――呼ばれた先は
――意識が戻ってきた。
最初に目に飛び込んできたのは赤色。
いかにも高級そうな赤い絨毯。
そこに紫色の紋様が浮かんでいる。
見た感じ魔法陣っぽいな。事実そうなんだろう。
見上げるとそこには人がいた。かなりの大人数だ。
メイド服とか着て並んでる人達は例外としてもかなり個性的な見た目だ。
真っ先に俺の頭に浮かんできたのは魔族って単語だった。
ただボーーっとその人達を眺めていたら何か話し出した。
――知らない言葉で。
しまったと思ったが遅かったようだ。
その人達の中心にいる少女が話しかけてくる。
とりあえず日本語で話しかけてみたがダメみたいだった。
すると突然、少女の前に足元のと同じような紋様が浮かんで消えた。
「・・・これで伝わるかしら?」
「あ、ああ。」
今度は言葉が通じる。
さっきのはやはり魔法だったか。
翻訳もできるんだな。これは覚えておきたい。
「とりあえず、ようこそ私の城へ。」
「あんたの城?」
「そう。私がこの城の主。
そしてあなたは今から私の従僕よ。」
従僕。つまりこの少女が俺を呼んだのか。
青みがかったすこし長い銀髪に紅色の瞳。
外見年齢はちょうど大人と子供の中間ぐらい。
一般的にはまさに子供って印象だ。
そんな少女がここの頂点。
魔族(決め付けだけど)って外見は基本関係ないのだろうか。
「エストリー、後はお願い。」
「承りました。」
「じゃあみんな、今日は解散。」
少女が軽く手を叩くと個性的な人達はぞろぞろと雑談しながら部屋を出ていく。
少女もいつの間にかどこかに消えていた。
「あなた名前は?」
エストリーと呼ばれたメイドさんに話しかけられた。
黒髪で紅の目。というかさっきの人達も紅目率高かったな。
「えっと、黒泉誠太だ。」
「セータ・クロイズミね。
苗字は必要ないからこれからはセータと名乗りなさい。
とりあえず私についてきなさい。寝床に案内するわ。」
「なぁ、もっと説明とか――」
「後で好きなだけやってあげるから早く来なさい。」
「ち、ちょっと待ってくれよ!」
急いで立ち上がり駆け足でメイドさんの後を付いていく。
◆◆◆―――――
「今日からここで寝泊まりしなさい。」
案内された部屋を眺める。
・・・意外と普通だな。
抱いた印象としてはRPGの宿屋の部屋だ。
もしかしたら奴隷のように扱われるかもと危惧していたが杞憂に終わったようだ。
「今日は城の施設を案内して終わりにするから。
明日から仕事を仕込んでいくわよ。」
「なぁ、好きなだけ説明してくれるんだろ?」
「・・・
あなた本当になにもわかってないのね。
前はどこに住んでたの?」
「以前は人間だったぞ。」
「・・・は?」
「?
なにかおかしいのか?」
「・・・・・・」
エストリーさんは一瞬表情が崩れたがすぐに何か思案しだした。
「・・・あなた異世界出身なの?」
・・・!!
そうだった。
普通は前世の記憶とかないんだったか。
どう言い訳しよう?
「道理で変な言葉をしゃべると・・・
お嬢様もわざわざ転生体を呼ぶなんて一体・・・」
そう言うとすぐまた考え事を始めてしまった。
「えーと。」
「とりあえず、この事は安易に話さないほうがいいわ。
話しても実害はないと思うけど、そういう事に詳しくない子達には説明も理解させるのもすごく面倒だと思うわ。」
「分かった、気を付ける。それで――」
「ええ、そういう事なら仕方ないしちゃんと一から教えてあげるわ。」
ごくり・・・
ここがどういう場所か、いよいよ知ることができそうだった。