気が付けば――
気が付いたら俺はその場所にいた。
周りの景色も自分の状態もはっきりと分からない。
どこかへと続く列の中に自分がいた。
自分はなにかの順番待ちをしている?
思考がぼやけてうまく考えることができない。
その列に逆らわない(逆らえない?)ように進んでいく。
「チェック・・・よし、次。」
この場所で初めて音が聞こえた。
誰かの声のようだ。
列が進んでいくと次第に声が大きくなっていく。
どうやら列はこの声の持ち主に向かっているようだ。
次第に声の持ち主の姿が見えてきた。
その人は列の並んでいる人(?)達とは違いはっきりとした姿がある。
明らかに自分とは違う存在だ。
「チェック・・・よし、次。チェック・・・よし――」
列に並んでいる人(?)達を調べているのだろうか?
そうこうしている内に自分の番がやってきた。
「チェック・・・よし、次。」
どうやら問題はなかったようだ。
奥の方にまた列があった。
本能に従うようにその列の最後尾に向かう。
――その時だった。
「・・・・・・ッ!?」
急に自分が光り出した!
明るい紫色の光が自分を包みこんできた。
同時に思考がはっきりとしてきた。
頭の中の霧が晴れるように、考え方を思い出せたんだ。
「あー、誰かちょっと来て!」
後の方でさっきの人が誰かを呼んでいた。
その人はやってきた人に何事か伝えると俺に近づいてきて、
「君、こっちに来て。大丈夫、心配するようなことじゃないから。」
俺は身体(?)を光らせたまま、その人について行った。
◆◆◆―――――
俺は謎の人に連れられて部屋(?)にやってきた。
一体いつ部屋に入ったのか分からない。本当にどうなっているんだろうか?
「とりあえず座って。」
謎の人がそう言ったら目の前に椅子が現れた。
一瞬驚いたが言われるがままに座る。
「じゃあ、あなたが今光っている理由を説明するわね。」
さっそくと言わんばかりに女の人(女性だよな?)が説明を始める。
「簡潔に言えばあなたは召喚魔法に選ばれたの。」
召喚・・・魔法? 魔法って実在したのか!
「あなたが暮らしていた世界には魔法は存在しないわ。
でもそういう世界の人も魔法のある世界から呼び出されたりするの。
そして私達は呼び出された人にきちんと説明する決まりがある。」
俺達の世界に魔法はないのか。ちょっと残念。
「あなたのように魂だけが呼ばれる場合は呼び出された先に魂が宿るための肉体が作られるわ。
そこにもきちんと決まりがあって少なくともネズミとか植物とかになったりはしないから安心してね。」
他にもいろいろと俺を安心させるための情報を話してくれた。
要するに少なくとも人間以下の性能の肉体にはならないってことだな。
「飲み込みが早くて助かるわ。
最後に、あなたは転生ってかたちで向こうに召喚されるわ。
普通の転生と違うのは今のあなたの記憶や人格がそのまま宿るの。
だからもしかしたら不思議がられるかもしれないから気を付けてね。」
普通は前世(って言っていいのかな)の記憶とかはないのね。気を付けとこう。
そうこう言ってる内に光が強くなってきた。
「・・・そろそろね。
以上で説明を終了します。頑張ってね。」
光にだんだん吸い込まれていく。
その最後のほうで、
「――ありがとう。」
女の人にお礼を言って俺の意識は一度途切れた。
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