真 14 旅立ち
相変わらずやっています。自分で書いた文章を読み返すのは作中の真ほどではないですが精神的にきついです。
別に大差はないのですが「光」属性は存在しないので「聖」属性に変えました。
5/24少し編集しました
初めての魔法を使った戦闘訓練の後、一ヶ月間(注 この世界の一ヶ月は二十五日)程同じような修行をこなした。体感時間は長すぎて忘れた。本気で倍々ゲームのように一日が長くなっていくんだぜ?普通の人間ならもう脳のスペックが追い付かないだろう。最後の方の魔循環はメイドインへ〇ンでもかかってるかのように際限なく時が加速するように感じたわ。
魔法もかなり使えるようになってきたが、如何せん空間や時属性の様なチートチートしているものはあまり使えない。魔力の消耗が激しすぎるのだ。次元斬なんて言ってたあの技(本当は名無し)も、消費が大きいのは勿論、少ししか魔法の上書きの練習をしていない俺ですら上書きできた程単純だから使い勝手も悪いし、何より数日後もう一回したら、イアさんに座標の対象を自分自身に上書きされて、体が上下別れる地獄絵図を味わったからあんな技もう使いたくないな……。
その為そういう属性の魔法よりは、ダウンバーストとか起こせる「風」の古代級魔法や、イアさんが最初の方に見せてくれた「聖」の幻影魔法、魔力さえあれば周囲全ての分子振動を止めることができる(周囲を絶対零度にする。限りなく近い温度ではなく完全に)「止」、冗談じゃなくほぼすべての物質を貫通する超高温のビームを作れる「火」と「増」の合わせ技(可能な限り高い温度でイアさんを撃ってみたが、魔力で跳ね返された。うん、知ってた)、相手が人間なら血液に少し触れただけで連鎖的に凝固を起こし殺せる「毒」の超級最上位魔法等々、チートチートしてる属性以外の方が実践では役に立つ気がする。
流石に相手を一撃で倒せるほどの魔法になると消費魔力が半端じゃなくなるのが欠点だが、術式がややこしいからか上書きはされにくい。コンマもない一瞬だがイアさんの上書きが遅れていた……気がする。
ああ、なんか俺TUEEEって感じの魔法ばっか上げたが普通に火炎放射とか水鉄砲みたいなこともできるぞ。まあイアさんとの修行ではタイムラグなしで上書きされたから無用の長物だったのだが。
さて、今日は珍しく真剣なお話があるという。普段だったら千年魔循環なんだけどな。それをそっちのけでするほどの大事な話って何だろう。
魔力が増えたお陰で連発は出来ないけど少しだけ瞬間移動出来るようになったし、自分から行ってみるか。
……というか俺って空間魔法苦手なんじゃないかな。イアさんによればまだスキルのポテンシャルを十分に発揮できてないらしいが、《理解》はどうなったんだ。修行も知識は何とか覚えているが肝心の内容が思い出せない。俺のスキルは仕事しないニートが多過ぎる……。
前の《次元斬》みたいに何か『念ずる場所に我を導け、《瞬間移動》!』の様なかっこいい詠唱とか名前とか言ってもいいけど、色々と心が折れそうだししないでいいや。
移動!
――そうして瞬間移動する様は、どこか最初に異世界に飛ばされた黒板の光と似ているのであった……。
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「ちょっと野暮用ができちゃったの」
瞬間移動した俺を待ち構えていたのはそんな第一声だった。
聞くところによると、腐れ縁の仲間達と共に因縁の相手を討伐しに行くらしい。そんな存在なら、イアさんでも死ぬことができるのではと聞くと、
「それは無理ね。世界の均衡を気にするようなやつだから、私達が敗れてもきっと見逃すはずだわ。だから今まで通りに最終的には殺せるようにしていてちょうだい」
そんな存在ならと「神か何かに喧嘩を売るんですか?」と聞くと、
「あれは『神』なんて崇高な存在ではないわ。むしろその逆。悪魔、いや邪神とでも言ったほうがいい存在。絶対に倒さなければならないわ」
とまで言う。何だか結構やばい存在のようだ。俺の会った神様とはえらい違いだな。正直大概だとは思うけど邪神、と言うまで酷くは無かったし。器合わせの黒い俺が言ってたことが気にかかるが……それでも加護の内容的にかなり巫山戯た存在だということはわかるし。
まあ、俺はいつものことをすればいいだけだ。幸い日常とか習慣をするのは得意だ。イアさんがいない間もしっかりと修練を積むとしよう。そんな決意はイアさんの次の言葉で打ち砕かれた。
「ああ、私が出かけている間のことだけど、丁度いいし、あなたに旅をさせようと思うわ」
「ふぇ!?」
「少し解析に時間が掛かったし、どっかの誰かさんの加護のせいで完全には判らないけど、今のあなたをどう強化しても私を殺すことはおろか倒すことすらできないってやっと解析できたの」
「おぅふ……」
まじか。まあイアさん殺せないのは察してたけど……と、いうか遂にこの場所から離れるのか。不安と同時に期待もこみあげてくる。異世界っぽい生活とか無縁だったしなぁ。
「今のあなたならね」
あれ?なんか悪寒を感じる。まるで全力でバッドルートに進んでるような気がするんだ。気のせい……かな?
