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行き着く先は生か死か  作者: yudarium
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第13話

少し間が空いてしまいました


 クリスマス。今日は世の中が浮き足立つ日である。久し振りの一日デートということもあって、シュネはご機嫌のようだ。

 しかし、僕には悪い予感がしてならない。悪夢を見るような前兆があった訳ではない。


「直奈くん! 元気ですか~?」

「あ、ごめんね。ぼーとしてた」

「もう! 折角の一日デートなんだから楽しもうよ!」

「勿論だよ!」


 デート中に難しい顔をするのは御法度。考えすぎてはいけないね。前言撤回ととれる行動も。


 今日は地元から離れた街に来ている。地元はクリスマス感が皆無と言える(商店街のセール位)為、流石に遠出をしている。ちなみに、デートする場所は、中にイルミネーションのある大型ショッピングモール。なんと一日買い物に付き合うという事になっている。特に今まで一緒に買い物をしたことが無かったから分からないが、女子の買い物にスタミナをどれだけ消費するのだろう。


「直奈くん! 先ずはお店に行こう!」


 そう言ってシュネが指差したのは、赤ちゃん関係の店!?


「ちょ、ちょっとシュネ? これはどういう……?」

「将来的には子どもも欲しいでしょ?」

「う、うん。確かに欲しいけど……」

「なら今から見ておこう!」


 このまま行かれたら体力の限界は超えそうだ。次々と店を変えるペースは自分独りで買い物に行く時とは比べものにならない。でも、シュネが笑顔を浮かべっぱなしというのは嬉しい。


「どうかしたの?」

「いや、シュネが楽しそうだったからさ」

「すごく楽しいよ! 直奈くんが居るから」


 今は通路を歩いている為か、余計に周りからの視線がある。でも、ここでは見馴れた風景だからか頬笑ましいと言っているかのようなものばかりだ。勿論、敵意を感じさせる視線もあるけどね。



お昼時。



「すごく混んでるねー」

「仕方が無いよね。早めの昼食にしとけば良かったかな?」

「全然大丈夫だよ。並んでいる間は直奈くんと話が出来るし」


 頬を赤らめながら言われるとやはり照れてしまう。こんなことと言っては何だが、彼女と出会って多少は経験したつもりだったが全然馴れない。シュネが可愛い過ぎる所為でというのもあるだろうけど。



「やっと買えたね、ハンバーガー!」

「うん! これずっと食べてみたかったんだ~」

「料理の雑誌?にも載ってるもんね! ちょうど席も空いたみたいだし座ろう」


 楽しみにしていたハンバーガー。僕らは周りの若者ようにすぐ写真を撮るようなことはしない。それではいざ。


 う、うまい! 肉が、肉が凄い! 肉汁まで出ているだと。野菜もしなっていなくてシャキッとしている。ボリュームもあって、本当においしい。


「どう?」

「直奈くん…… これ美味しすぎるよ!」

「シュネさんよ、付いてますよ!」

「あっ!」


 お互いに見つめ合い、少し停止。


「恋愛漫画とかでよく見るような行動って大体が恥ずかしいし照れるよね……」

「そ、そうだね……」



夜。




 目的のイルミネーションも少し前に点いている。時間も19時を回りそろそろ帰る時間になってきた。イルミネーションの周辺には老若問わず恋人同士という人たちが多く集まっている。かくいう僕たちもその1つだが。


「もう夜になっちゃったね」

「そうだね」


 今日のデートは疲れなかったかと言うと疲れたというのが正直なところだ。でも、そんなのは微塵も影響を及ばさなかった。だから時間を忘れるほど楽しかったのだ。


「今日は本当にありがとうございました」

「こちらこそ、貴重な経験をさせていただいて!」

「も~、ばかにしたでしょう?」

「……してないよ」

「その間は駄目でしょ」

「まぁさ、感謝してるのは本当だよ? 買い物だって僕の大きくなった時の為の服まで選んでくれたんだし」

「大きくなるといいなぁ」

「やっぱり小さいのは嫌?」


 これはずっと不安に思っていた事だ。彼女は大丈夫だよと言ってはくれていたが心配にならない筈が無い。僕以外にも、僕よりもモテる人たちも彼女の傷関係なしにアピールしているのだから。


「いやなわけないよ! だから今もこうして一緒に居るんだから」

「ありがとう」


 僕がそう言うと彼女は目を瞑った。

 これはやっぱりあれだよね。身長差があるから、彼女を僕の方に少し倒す形で顔を近付けていく。

 完全に僕がリードしてのキスは初めてだから自分の鼓動が強く感じる。彼女に触れている指からは脈すらも感じられる。耳には聞こえる筈のない心臓の音がはっきりと感じられる。

 少しずつ近付いていった僕たちの影は重なった。彼女の思いを確かめられ、最初に感じた不安が薄れ、霧散するのを感じながら唇を重ね続けた。彼女が僕に手を回し、それに従って僕も彼女に手を回す。そして一度離し、もう一度しようとすると


「うっ、うあっ!」

「ど、どうしたの!?」


 目の前でシュネが目を見開いてこっちを見ているのが分かる。それと同時に身体中の感覚が消えていく。しかし、何故か身体中が熱くなっていると分かる。


 視界が、理不尽と言える程に辛く耐え難い冬を乗り越えた先に訪れる春の包んでくれるような暖かな温もりを持った光でいっぱいになる。


 朦朧と成り行く意識の中、今回で2度目だな、大丈夫かなとだけ思ったまま意識は途絶えた。

次話は早くやれたらと……

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