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不憫すぎる多喜さんの異世界漂流記 ~呪われた最弱パーティが意外と強かった件~  作者: タキ マサト
第3章 試練の旅路

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22 話 多喜さんの別れと呪われの子(名前が似てるだけだった件)

 倒れたグリフォンのそばで誰もが動けないでいた。

 地面に手をついて空を見上げながらバンダナは大きく息を吐いた。


「マスターが呪いを解いてくれたんすね!」

 バンダナは、感極まったように多喜を見た。


「さすがに今回ばかりは、もうダメだと思った」

 マッチョが一気に疲れた表情で座り込んでいる。


「わたしも気絶しちゃって……生きてるのが不思議なくらい」

 スミレもお玉を見つめながら神妙な顔つきになっている。


「ぺぺたん! 呪い解いたよ! 街のみんなも大丈夫だよ!」

 山田多喜はまずそれをぺぺちゃんに伝えたかった。


 ぺぺちゃんを見て親指を立てる。

 神殿を指差し鏡のジェスチャーをしようとした時、左肩が痛みを起こした。

 悶絶して左肩を抑える。


「さっきグリフォンにやられた時か……まずは安静だな。冷やしたいけど。」

 マッチョが真剣な表情でトレーナーらしいところを見せる。

「手先の痺れや痛みは?」

 続けて尋ねる。

 首を振る多喜。


「医者にすぐ見せた方がいいけど」

 多喜彦はピレさんを見た。

 二人のやり取りを見て意味が伝わったのか、ピレさんは座ったまま首を振った。


 マッチョは神官服を脱ぎ、その布地を四角く裂いた。

 応急的に三角巾を作り、左腕を吊っておく。


「脱臼だったらいいけど、無理して整復したら神経を傷つけるからな」

 左腕を吊られた肩は幾分楽になっていた。


「骨折だったら痛みはこんなもんじゃない」

 ズキンズキン痛むが、そう言われるとそんな気がした。


 多喜は、スミレにぺぺちゃんに呪いが解けたことを通訳するように頼む。


「えー? ぺぺちゃんに? そんな難しいこと無理よ! なんとなく話してるだけなんだから、きっと伝わらないわよ」

 スミレは肩をすくめてぺぺちゃんを見た。


 ぺぺちゃんは自分のことを話しているのが分かった様子だった。

 空を見上げて呪いが解けたことを確認したかのように指差し、多喜の方を向いて笑顔を見せて頷いた。


『マスタァ——ありがとう』

 ぺぺちゃんは、多喜にそう呼びかけた。


 後半は現地語の言葉だったが、ありがとうの現地語はなんとなく覚えていた。


 日の傾きかけた空は、雲ひとつなく晴れ渡っていた。

 ピレさんは、一息つくと早く神殿に行きたそうにソワソワして立ち上がった。


 多喜も立ち上がる。


 みんなに神殿の鏡を見てもらいたいのだ。

 鏡の住人のあの子ども。


 バンダナなら、あのクソガキから何か有益な情報を引き出せるかも知れない。


 あとはスミレの帰還だ。


「この先に鏡がある。スミレさん、今だったらあのクソキモババアは出てこないはず」

 多喜は鏡の住人の一人である子どもの話をした。


 何かの魔法で老婆を追い払った。

 呪いの力が弱まっているらしいと伝える


「バンダナ、マッチョ、いいよな?」

 二人に確認する。

「今だったら、スミレさんもギリシャマッチョマンに会えると思う」

 バンダナが請け負った。

「寂しくなるけど、また東京で会おう!」

 マッチョも同意する。


「いいの?」

 少しの不安と寂しさ、期待が入り混じった顔をするスミレ。


「俺らは割れた鏡が治ったら、また村に返しに戻らないといけないから」

 多喜彦が答える。


「あの時の罪滅ぼしと思ってくれて構わないっす」

 鏡を割って呪われた時のことを謝罪するバンダナ。


 六人は鏡の前に立つ。


「大変だったけど、三人と会えて良かった。ぺぺちゃんもピレさんもありがとう」

 ぺぺちゃんとピレさんとハグするスミレ。 


 そしてマスターの頭に向かってお玉を上げ、コツンと優しく叩いた。 


「最後、本当に食べられたかと思ったんだからね、みんなにもう心配かけちゃダメよ」

