街には裏路地で人助けをしようとする男がいる
とりあえずゲーセンの方へ歩き始めた俺は、ワクワクを抑えきれずにいた。小さな冒険と言うのは、いつやってもいい。日常の風景から離れて、身近でも行った事のない未知の領域へ足を踏み入れる新鮮感やその場所特有の発見は、高校二年生の探求力を強く刺激してくれる。世にも有名な脳科学者茂木健二郎は言った。人間の脳は新しい体験をする事で活性化する。今の俺の脳はまさに活性化しているだろう。
「止めてください……」
「いいじゃん、俺達と遊ぼうよ」
ん?と足を止めて横を向くと、女の子が3人の男に絡まれていた。キャスケットを深く被って、白い半袖ワイシャツに紺のスカートという、シンプルな服装の女の子はその状況に困惑している風だ。
「しゃぁねぇ、ちょっとかっこいい事して見ますか~」
そのままの意気込みでそこへ足を向ける。ゆっくりと近付いていく。
「ねぇ、いいじゃん。きっと楽しいよ」
「い、嫌です」
音も無く近づいていく。
「まぁまぁ、いいからついてきてよ」
「は、放してください」
身長170くらいの体格のいい男の背後に立って肩に手を置く。そのヤンキーが振り向いた。
「やめなさい。嫌がっているでしょう」
「ああ?」
決まった。と心の中でガッツポーズをとった俺は、顔面を殴られ後ろに転がった。