黒衣の来訪者
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カイ「誰だ?」
宿屋の扉が勢いよく開き、三人は身構える。
DC「DC。あたしのコードネーム。本名は教えない。……スライムドラゴンと戦ったのって、君たちでしょ?」
DC「あれ、あたしの試作品なのよ」
3人「えぇ……」
リーディ「試作品!?」
DCはふふんと鼻を鳴らした。
DC「情報探知魔法を街中にばら撒いてたら、面白い戦闘データが引っかかったの。追跡したら、君たちだったってわけ」
エリシア「情報探知って、あれ……」
DC「盗聴? まぁ、言い方次第かな?」
悪びれる様子もないDC。
カイが目を細める。
カイ「それで……俺たちに何の用だ」
DC「興味があるの。“悪魔の部位”。ねえ、それって本物なんでしょ?」
カイ「……ああ」
DCの目が爛々と光る。
DC「やっぱり! 本物だと、こんなに波長が違うんだね」
DC「私はね、闇魔法の研究がしたいの。でも人間界じゃ限界がある。だから──」
DC「魔界に行く。同行させてもらう」
リーディ「勝手に決めるな!」
リーディ「なんであの子、あんなに偉そうなの!? ていうか、何者!?」
DC「聞こえているぞ、子犬」
リーディ「子犬じゃないよ! 狼だよ!」
宿屋の空気はすっかり混沌。
そんな中、DCがコトリと封筒をテーブルに置いた。
DC「はい、次の依頼。受けておいた」
リーディ「勝手に!? 内容は……」
エリシアが手に取って中を確認する。
エリシア「E級クエスト、“墓地の様子を調査”。簡単そうね……」
DC「うんうん。簡単簡単、ふっつうの依頼よ~」
DCはなぜか笑いをこらえている。
そして次の日、郊外の古墓地へと向かう四人。
……1時間後。
カイ「ぜぇっ、はぁっ……なんだよこれぇ!!」
エリシア「完全に、アンデッドの巣じゃない……!」
墓地の中には、腐乱したアンデッドの群れ。しかも硬い、強い、数が多い。
カイ「おいDC! これはE級じゃないぞ!!」
DC「気づいた? まぁ……B級だけど、いい練習になったでしょ?」
カイ「てめぇぇぇ!!」
DC「だって、力を試すって言ってたじゃない? さ、もう一息!」
DCはほぼ戦っていない。
戦場の隅で魔法式の観察や、戦闘記録の筆記に没頭していた。
そして──
エリシア「クリア、かな……」
全身ボロボロになりながらも、なんとか討伐を終えた三人。
カイ「あとは報告だけか……」
宿へ戻る帰り道。
──ガサガサッ!
リーディ「スライムドラゴンだぁぁぁ!!」
見覚えのある、紫に濁ったスライム状の竜型。
森から飛び出してくると、こちらに突っ込んできた。
カイ「ちょっと、また出たのかよ!!」
DCが一歩前に出る。
DC「……ああもう、私はもうここには戻らないし。片づけるか」
そして、詠唱もなく指を鳴らす。
DC「《ファル=イルゼ=エル》」
雷と炎が同時に空気を裂く。
スライムドラゴンは悲鳴すら上げず、その場で燃え尽きた。
エリシア「え……?」
リーディ「あっさり……?」
カイ・エリシア・リーディは目を丸くする。
DCは髪を払いながら背を向けた。
DC「さ、行くわよ。帰って報告しないと」
リーディ「DCには……逆らわないでおこう……」
数日後、ギルドカウンターにて
受付嬢「クエスト完了報告ね。えーと、代表者名は……あら?」
受付嬢が、DCの書類を見て笑顔で言う。
受付嬢「ヒマワリ・ダークチャームさんですね!討伐ありがとうございます!」
DC「言うなあああああああ!!」
DCが顔を真っ赤にして封筒を奪う。
DC「だからDCって言ってるでしょ!? その名前は禁止!」
受付嬢「え~、かわいいのに」
DC「死ぬほど嫌なの! 二度と言うな! ぜったい!」
カイたちは顔を見合わせ、そして思った。
──この旅、ますますカオスになる予感しかしない。
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