ギルドの扉、そして《彼女》は現れる
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森の奥で遭遇した“それ”は、明らかに異常だった。
粘液でできた不定形の体。竜のように長くうねる尾と、角のような突起。
だが、全身がスライムのようにぬらついており、見たこともない奇怪な生物だった。
カイ「くそっ……なんなんだあの化け物!」
リーディ「スライム? ……じゃないよな、あれ!? ドラゴンの形してたってば!」
エリシア「ひとまず逃げましょう! 今の私たちじゃ勝てない!」
三人は命からがら逃走し、ボロボロの姿で数日後、ようやく大都市《ベル=ゼスタ》へとたどり着いた。
◆
都市の門をくぐった瞬間、衛兵が眉をひそめて近づいてくる。
衛兵「おい、そこの三人。……ずいぶんとひどい有様だが、魔物にでも?」
カイ「ああ……いや、なんだかわからねぇ。スライムみたいな……けど、ドラゴンの形してた」
衛兵「……は? そんな魔物、聞いたことがねえがな」
衛兵は訝しげに見送ると、それ以上は詮索してこなかった。
三人は真っ先にギルドへと向かう。
◆ギルド本部・ベル=ゼスタ支部
古びた石造りの建物。だが中は活気に満ちていた。
受付の女性に声をかけ、事情を話すと、二階の会議室へと通される。
ギルド職員「なるほど、魔界へ向かうために、魔導士を仲間に……ですか」
カイ「そうだ。戦力は俺と、剣も魔法も多少できるエリシア。それと、サバイバルに強い獣人のリーディ」
リーディ「どうも~!」
ギルド職員「……えっと、目的が“魔界への突入”と“悪魔の部位集め”?」
カイ「……ああ」
ギルド職員「…………」
しばらく沈黙の後、職員は机を叩き、立ち上がった。
ギルド職員「ご協力いただける方を募ってみます。……ただし、保証はできません」
その日の夜、ギルドの掲示板に、彼らの依頼が張り出された。
“熟練の魔導士を求む。危険な旅。報酬交渉可能”――
だが翌朝。
ギルド職員「……すみません、誰も名乗り出ませんでした」
エリシア「そりゃそうよ……魔界に行くなんて、正気の沙汰じゃないもの」
リーディ「うぅ~ん、やっぱり魔導士って怖がりなんだなあ~」
カイ「……そうか」
言葉少なに、三人はその日、宿屋へ戻った。
部屋に入った瞬間、沈黙が満ちる。
カイ「魔界だなんて無謀すぎる、って……やっぱり思われたんだな」
エリシア「あなたは、間違ってないわ」
カイ「でも俺は……全部、終わらせるって決めた。逃げるつもりはない」
リーディ「じゃあ、まだ旅は終わってないんだね!」
ふっと微笑んだその時だった。
コン、コンと宿のドアをノックする音が響く。
カイ「誰だ?」
慎重にドアを開けると、そこに立っていたのは――
???「……ふぅん。あんたたちが、魔界に行きたいっていう変わり者?」
紫がかった黒髪。片脚を機械のような義足に変えた、ローブ姿の少女。
その顔には確信と嘲笑が浮かんでいた。
???「あたしの名前は【DC】。」
カイ「……なんで、ここが?」
DC「ギルドの掲示見たわ。あれ、あたしへの挑戦状か何かかと思ったのよ」
その口元には、不敵な笑み。
DC「面白そうじゃない。あんたたちの“無謀”、乗ってあげようか?」
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