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黒颯のエレティコ ~忘れ去られた神の力で凌辱シナリオをぶっ壊す~  作者: サイリウム
原作崩壊後:神魔の覚醒

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106:合体だ!


(何事も、基本から。そうですわよね、ヘイカ。)



師の教えを思い出しながら、戦闘に入る直前に二つの魔法を起動する。


自身の夫であるティアラにあの女神たちの相手を任された以上、相性が悪かろうが、一人で勝利するのが難しかろうが、どんな手を使ってでも“時間稼ぎ”し“勝利”に向かって足掻き続けるのが妻の役目です。だからこそ、最初に使うのは、『時空間魔法』一択。眼前の存在を時間という枠組みから切り離すことが出来るのか、もしくはその体内に空間を繋げ、初手で撃破することが出来るのかを、調べます。



(……だめ、ですわね。まぁ予想はしてましたが。)



一瞬だけ世界の時間を止めましたが、眼前の2柱を置いていくことはできませんでした。同時に開いた空間も神秘によって弾かれてしまいます。近接職に比べれば圧倒的に速度で劣るのが私達後衛職。神らが前衛か後衛かは判別がつきませんが、先の攻防でこちらよりも早い可能性が高い。故に時空間魔法で少しでも時間を稼ぎたいところだったのですが……。やはりそう上手くはいきません、よね。


即座に魔法を解除し、術式を組み直すことで防御に転じる。自身が出来ることを、相手が出来ないと思い込むのはただの愚か者。師の教え通り、この身に時間と空間への抵抗と成り得るバフを施した後。次の手に進むため、魔力を練り始めます。



「……黒いのと白いのが他を。それで後ろにいた君が私達二人を相手するつもりなの? それともあっちの方にいる、美味しそうだけど、新鮮じゃない2頭も加わるのかな? 知ってる、ミサガナ。」


「知るわけないでしょうが。ッチ! 思ってたよりも削られるのが早い! ゴジケサ! さっさと神秘寄越しなさい!」


「わかってる。……私も、胃の中綺麗にしちゃお。」



ティアラから聞いた、女神の情報。白く声を荒げ背の高い方の女神が、“吸収と分身”を司る王国の女神であるミサガナ。そして背が低く大人しそうな雰囲気をしながら人を真に家畜としか見ていない黒い女神が、“補食と放出”を司る帝国の女神、ゴジケサ。


私がそれを阻止するよりも速く、ゴジケサがミサガナに何かエネルギーの塊を渡した瞬間……。こちらに目が向けられる。そしてその周辺に開かれるのは、12の真っ黒な口。直後に放たれるのは、黒い閃光。



(ッ!)



本能的に不味いと判断し、練り上げていた魔力を使い速攻で防壁を組み上る、。


何重にも組み重なった魔力のタイルが私を守る球を形成していき、向けられた攻撃を分散させ、弾いていく。本来ならそこからこの防壁を変化させ攻勢に転じるのがセオリーなのですが……。相手の威力が高すぎて、ちょっと難しそうですわね。脳のリソースこそありますが、変に防壁を動かして何かするのならば、単に攻勢魔法を打ち込んだ方が早そうですわ。


そう考えながら、一番体に馴染んでいる魔法。『火球の魔法』を大量に生成し、黒い閃光に向けて射出していく。


瞬間にほんの少しだけ感じる、“焼ける”匂い。



(……この黒い攻撃。やっぱり物理。)



防壁から帰ってくる感触から、うっすらと理解していましたが……。やはりこの黒い閃光は物理的なもの。


しかも人に近しい何かを高圧力で放出してみていいでしょう。けれどそれが真になんであるのかを、私は視認することが出来ません。幾ら魔力で肉体を強化しても、そのスペックは本職のティアラやエレナに比べれば劣ります。故に動体視力が足りない私ではこの黒い閃光が何かまでは判別できないのですが……、予測は出来ます。


