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超短編小説『千夜千字物語』

『千夜千字物語』その15~共同生活

作者: 天海樹

ある日一人の女性が家に転がり込んできた。

名前をリカと言った。

彼氏に別れを告げられたと同時に

家から追い出されてしまったという。

あまりにも突然で、

そこそこの給料ではすぐに新居にというわけにもいかず

路頭に迷っていたところをレイが声をかけたらしい。


3人での共同生活が始まる…と思ったら、

レイは“海外転勤になったから”と言って

当面の荷物をまとめ

「大丈夫だよ」

と、どちらにも通じるひと言で済ませて

あっさり出て行った。


リカは二人きりの時間を作らないよう

休日は朝から出かけたり、

僕は僕でキッチンを使わないよう

毎日のように外食をしたりと、

気を遣い合った共同生活は

なかなか辛いものがあった。


それでもたまに連絡をとるレイのアドバイスと時間が

二人の距離を縮めてくれた。

徐々にではあるけれど、

交代で食事を作り一緒に食べたり、

週末は家で映画を見たりで出かけたりと

1年もすると共有する時間が増えていった。

レイとのリモートも3人でするようになり、

このまま楽しい時間が

ずっと続いていけばいいのにと思っていた。

でも、そんな男女の共同生活は

いつまでもそう思うようにいかなかった。

リカと食事することも週1回ぐらい、

映画も休日のお出かけもだんだんと減っていった。


そんな陰りを見せた生活が続いている中、

リビングで一人テレビを見ていると

リカがやってきて目の前に座った。

「明日ここを出て行くから」

そう言った。

考えていなかったわけじゃない。

そうなる日が来るだろうとは薄々思っていたので、

そこまで驚かなかった。

「レイが帰ってくるまでいればいいじゃない」

「そうはいかなくなっちゃった」

と寂しそうにリカが呟いた。

沈黙が流れる中、

俯いているリカの目から大粒の涙がこぼれた。

振るえるリカの肩を抱いて

「出ていかないでくれ。好きなんだ」

そう告白した。

リカは首を振り

「そうはいかない、レイに悪い」

「レイには僕から話すから」

そう説得した。


翌日、恐る恐るレイにすべてを話した。

すると

「よかったー!」

と思いがけない答えが返ってきた。

聞けば、

「遠距離になれば浮気はともかく

 そのうち別れちゃうのかなぁと。

 だったら変な女に取られるよりは、

 大事な友達と付き合ってもらったほうが

 私的にも納得できるから」

ということらしい。すべてレイの計画だったのだ。

「それにリカとならお似合いじゃないかと思って」

まんまと乗せられたのには腹が立つが、

いい出会いをくれたレイに感謝した。

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