表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

標的

 地下鉄に乗って、僕は仕事をする。


 漢方薬局の爺さんから受け取った携帯電話に、細かな指示がメールで届く。


 日時、路線、駅名、車両番号、標的の特徴、処理後の逃走経路……



 これまでもずっとそうだった。


 数ヶ月に一度、爺さんから連絡が入ると、僕は住んでいる部屋を引き払ってホテルに宿泊。指定された日まで潜伏する。


 無事に処理したら、またしばらく別のホテルに潜伏。そのうちに新しい部屋が用意されて、そこで僕は静かな暮らしを再開する。


 ここ十年程、ずっとこんな感じだ。


 特に感慨も疑問もない。

 そんなもの、とっくの昔に捨て去った。



 指定された日まで、まだ数日の余裕があった。


 メールに書かれた指示は幾度も確認して暗記していたが、それでも執拗に再確認してしまう。


 今回の標的は新聞記者らしい。添付された数枚の写真は、贅肉にまみれて身体を肥大させた中年男性を捉えていた。


 プロフィールによると護身術はもちろんのこと、スポーツをやっている様子もない。


 比較的容易に処理可能だと推測される。



 だが、仕事をする時の僕は、徹底的に臆病だ。


 ホテルに備え付けのパイプベッドを壁に立て掛け、懸垂を繰り返す。飽くことなき反復動作だけが、身体から無駄と恐怖を削ぎ落としてくれる。



 もはや信仰とも言える思いに汗を滴らせながら、僕は胸中の昂ぶりを鋭くさせてその時を待つ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