王 2 達人の傍観
ちょっと王のほうが進め辛そうなので、前から出すことを考えていた新キャラを出します。基本的には彼視点か第三者視点で王は進めていきたいと思います。幕間とかで他の視点も出るかもですが。因みに王、真、それにあと2,3個ぐらいの視点になりそうです。
ブクマ、評価ありがとうございます。5件になっていて少し心の中でひょいひょい(なんじゃそりゃ)しました。これからも精進していきます。
私は一 達人。にのまえとか大層な呼び方ではない。単に一だ。勉強は恣意的に20位周辺を彷徨っていて、部活は剣道部に入っているが、手加減をしている。趣味は強いて言えば料理とか、登山などだろうか。普通の人生に憧れたりしている、普通ではない高校生だ。
なんてこともない普通の学校……とはいってもそこそこに頭がよく、普通にいい学校だと思うが……に通っていたはずだが、突然訳も分からないまま異世界に召喚されてしまった。こんなの、今までの110年間で一度も体験したことはおろか、空想の世界でしか聞いたこともない。
……大事なことを言うのを忘れていた。でも、勘のあまりよくない人でもさっきの言葉の羅列で薄々察することができただろう。
私は、所謂転生者なのだ。
◇ ◇ ◇
少し前世の話をしよう。
前世は、「裏」で仕事をしていて、武道を極めて、剣一本(か、それもなしか)で「仕事」を遂行して、並ぶものなしとその世界では言われた。引退後もその手の輩が私を暗殺しに来たが、返り討ちにして逆に稽古をつけてやった。
そんな裏稼業に手を染めていた私だが、何かの間違いか、至極健康的に老衰で死ぬことになった。93歳の大往生だ。
遠のく意識の中、私はふと考えた。「この人生に満足はしているが、もしも私が『裏』なんかに手を染めずに普通の人生を歩んでいたら、それはどんなに素晴らしいことだったのだろう」と。簡単な理屈だ。私は色々あって仕方なくそのような仕事をしていたのだが、そんな人間がいなくなり、「裏」がなくなった世界。それは私のように運命に翻弄される愚者がいない素晴らしい世界……そんな風に思ったのだ。まあ、もしも裏がなかったら、という話だ。
その時、頭の中で何かがささやいた。それは、「わかった」「心得た」「承知した」…そんなニュアンスの言葉だったように思う。いや、そもそも言葉ではなかったのかもしれない。しかし、なぜか意味が理解できた。
まあ、死ぬ今となってはどうでもいいことだとそのことについて考えるのをやめ、私は永遠の眠りについた。
目を開けると、見知らぬ女性の腕の中。自分が発した言葉は「あぅ」だったのは驚いた。これは夢なんじゃないかと、何度も何度も思った。
しかし、時間がたつにつれ、置かれた状況を受け止めることができた。
即ち、自分は転生して二回目の人生を歩んでいることを。
しかし、現代日本にも見えないだけで裏はあり、「裏が無かったら」と考えていた私にとっては極上の皮肉だったのだが。
兎にも角にも、私は取り敢えずは転生した幸運に感謝して、今回の人生は汚れ仕事はせずに「普通」に生きることを決めたのだった。齢一歳の夏であった。
◇ ◇ ◇
話は今に戻る。今、私と私の高校の同級生達は、王城か何かの広間?にいる。下には円が書かれていて、その中には文字やら幾何学模様やらがごちゃごちゃと書かれている。そして目の前には正に御伽噺に出てくるような可憐で美しい女性がこれまた御伽噺からそのまま出て来たような騎士に囲まれ(護衛だろう)自らをアンネ王女と名乗っている。
彼女の話を簡潔に述べると、魔王軍がこの国に攻めてくるので、この国を勇者の力で救ってくれという感じだ。
……魔王の強さにもよるが、それは厳しいだろうな。何故なら、このクラスで唯一私より強いものの気配が確認できない……つまり行方不明なのだ。あいつは異常だった。私だって伊達に百十年生きているわけじゃない。この体になってからは日常に支障をきたさない殆どの時間を稽古に充てていた。
え?それのどこが普通の人生だって?……と、言われても、もはや稽古をすることと生きることは私にとって同義になってしまっていたのだ。これくらい仕方ない。
しかし、問題はそこではない。毎日の様に稽古をしていた私が現状絶対に負ける相手がこのクラスにはいた、ということだ。
だが、そんな頼れる者がいないのだ。余りにも致命的過ぎるだろう。
兎も角、そんな話が有った後、突然水野……このクラスは容姿の平均がとても高いが、そのなかでもとびぬけて美人な女子生徒である……が、大きな声で
「マコト君がいない!」
と叫んだ。気配で五人位いないのはわかっていたが、あいつ以外の気配を見分けられるほど私は傑物ではなかった。しかし、あの真か。
