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家の中での立場

「くそっ さみいな。 電気ヒーターはどこだ?」

寒さに耐えながら裸足で部屋の中を歩き回る。

それが今回の主人公である。 主人公の名前は高村。高校生の冬休み、初めての体験、彼女、そんなものはこの主人公とは程遠い。そんな順風満帆とはお世辞にも言えない彼だが、昔から得意なゲームがある。それが戦争系のRTSだ。さて、紹介はここまでにしておいてこの高校生の冬休みがどのようなものになるのか一緒に見ていくとしよう。


 〜家の中での立場〜

 「やべ! 空挺部隊が降りてきてるの気づかなかった!わりぃ 全滅だ」

 高橋はいつもゲームをしている仲間である加藤に申し訳なさそうに報告する。


「せっかく兵を貯めてラッシュかけようと思っていたのに〜」


悔しそうに嘆くが時すでに遅し、そんな少し抜けたところがある高橋を友人として加藤がフォローする。


「しゃーなし、A拠点だけでも取りに行くぞ。」


「空爆でも良いから支援だけでもできるか?」

加藤が凹んだ高橋のために見せ場を作ってあげようとする。兵が全滅した時にできることはそれしかないのだが…


「わかった」

 

軍が全滅した高橋のクリック音だけが虚しく響く。

 その数十分後、家では楽しそうに高橋がソファーを跳ね回っている。どうやら加藤のおかげであの絶望的状況から巻き返せたようだ。ソファーを飛び降り、リビングの冷蔵庫の中から6pチーズを取り出してそれを持ったまま部屋へ戻る。それを2つほど口の中に放り込んだ後、残りの4つをタワーのように積み上げ、高橋はもう一度モニターの画面に向き合う。

 どうやら今度はソロモードでプレイするようだ。先ほどのマッチでどうやら味方に迷惑をかけてしまった罪悪感が少し残ったらしい。 このゲームは使えるものは敵と同じなのでプレイスキルがモノを言う。自分の弱さに少し傷ついたのだろう。

 マウスのカーソルを「準備完了」という文字に近づかせる。するとなぜかいつもよりも鼓動が早くなっていく。「なんだ?」 さっきの失敗からの不安か? いや、たかだか趣味でしているゲームでそのようなことは起きないだろう。

 気にせずにクリックをした途端、頭に衝撃が走った。

「うっ」思わず声が出るほどだ。意識が遠くなりクラクラした気持ち悪い感覚が残る。


 あれからどれくらいの時間が経っただろうか?自分でも把握できていない…


「やべ! あのまま伏せてたからマッチ放棄の判定になってポイント下がってるんじゃ…」

「!?… なんだこのキーボードの大きさは、まるで城壁ののようじゃないか。」


高橋は今、現実に起こっていることに理解が追いついていない。それもそうだろう、さっきまで触っていたキーボードが城壁のように高くそびえ立ち、マウスも、何か大きな建築物を見ている気分になる。


「なんでだ!、このままじゃ家にいるのに家に帰れない」

このまま一生を机の上で過ごしてのたれ死んでいくのかとよくない考えが頭によぎる。


「いやだ!ここにこれたということは必ず変えれる方法があるはずだ」

 

高橋は早速近くを歩き出した。そう!この男、無駄に行動力だけはあるのだ。

 高橋はキーボードに上り、キーとキーの間を進んでいく。茶軸のキーボードなので、それが木の幹に見え、大きな森の中を進んでいくような気分になる。 スペースのあたりから入り、ずっと左側に合わせて前に進んできた。高橋は必死にキーボードの配置を思い出す。

 おおよそAのあたりに来た頃だろうか、一本の煙の柱が見えてきた。

 控えめに言ってこれまで感じたことのない恐怖を高橋は感じた。自分の部屋とはいえ、ここは異世界である可能性が高い。どんな野蛮な部族が住み着いているのか検討のしようがないからである。とは言え、ここで一度様子を見にいかなければ助かるものも助からない。

 ゲームの中なら偵察兵を派遣したいものだが、あいにく自分の軍勢には自分一人しかいない。

 足音を立てないように近づいていくと、ゲームの中で見たことがあるような野営陣地が見えてきた。手にはライフルを持った兵士が周りを警戒している。


「絶対に関わってはいけない部族じゃん…」


 後ろに向かって逃げようとしたその時、上空からライトで照らされた。 上にはヘリコプターが2台飛んでいる。

「終わった… お母さん今までありがとう。」

 心で感謝を伝えた。


「手を挙げて、跪け! 我々は君を殺しにきたのではない。保護しにきたのだ」

 

ヘリから拡声器越しに声が聞こえる。

高橋は命乞いをするしかないので、大人しく手を挙げて跪いた。

 その後、ヘリからロープが垂らされて兵士が降りてくる。

 彼の言う通りにして、そのままヘリの中に連行され、事情聴取のようなものが始まる


「いきなり驚かせてすまない」

 ヘリの助手席にいる隊長らしき人が声をかけてきた。


「…」


「黙り込むのも無理はない。おそらく我々の野営陣地付近に迷い込んでしまったのだろう。子供だから、家まで連れていくよ。」

 

体調が優しく話しかけてくれるが、近くに銃を持った兵士がいる。下手のことは喋れないと思い黙り込む高橋。


「自分の住所くらい言えるだろう?」

 あまりにも黙り込むので一人の兵士が訪ねてくる。


「まぁ、そう言うな。あの森の中にいたと言うことはそれなりの理由があったのだろう。」

隊長らしき人が優しく宥める。


「じ、実は、この世界に迷い込んでしまったらしくて、本当は別の世界にいたんです…」

 

高橋は藁にもすがる思いで本当のことを兵士たちに打ち明けた。と、言うよりはこうするほかなかったのである。

 嘘をついても、後でバレたらそれこそ、人生の終了を意味すると思ったからである。


「まさか…」

 

どうやら心当たりが兵士にもあるようだ。お互いに顔を見合わせて黙り込む。

隊長は、無線で自分の基地に何か報告しているようだ。


「何かまずいこをを言ったのか?」

頭の中で最悪のシナリオが通り過ぎる


「悪いが、少し我々の基地に来てもらう。」

 先ほどよりも兵士の声のトーンも口調も変わった。


「何か深刻なことがあったのだろう。」

 高橋はこう考えるしかない。 先ほどまで家の住人だったのが、今では捕虜という立場になっている。

 少し涙目になった高橋、彼の心は何かに縛り付けられたような感情になる。不安からだろうか。

 ヘリが大きな音を立てて、空の中を高速で過ぎていく。

 


読んでくれてありがとうございます!

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