森を知る者
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「エリシア、今夜は何を食う?」
「……期待しないで」
「おう、任せろっ!」
満月に照らされた森の奥。
カイたちは大都市ベル=ゼスタへと向かう山道を歩んでいた。地図上では一本道だが、実際には獣道に近く、野営が必要な旅だった。
「もう歩き疲れたよ……ねぇ、休もう?」
エリシアがため息をつくと、リーディがにんまり笑って言った。
「じゃあ、オレがサバイバルってやつ見せてあげるね!」
ぴょんっと飛び跳ねたリーディは、森の中へと駆け込んでいく。
「お、おい! どこ行くんだアイツ!」
*
――30分後。
「ふっふっふ! 見よ、この完璧な仮眠所っ!」
リーディはどや顔で、土魔法で作った半ドーム状の寝床を指差した。枝と葉で覆われ、内側はふかふかの苔。風よけにもなり、保温性も高い。
「……すごいじゃない」
エリシアが素直に感心すると、リーディは尻尾を得意げに振った。
「しかも! はい、これ!」
差し出されたのは、赤紫の木の実と、大きめのキノコ。すでに毒味済みらしく、リーディは実をひとつ口に放り込んで言う。
「うまいよこれ。ちょっとすっぱいけど」
「……おまえ、見かけによらず役に立つな」
カイも一口食べてみて、思わず唸った。
「うん。悪くない」
「むふふ、もっと褒めていいよ~?」
その夜、三人はリーディのサバイバル術に助けられながら、静かに焚き火を囲んだ。
炎が揺れる中、ふとカイがつぶやく。
「……俺たち、どうなるんだろうな」
「魔界へ行くってことだけでも、正気じゃない選択よ」
エリシアの言葉に、カイは羽根を持つ背中に目をやる。
「だけど、この力がある限り、追われ続ける。なら――全部集めて、全部終わらせる」
「オレは面白そうだからついてくよ! 魔界とか、なんかワクワクするし!」
リーディが無邪気に笑う。それを見て、カイもエリシアも小さく笑い返した。
……だが、平穏は長くは続かない。
森の奥で、何かが“ずるり”と音を立てた。
「……今の、何の音?」
エリシアが眉をひそめた瞬間だった。
草をかき分けて現れたのは――
スライム状の、ドロドロとした竜のようなシルエット。
目はなく、代わりに粘液の表面に無数の気泡が浮かんでいる。体の中心には、紅く脈打つ“核”があった。
「な、なんだよアイツ!?」
「まさか……魔物!?」
リーディが怯えた声を上げ、カイは咄嗟に武器を構える。
「来るぞ!」
咆哮のような音が響き、スライムドラゴンが一行へと襲いかかってきた――!
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