真は、男性として考えたら、あまりよくない容姿をしていた。中性的…むしろ女性よりの容姿をしていたからだ。女性としてなら五大美女とか言っているのにも劣らず美人だっただろうに……。割合にしてみると男四対女六か。どうも本人はそこまでだとは思っていないようだったが。
……女性よりの顔、というだけならまだ救いがあった。美人とイケメンの顔は似通っているからだ。しかし、真は美人というよりはかわいい系の容姿だった。おそらくあの顔では苦労したに違いない。入学式の時にたまたま目にしたとき私も一瞬男装の麗人かと考えてしまった。
……流石に数秒も男と女を見分けられないほど私は馬鹿ではないが。
そんな容姿の真だが、性格もかなりよく、聞き上手であり、目の前に困った人がいたら必ず助けるような人柄であるし、誰にでも分け隔てなく接する。少し受け身がちなところもあるが。
しかし、この様子では水野が真のことを好きだったのは確定だろうなあ、と他人事のように考えていると、水野の声を聞いたクラスメイトが他の四人がいないことにも気づいた様で、次々に声が上がる。
「お、おい、いっつもマコトに抱き着いてる西田もいなくね?」
「シズもいないわ!!」
シズ、というのは北原 静香のことだろう。これで4人は判った。
「っていうか、宇賀神も見当たらねーじゃん!!!」
「まじか!?どーすんだよ!!あいつ頼りになるのに…」
ここで出たか。このクラスのクラス委員長、宇賀神 征史。彼こそが、この年齢にしては少なくとも武術をかじっている人間なら十人中十二人が可笑しい強さというような、狂った強さの人間だ。現時点の彼なら、最盛期の私でも敵わないだろう。(現時点でもその強さなのだ。)そんな彼だが、容姿も整っていて、三大イケメンとか女子はから呼ばれていた。そのためか、女子からもあちらこちらで落胆の声が上がる。
「南波ちゃんもいなくね?」
最後の一人も分かった。南波 亘。このクラスでは珍しくパッとしない存在だ。かといって強者の片鱗とか、雰囲気は微塵も感じられないので、ごくごく普通の男子高校生、という感じだ。私にとっては師範代のような存在だな。
「うわっまじか……五人もいねーのか……」
まあ、消えた中でちょっと異常だったのは征史と真位だろうか。
しかし、クラスの大半は混乱していて、クラスメイトがいなくなるような不測の事態にさえ気付いていなかったようだ……だが。
一人不自然なやつがいる。クラス副委員長の、刻宮 未来だ。まるで、最初からいないことを分かっていたような、そんな雰囲気を一瞬出したかと思ったら、すぐに引っ込めた。普通なら、途中からダダ漏れにしているはずだ。
……違和感しかない。本来彼女はこのクラスの中でも五本の指に入るほどの実力者だと私は睨んでいた(本人は隠していたが)。しかし、今では身体能力こそ変わっていないが、気迫、或いはオーラというべきものが、ここに来る前とは全く違う。その為はっきりと彼女だと認識できた。まあそれを言っても今の私だと、三分で倒せるが。私と比べるのは酷だろう。
意識せずに視界に入れることで相手の様子を窺う隠密術を使いながら刻宮を観察していると、一人のよく通る声が聞こえてきた。
「皆、落ち着こう。まずは今の現状をしっかりと確認するんだ。」
正路 光輝か。人一倍正義感が強く、人徳も厚い。普通のクラスなら、クラス委員とかやってるクラスのリーダー的な存在だろう。まあ、このクラスには見ていて笑いが出る強さでいて、何をやっても完璧な存在の征史と、女子の中では最も頭がよく、そしておそらく対人戦も一番強い刻宮がいるせいで、副委員長にもなれなかったのだが。それでも、今現状でこのクラスをまとめるのなら、彼が最適だろう。
実際に、少し前までうるさかったクラスの皆は、その一言を機に静かになっていった。容姿が良い者が多いからって、このクラスに問題児が多いわけではないのだ。むしろ他のクラスより優秀な部類に入る。
正路はアンリ女王のほうを向いて、
「と、いうことで少し質問してもよろしいでしょうか。何しろこちらはあまりに突然ここに来たので状況が読み込めないのです。」
といった。それに対するアンリ女王の返答は、
「喜んでお受けします。この世界のことについて何なりとお聞きになってください。」
というものであった。
ちょっと長いので(作者にとっては。3500文字位だけで2時間とかかかるなんてどんだけだよ…)いったん切ります。無駄に伏線になりそうなことが多い回でした。一日で一万文字(単行本十数ページ分)とか書けるようになりたい………無理か。
5/20色々修正。達人の文章が一番修正難しいです……




