終わりの始まり
「腹減ったな~」
そう言うと、その少年は腕時計を取り出した。
時計の針は、23時30分を示している。
あと30分で人が来て、この警備の仕事を終わらせることができる。
「にしても団長、怒ってたなー」
そう言って、少年は今朝の出来事を思い出していた。
「ゴラァァアアアア!!何しとるんだお前はーっ!今日の北門の警備、お前の担当だろうがぁぁあああ!さっさと行かんかぁぁあああ!」
「すみません、だんちょー。いまいきまーす」
ぼーっとした頭でフラフラと北門に向かう少年。その少年を怒鳴ったのは、ブローという男だ。
ブローは、古の領域警備兵団団長で、32人いる警備兵団をまとめているのだ。
「...ん?」
北門に向かっていた少年だったが、八百屋の前でふと足を止めた。
いつものように賑わっていて、問題はない。
しかし、見慣れない人がいるのだ。ブラウンのローブを着ている青年だった。フードはかぶっていない。
古の領域は小規模な領域なので、顔も知らないという人はいないはずなのだが...
「あっ、いけね。早く行かなくちゃ」
しかし、警備をしなくてはならないので、特に気にしなかった...
「そういえばあの人...結局、誰だったんだろう?」
そうしてなんとなく気になっていた所に、
「交代だ、リオン。」
と、1人の警備兵が来た。
「おっ、来たかギブ。あとはよろしくな」
「おう、じゃあな」
そう言って、帰途についたリオンだったが、あの八百屋の所で止まった。
「あの辺にいたよな~」
無論、あの男はいない。だが、
「んっ、なんか光らなかったか?」
ちょうど男が立っていた所の地面が光った気がした。
よく見てみると、黒い円のような光が...
リオンは、ハッとして辺りを警戒する。
この円はワープホール以外ありえない。
「でもなんでだ?やはりあの男がやったのか?」
警備兵に知らされていないということは...他の領域の奴がやった!?
...それじゃあ、ここは攻撃されるってことか!?
まずい、一刻も早く団長に伝えなくては...
そのとき、黒い円が強く光り始めた。
とっさに物陰に身を隠すリオン。
円の様子を伺っていると、ブラウンのローブを着た人たちが5人ほど現れた。
「...大変だ」
全速力でブローの元へ向かうリオンであった。