「界渡り……してもらうわ」
「……ああ、終わった。俺の人生も普通の人よりは長く過ごせたけどこんな異世界の他の人の家で生涯を終えてしまうなんて。せめて最後に一回は家族に会いたかったな……母さん、父さん、そして妹よ。僕は今からあなた方よりもお先に旅立ちます。どうかおY「ちょっと待ちなさい」」
「流石に今すぐ界渡りをするわけじゃないわ。今のあなたじゃ絶対に無理。精神ごと時空の狭間で死に絶えるでしょうね。
そもそも界渡りって何か心の支えとなるものがあったほうがいいのよ。あなたにはそれが決定的に不足してる。
だから、私のように自分の強さでもいい。偶像崇拝でもいい。将又他の人の支えでもいい。この世界で旅してそれを取って来なさい」
そういうことか。確かに今界渡りをすると絶対に失敗する。だけど、何かの支えで、それを乗り越えられるようにしようってことか。理にかなってる。
「わかりました」
「でもその状態じゃあ何でもできちゃうから一つ制約を作るわ。簡単に言うと魔法であなたの能力を大幅に制限するものよ」
どうやらそう簡単にはいかせてくれないらしい。
「更に、来る時が来た時の為にこれも渡しておくわ」
そうして渡されたのは透き通るような青い宝石の指輪。
「これは界渡りする魔法を込めた立体精巧魔法陣よ。魔力さえ入れればすぐに界渡りができるわ。本当に機が熟した時に使うのよ。取り返しのつかない結末を見たくなければね」
何と。これは魔法陣なのか。起こす魔法は俺にとってトラウマ以外の何物でもないものだが、形状は美しく、最早芸術的とさえ言える。
そう言えば、何故界渡りができるのかというと、異世界転移自体はできないが、その前の段階の空間にならなんとか行けるらしい。その為イアさんは何千回と界渡りをしていたのだ。
「渡すものはこれぐらいかしらね……そろそろ転移させようかしら。私も鬼ではないし、何処かの街に転移させるわ」
へ?指輪だけ……だと!?ちょっと待て。
「ええっ!?他になんかないんですか?少しばかりのお金とか、それぐらい……」
「大丈夫。そんな時こそ機転を働かせるのよ。戦いが終わってあなたが真の力を開放させたら迎えに行くわ。真の力を持ったあなたにさせたいことがあるの。」
ええ……俺の人生何故か異世界に来てから常にルナティックじゃん。てかイアさんって元脳筋の片鱗か結構無茶ぶり多いな。日常はいずこ……
「最後に一ヶ月間私の下で修業した証として、あなたに名前を授けます」
そう言えばまだステータスの名前の欄は空欄だったっけ。名前を付けてもらえるなら万々歳だ。
「あなたの名前は……トラシア」
不意に体のどこかで何かが燃えるような感覚に襲われた。と、同時に今までの修行が思い起こされた。すると、あんなに地獄だった内容が、懐かしく思えてくる。そして自分でも不思議に思うほど涙が溢れてきた。もしかしてら自分でも知らない内にこの修行のある日常を好きになっていたのだろうか。それとも忘れかけていたがこれも女になったからなのだろうか。
「感慨にふけるのもいいけど、そろそろ転移するわ」
「はい!」
「少しの間だけど……さようなら」
そうして俺は、暖かな光に包まれて、消えていった。
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――後にこう思った。これが最後の分岐点だったのだと。
真実は残酷だ。知りたいことも、知りたくないことも唐突に突きつける。
もしかしたら、俺は知らない方がよかったのかもしれない。
しかし、現実は何も変わらないし、起きたことは取り返しがつかないのだ――。
はい、ということでついに動きました!次回からは真、改めトラシア(もはや女性的な名前だが納得しているという……)の旅?が始まります!(と言いたいです)




