街には瞬時回復の超能力者がいる
世の中話合いで解決できる問題はごく一部だ。話合いをしても話合いにすらならない相手や、暴力を振るってくる相手、ましてや話合いが必要ないことも多い。こんなときどうすればいいか、話合いにならないのは、お互いの立っている立場が違うからだ。そんな時は、相手のフィールドに立って始めて話せる。では、暴力に対してはどうだろう。もはや、話合いを放棄した相手に対しては、言葉など意味を成さない。したがって答えは1つ。暴力は暴力によって解決出来る。
「いって~、なかなか効いたぜ」
ヤンキーの鉄拳をくらって倒れた身体を起こしながら考える。
「なんだぁ、おまえ。俺達に何かよう?」
今の動作で3人の意識は俺に向いている。しかし、彼女を逃がすには足りない。向こう側にいる男が道をふさいでいる。あれでは逃げられないだろう。
「あぁ、ちょっとね。嫌がる女の子に無理矢理迫るげすがいたものだから」
警察を呼んでも時間がかかる。その間に逃げられたらアウトだ。
「へぇ、俺達と遊んでくれんの?」
俺を殴り飛ばした男が胸倉を掴んで持ち上げてきた。ヤンキーに言葉なんて通じる訳が無い。ならどうするか?決まっている。
「あぁ、遊んでやるよ」
「がぁぁぁぁ!」
俺は、完全に足が浮いてしまう前に地面を踏ん張り、ヤンキーの股間目掛けてトオキックを見舞ってやった。ヤンキーは股間を押さえながら倒れて悶絶状態になった。しばらくは動けないだろう。男のあそこにダメージは致命的だからな。
「てめぇぇぇ、何しやがる!」
残り2人のヤンキーの内手前にいたやつが、ポッケから万能ナイフを取り出して切りかかってきた。
ヤンキーの動きは乱雑だ。横降りで切りかかってきたかと思うと、短い刃で突いてくる。しかし、いくら隙だらけの挙動をしていても、超普遍的な高校二年生でしかない俺には、その隙をつくことが出来ない。俺はこの街の高校生であって、特殊訓練を受けた兵士ではない。
「おらぁぁぁ!逃げてばっかりいるんじゃねぇぇよ!」
そう、逃げてばっかりもいられない。逃げていたって女の子を助けることは出来ない。問題を解決するには、行動をとる必要がある。
万能ナイフからの突きが来た。確かに懐は開いているかもしれないが、そこに飛び込んで打撃をする技術も考えも無い。
俺は、襲ってくる短い刃を左腕で受け止めた。いや、受け止めたとは言わないかもしれない。万能ナイフの刃は左腕を貫通していた。つまりは、万能ナイフを左腕に刺すことで受け止めたのだ。
「な……」
俺は、ヤンキーがやっちまったって顔をしている間に左腕を払って、万能ナイフをヤンキーから奪い取ることに成功した。当のヤンキーは顔を青くして何かをぶつぶつ言っている。俺は、その顔に右手のグーを叩き込み、難なく倒れたヤンキーは完全に伸びてしまっていた。
俺はナイフを引き抜き、畳んでからそこらへんに捨てた。抜いたときに血は出たがすぐに止まる。抜いてから十秒ほどで傷口は完全にふさがっていた。
「な、なんだてめぇ。」
女の子の向こうにいるヤンキーは信じられないものを見る顔ですこしずつ女の子から離れていく。
「俺はそこら辺にいる普通の超能力者だ」