シュミレーション
「さて、今から私とシュミレーションゲームを使って戦ってもらう。」
「確かに、実戦と違っていつも同じ動きをしたり、攻撃に失敗しないと言う点はあるが、今回は君の指揮能力を問わせてもらうからこの際、関係ない。」
将軍は私と目を合わせて話しかけている。 そんなに期待しているのだろうか。
高橋も気まずいのか、何とか返答しようと頭をフル回転させる。
「あの!」
元気よく話しかけてる。心の中は焦りすぎて文章の構成が間に合っていないようだが…
「何だ?」
「将軍さんの名前を教えてもらえませんか?」
高橋は目を合わせれなかった。
「はは!そういえばまだ名乗っていなかったな。私の名前は加藤 清政だ。 好きに読んでくれ。君の名前は?」
加藤が高橋に笑いながら自己紹介を済ませる。
「高橋です!」
「下の名前は? 高橋。」
「僕の下の名前… 」
思い出せない。なぜだ。16年間も一緒に過ごしてきた名前を。その瞬間、自分の中で焦りを覚える
「なんだ なんだ なんだ……」
何かが、頭の奥底に眠っているような感じがする。
「高橋と言ったな、まぁいい。 今は動揺しているようだが、言えるようになったら教えてくれ。無理に今言う必要はない。」
「わかりました…」
「それではシュミレーション用の部屋へ行こう。」
ここは高級士官たちが指揮能力を鍛えるための部屋だ。普段は劣勢な状況から前線を押し返す訓練を主にしている。 今回も同様だ。私が指揮する防衛陣地を突破してみよ。」
どうやらよっぽど自信があるようだ。
だが、高橋は勝てる気がした。不思議だ。まるで自分の後ろに戦いの神がいて、一手一手、完璧にフォローしてくれるような。
「突破して見せます。」
「そうか、その心意気は素晴らしいが、戦闘の指揮が未経験なのであれば私に勝つのは難しいだろう。どの指揮官も副指揮官がいるので今回は最近昇進試験に受かりたての士官を君の補佐につける。 ある程度の知識はあるので安心しろ。」
すると、部屋の扉から一人の青年が入ってきた。
「清水です!よろしくお願いします!」
彼の名前は清水というようだ。顔立ちも整っており、元いた世界であればアイドルになれるくらいだ。
「高橋と言います!よろしくお願いします!」
高橋も答える。
「二人とも、同い年なのだからそこまできちっとしなくてもいいのだぞ。」
将軍が間に入り二人の距離を縮めてくれようとする。
「さて、まずはこの椅子に座ってヘルメットをつけてくれ。」
加藤が指す椅子はゲーミングチェアのような形をしている。ヘルメットは戦闘機パイロットがつけるヘルメットのような形をしている。ヘルメットの前面が全て、シュミレーション用の画面になっている。
「つけれたか。 なら電源を入れるぞ。」
あたり一面が明るくなった。画面に映る映像は上から戦場が見える形らしい。自軍の位置は見えるが、相手の軍の位置は見えない。
「いつもしているゲームのようじゃないか。」
高橋がぼそっと口に出す。
加藤もその間準備をしている。
しばらくした後、準備ができた加藤は高橋に言った。
「では、全力でかかってこい!!」
〜戦闘〜
盤面は四角形で、相手陣地が画面の半分ほどのところに構築してある。
高橋がまず、自分の軍勢を確認する。
移動式の砲が5問、迫撃砲の部隊(一部隊8人)が2部隊、歩兵用戦闘車両が3台、マシンガンを持った歩兵が60人、狙撃銃を持った兵士が6人。他にも対戦車砲が4問、装甲車が4台と言った具合だ。そして、単発機(プロペラが一つの戦闘機)が2台。
高橋は攻め方を考える。
おそらく敵は塹壕を掘って待機しているだろう。そこに機関銃を塹壕から出して双眼鏡などで監視しているだろうから、突撃で突破するのは人数的にも難しい。
ならば、第一次世界大戦で使われた戦術を使うしかない。まずは航空機などである程度の位置を特定し、砲撃をする。相手の防衛力をある程度削いだ後に、戦車と装甲車で敵陣まで行き、あとは掃討する。兎にも角にも航空機を派遣する他ない。
航空機で敵陣のスケッチが入ってきた。
「なるほど、敵は東西に広く陣取っている。歩兵はおよそ150。多いな。だが、左の端側は、防御の人数も砲も少ない。 真ん中を攻撃しつつ、左側の方を抑える形で攻めよう。」
「清水さんはどう思いますか?」
高橋が他者の意見を取り入れようと清水にも尋ねる。
「私もそれでいいと思います。高橋さん、これから一緒に戦う仲です。お互いタメ口でいきませんか?」
「オッケー」
早速使ってみる。
そして、清水が口を開く。
「基本はそれでいいと思うのですが、対戦車砲が中心に多いので、先にこれを破壊しておきましょう。」
「わかった。それでは全隊に指令を出せ!」
シュミレーション内時間12時、移動式の砲と迫撃砲で、敵の対戦車砲部隊の破壊を始めた。
1時間にもわたる攻撃の末、対戦車部隊の6割ごろを破壊し終えた時に、右から迫り来る何かが見えた。 敵の戦車部隊だ。4両が押し寄せてくる。 さらに、左側には、敵の迫撃砲からの榴弾が降り注ぐ
「敵がこれまで攻撃して来なかったのは、おそらく、自陣の砲の位置を割り出させないためと、戦車隊が移動するための時間だったのでしょう。」
清水が推測を始める
「対戦車砲は中心に配置している。右側にいる兵士に引くように伝えよ。それと同時に対戦車砲に攻撃しに行くように!」
高橋が伝令を出す。
「我々も攻めるべきです。砲のおかげで敵の中心の防衛陣地は破壊しています。戦車がこちら側に来ているうちに装甲車で兵を送り込みましょう。」
再び進言する清水。
しかし、敵の戦車部隊が全て攻めてきているとはわからない。高橋は慎重に決めることを決断する。
「もう一度偵察に行き、そこで車両が見つからないのであれば進軍を始める。」
「また、中心からではなく左から攻める。全ての砲は左側の陣地を破壊せよ!また、戦車部隊の内の2両を敵戦車の破壊へ向かわせろ。それが終わり次第右から攻めるように。」
「了解。」
偵察部隊が戻ってきた。
そのスケッチでは敵陣には戦車がおらず、対戦車砲が1問あるだけとのことだった。しかし、塹壕の中には兵が残っており、突撃するのには難しい。さらに、左側の陣地が榴弾で破壊されている。
この時点で歩兵を12人失っている。
「高橋!戦車部隊は片付けた!攻めるなら今だ。」
「そうだな、歩兵30人を装甲車で敵陣まで運ぶ。左から攻めるぞ。砲は右を攻撃するように。戦車隊も右から進軍する。他の歩兵も右から戦車と共に塹壕へ進め!」
こうして、全ての軍を高橋は動かし始める。
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