街には男以外にも超能力者がいる
今の俺、かっこいい!
自分行動に惚れ惚れしていた和哉は、悶絶状態から回復し、ものすごい形相になった身長170のヤンキーが起きて来たことに気がつかなかった。
「あぶない!!」
「……っ!」
女の子の叫びに振り向いた俺は、ヤンキーに胸倉をつかまれ壁に押し付けられる。足は完全に浮いてしまい、股間に足は届かない。
「さっきは、よくもやってくれたなぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁぁ!!!」
ヤンキーは左手でさらに強く壁に押し付け、右手を引いて発射準備完了。顔にはいっそう力が入り、まさにに鬼の形相と化している。
さすがに、あの鉄拳を顔面にくらうのはまずい。すぐに回復すると言っても、痛いものは痛い。途中で気絶でもしたら、女の子はどうなるのか……。
「このヤロォォォォォォォォォォォオオオオ!!!!!」
考えているうちに、強く握られた拳は最高速度で発射された。壁をけって逃れようとしたが、効果なし。このままボコボコにされれば、なす術が無い。誰が見ても詰んでいた。
「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!」
女の子の声だ。拳の届く寸前に聞こえたそれは、空気を振動させて俺の耳に届いた。
はずだっただろう。
俺には女の子の声は聞こえなかった。俺の耳に届いたのは、雷が落ちたような猛烈なノイズだった。
「アガァァァ、ァ、ァァ、ァッ。」
拳を振るっていたヤンキーは、体から白煙を上げながら崩れ落ちる。鉄建があたる寸前で目を瞑っていた俺は、何があったのか把握できずにヤンキーの体を眺める。
「……何が?」
「逃げましょう。」
女の子は駆け寄ってくるなり、俺の手を握って走り出す。俺は手を引かれるままに走る。
俺が超能力者であるように彼女も超能力者だった。