変な声が出てしまった。あ! 倒してしまっている!
「だ、大丈夫ですか?」
「え、あ、かわいい」
この瞬間、恋に落ちた。この傷が顔に出来てからは家族でさえも私を可愛いなんて言わなかった。でも、この子は言ってくれた。外見は小学生位に見えるけど、待てば良いんだもん。
確認をした後、私は言った。
「では、私と付き合ってください!」
結果は保留だった。会って数分で言われてフラれないだけ良かったか。ここで私は少しおかしい事に気付いていた。
この子、外見と言動が合っていない。どう考えても。この外見だったらもっと幼い筈なのに。
この疑問は彼と連絡を取ることで、理由が判明した。彼も過酷な人生を過ごしてきたんだな。その後も連絡していると、今週末にデートをし、そこで告白の返事をもらえることになった。
デートの前半。自分の生まれ育った町について語る彼の姿は、輝いていた。体を使って表現していた。時代に沿ったものではない商店街や建物、町内やその周辺の自然。どれも彼の言葉で鮮やかに彩られていた。その後もデートを続ける事で分かったことがある。
やっぱり彼は優しい。想像通り、いやそれ以上だった。細かい気配りは勿論のこと、私の考えまで察して動いているようにさえ感じることもあった。選んだ相手、間違ってなかった!
少しずつ、それでも増えているpv。
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