 スミレの眼は潤んでいた。


「もう大丈夫。ここに来て短い間だったけど、色々吹っ切れた」

 バンダナとマッチョに向かって言った。


 ピレさんが布を取る。光り輝く鏡面が現れた。


「待って!」

 多喜が叫んで呼び止める。

「スミレさん! ありがとうございました」

 多喜は頭を下げた。

「スミレさんのお玉で、何度も助けられました」

「もう……泣かせないでよ」

 スミレは目に涙を溜めていた。

 

「今度、美味しいもの作って三人に食べさせたい! 必ず来てね! インスタもやってるからDMで連絡して」

 スミレの目から涙が溢れ出す。

「じゃあ帰るね……」

 鏡からギリシャマッチョマンが腕を伸ばす。


「お料理研究家スミレチャンネルよ! インスタもフォローしてね!」

 鏡の先は蛍光灯が灯った屋内だった。

「ご飯食べに来るのよ! 約束だからね!」

 スミレはその蛍光灯の光の中に消えた。


「行っちゃった……」

 ほっと胸を撫で下ろした三人だった。

 多喜は、子どもが出てくるかもと不安だった。


 この後、鏡が割れるはず。

 勇剛の時と祠の時がそうだった。

 しかし、割れる気配がなかった。


 嫌な予感がしつつも、鏡を覗く三人。

 その時、鏡に子どもの顔が映った。


「あはは! また会ったね!」

 子どもが、無邪気に笑って手招きをしている。


「ようこそ三人のタキさん!」

 三人が気がつくと、暗闇の空間にいた。


 子どもが目の前に浮かんでいる。


「三人のタキさん?」

 どきっとして顔を見合わせる三人。

「知らなかったの?」

 子どもはにやにやしている。

「やまだたき! さとうたきじ !たなかたきひこ!」

 子どもが手を叩いて笑う。

「名前だけで集めたのか?」

 マッチョが呆れた。

「知らなかった? きゃは!」

 子どもが腹を抱える。

「なんだそりゃ……」

 マッチョがうなだれた。

「そんな、ダジャレみたいな理由で……俺たちこんな目に……」

 バンダナが膝から崩れ落ちた。


 こんな理由で……

 三人は脱力した。


「俺のせいだった……すまん」

 多喜は俯いて、絞りだすようにつぶやいた。


「だってさ、タキって名前で探したら……いーい負のチカラ持ってたんだもん」

 仕方ないじゃないかという顔をする子ども。

「でも——」 

 次の瞬間、子どもの目が冷たく光った。

「二人のタキさんは、——ただの生贄」

 子どもがバンダナとマッチョを見て冷酷な微笑を向けた。 

「おじさんの負のチカラをさらに高めるためのね!」

 ゾッとする三人。

「あっはっはっ」

 手を叩いて喜んでいる子ども。


「スミレと勇剛も生贄だったんだよ! バアサンが欲張ったんだね」

 満面の笑みで、災難だったねと付け加えた。


「だってね、ここの世界の人たち。もうみんな無気力で、チカラ取れなくなってるんだもん」

 子どもは教えたくて仕方がないというふうにヒソヒソと話す。


「……四本ツノとグリフォン……あれでマスターが死んだら、どうするつもりだったんだ?」

 多喜二が疑問をぶつける。

「心配いらないよ! だってタキさんには印があったからね! 死ねないよ!」

 多喜は、両脇にできていた痣を思い出しゾッとした。


——あの痣、俺にしかなかった……

 こいつら、マジで殺しに来てた……

 全員死なずに生き残れたのは奇跡的だった……


「お前は何が目的だ?」

 マッチョが凄んで言う。

「バアサンに言われてみんなの不幸のチカラを集めてるだけだよ! タキたち不幸すぎて、僕のコレクション入りに追加したよ! きゃは!」   

 子どもが指を鳴らす。


 暗闇に、最初の四本ツノの時の腹痛場面やスミレのお玉で鏡が割れた場面がフラッシュバックのように流れた。


「お前はなぜ老婆を追っぱらったんだ? 仲間じゃないのか?」

 子どもの顔が悲しそうに歪んだ。

「……仲間?」

 その声はどこか虚ろだった。

「バアサンはね、ボクのこと道具としか思ってないんだ」

 子どもが不気味に笑う。

「でも、一人ぼっちよりマシなんだ、ずっと一人だったから……」

 

