街のテレビは表を映す
二階から一階へと降りていくと、テーブルには朝食が2人分置かれていた。ご飯と味噌汁、目玉焼き、レタスサラダという、栄養バランスをぎりぎり保っているように見えるメニューと言えるだろう。しかし、人間には摂取しなければならない必須アミノ酸と言うものが必要なのだが、このメニューでそれらを全てバランスよく網羅しているかと考えると、そうではないような気がする。ただし、そんな考察は高校二年生である俺にとってあまり意味を成さない。ゆえに民意は政治に反映されにくいのだと、頭の中で社会的問題点に準えてみた俺は、自分の考えの浅はかさにため息をつき、テレビをバックに食卓に着く。
サラダを摘もうとした時、後ろのテレビが点いた。右手に緑色の液体の入ったコップを持った妹の錐香が、左手で黒いリモコンを握っていた。5日前に注文して3日前に届いた栄養ドリンクを、錐香は食事のときに必ずを飲んでいる。
テレビでは、こんな朝早くからある施設の説明をしていた。この町の電力を賄うすべての発電機関を管理しているメイツフレンズが新しく開発した発電システム、非燃料生成電力機≪Zero Output Energy≫の大まかな説明をCGでテレビ画面に張り付けて、施設の担当者は初心者でもわかるように簡単に説明していた。しかし、簡単に説明しているがゆえに、内容がブラックボックス化している。これでは、施設の経済的優位性が説明できても、科学的真実を説明できていなかった。
「ここ、日校がスポンサーになってたね」
日向高校は、今錐香の通っている私立高校だ。この街には、3校の公立高校と28校の私立高校がある。おもに超能力の研究のために設立されているもので、受験の代わりに能力の特異性と強力性のデータから、各中学校から引き抜きがある。中学校ですでに引き抜かれているものもいるが、そんなのごく少数だ。錐香は中学校の時にランク4に覚醒し、今年日向高校にリクエスト受けた。
錐香が青汁を一気に飲み干し、席に着くなり目玉焼きに箸を突き刺した。
「今日、学校でサークルだから、帰るの遅くなる」
「ああ、わかった。今日は何をすんだ?」
「今日も狩りだよ」
錐香は、日校の猟銃同好会のメンバーだ。この前も、6匹くらいの獣を仕留めたのだそうだ。
「じゃあ、俺も遊びに行こうかな」