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思考
地下鉄に乗って、僕は数えている。
この車両の乗客は僕だけ
一人
降りずに見送った駅の数
七
自分の背後の座席にめり込んだ弾丸
九
そして僕の胸を穿つ銃痕
六
さっきから口内に絶え間なく液体が満ちてきて、吐き出すのに忙しい。
弾倉が空になるまでトリガーを引いても、まだ標的を絶命させられないなんて。これだから、素人はイヤなんだ。
あの女性はこれから、どうやって生きていくのだろう。
頭蓋に響く、自分の拍動を数える。さっき数えた時より緩やかになっていた。
僕に残されたこの感覚を分類するならば。どちらか言うと、絶望よりはほんの少し希望に近いのかも知れない。
たしか、この路線はもうすぐ地上に出るはずだ。
地下から地上へ。陰から陽へ。死から生へ。
残りの停車駅数
三つ
この目蓋が落ちるまでに、外の景色を見られるだろうか……
それが僕の最後の思考だった。
(了)