「ボクが不幸を集めてきて、バアサンがそれを呪いに変える。ずーっとずっーと永遠に繰り返すの」

 三人の背中に鳥肌が立った。

「でもね、バアサンは気づいてなかったんだ」

 子どもの目が冷たくひかる。

「ボクがね、ちょっとずつ、チカラ取ってたんだよ」

——寄生虫……?

 その笑みには、人の感情が欠けていた。


「あんな弱ってるバアサン初めて見た! そっちの方が面白いじゃん!」

 うんざりな顔をする三人。


「もうね、退屈すぎるの。バアサンも分かってくれないんだ」

 一瞬悲しげな顔をして目を伏せる。

「だから——」

 子どもの表情が一変する。

「そんなことよりボクと遊ぼうよ!」

 無邪気な笑顔。

「もういい! 早く出せ!」

 マッチョが嫌悪感も露わに吐き捨てるように言った。


「いつでも出れるよ、”約束”はしていないからね」

 悲しそうな顔で言う子ども。

 

「でも話せて楽しかった! 今度は遊ぼうね!」

 気がつくと三人は鏡の前にいた。


 鏡の世界での長い会話は、現実では一瞬の出来事だったようだ。


 ぺぺちゃんたちには驚いた様子はない。 

 いつの間にか鏡には亀裂が入り、布がかけられているところだった。


 時間の感覚が抜け落ちている。

 多喜は背筋に冷たい汗を感じた。


 布をかけると、ピレさんは急いで祭壇裏に回った。


 祭壇の先に扉があるのも村の作りと同じだった。

 ピレさんとぺぺちゃんは扉を開けて中の人に声をかけているようだった。


 やがて数人の神官の服を着た人が出てきた。

 みな痩せこけてはいるが安堵の表情があった。


 彼らは仲間と抱き合って再会を喜びあい、涙を流している。


 その中の二人を見ると、ぺぺちゃんはパパ! ママ!と抱きついた。

 両親は信じられないという顔をして涙を流していた。


 いつからいたのか知らないが、あの巨大グリフォンが神殿前にいたのだ。

 生きて再び会えるとは誰にも思えないだろう。

 

 ぺぺちゃんは、三人を両親に紹介した。

 バンダナについては特に長く説明していた。


 両親は、特にバンダナに向かって何度も頭を下げ、手をとって早口で何かを捲し立てるように言った。

 何を言われたか分からないが「そんな関係じゃないっす」と否定してしまうバンダナだった。


「大団円かな?」

 多喜はマッチョに言う。

「とりあえず、もう敵もいないだろうし、呪いも解けたし、あとは鏡を村に持って帰るだけかな」

 日本か、とつぶやく多喜。


「帰ったらすぐ医者いけよ」

「異世界土産って怪我しかないのかー」

 がくっとうなだれる多喜だった。


 いよいよ、帰還の時は近づいていた。




※バンダナのメモ

【鏡の謎】

 日本とこの世界をつなぐが、鏡はただのポータルではない。

 映る者の心を反映する。鏡の世界には複数の住人が存在する。       

 老婆の呪いに打ち勝つと鏡にかけられた呪いが解けて輝きを取り戻す。

 鏡から出入りすると鏡の世界の内側が割れる。

 その割れた鏡に住人は出てこられない。

 翌朝鏡復活、物理的に割れたわけではない。

 物理的に割れると呪いが解き放たれる。

                        

鏡の住人

・老婆・・・呪いの元。ネガティブな精神状態で現れ、呪いでチカラを奪う。

・マッチョマン・・・ポジティブで帰還を導く。老婆と敵対?

・子ども・・・老婆と協力。不幸を探して老婆にチカラを渡している。寄生虫?



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