十中八九、人の死体。


そんな私の様子を見て何かを理解したのか、少し笑みを浮かべながら飛来した火球を手で打ち消すゴジケサ。



「すごい、ちょっと熱かった。やっぱり旬が過ぎちゃってるのは確かだけど……、熟成されてて逆に美味しいかも。決めた、アレはちゃんと自分の口で食べよ。ミサガナ、やって。」


「ッ! こっちは忙しいのに! わかったわよ200でいいわよね!」


「うん、大丈夫。」



奴らがそういった瞬間、ゴジケサの背後に現れるのは王国の女神であるミサガナの分身体。数も寸分たがわず、200。その存在たちが一斉にその神秘を形成し……、放たれるのは、光の柱。こっちは黒と違って、魔法的なもの。確かにその威力も速度も申し分ないが、物理じゃないなら12分に対処できる。


即座に魔力を叩き起こし、くみ上げる術式は“拡散”。自身の魔力を強く広範囲に放つことで、外部からの魔法的攻撃を弱め、分散させる技術。そして同時に、私たち後衛職にとって命とも呼べる“距離”を詰められた際、この魔力が反応することでいち早く気が付くことが出来るようになる。


だからこそ……、ッ!



「……耐えるんだ。やっぱり、美味しそう。」



飛び散らした魔力の端、それが一瞬にして掻き消えたことから、選択するのは防御。まだ圧縮し終えていない魔力すらもかき集め、眼前に防壁を生成する。そして同時に腕に魔力を流し、クロスして防御。


瞬間目の前に現れるのは、その両腕を真っ黒にし肥大化させた、ゴジケサ。その自身の体よりも大きそうな腕で、殴りかかってくる。


一瞬だけ拮抗する防壁だったが、魔力の圧縮が甘かった。すぐに割られ、腕で防御する羽目になってしまう。何とか受け止めることは出来たが……、早く離脱しないと、腕を持ってかれる。



「『炎氷断の魔法(ギアフォタイテ)』!」



選択するのは、自身が初めて扱えるようになった『複合魔法』。無理矢理魔力を込めたせいで威力こそあるが、その質は悪い。粗だらけで、飛距離もない魔法。案の定すぐに見抜かれてしまい、拳を振ることで破壊されてしまう。けれど一瞬でも時間を稼ぐことが出来たのは、確か。転移魔法を起動し、即座に後方へと離脱する。



(近接、しかも上位。……あまり相性はよくありませんわね。)



息を整え魔力を練り直し、同時に罅が入ったのであろう腕を回復させながら、思考を廻す。おそらく、ミサガナだけ。後衛職寄りであり魔法攻撃を主にするようなミサガナであれば、個人でも押し切ることが出来た。けれどおそらく近接戦が主体なのであろうゴジケサ相手だと、押し込まれてしまう可能性が高い。


彼女が持つ“補食と放出”。おそらく放出の権能を打撃のインパクトのタイミングと合わせ、破壊力を上げてくるタイプ。さっきはインパクトを防壁に持って行ってくれたおかげか防ぐことが出来たが、この肉体に持ってこられると確実にやられてしまう。



(けれど防壁でガチガチに固めようとしても、あの複製体が邪魔をしてくる、というわけですか。)



物理に最適な防壁と、魔法に最適な防壁。両者ともに片方の属性には弱くなってしまうという欠点がある。勿論両方を防げるものも存在してはいるのですが、先ほど挙げた二つに比べれば時間が掛かり過ぎてしまうのは確か。それをあちらが理解しているからこそ、連携して来たのでしょう。


複製の光柱を防げば、ゴジケサの黒い巨腕は防ぐことが出来ず、逆もまたしかり。先ほどは何とかなりましたが、連続して撃ち込まれれば流石に負けます。時間さえあれば、確実に押し切れるとは思うのですが……、ッ!



「逃げられちゃった。なら今度は、もっと強く、速く、沢山……、ぅぷッ!?!?!?」



次の攻撃に備えるため、急いで魔力を練り上げようとしたところ……。急に、ゴジケサの顔色が変わる。それまでのこちらを見定める様な、捕食者の眼をしていたその顔が急激に悪く成って行き、紫から青を通り越して、白に。思わず耐えきれないと言ったように、口から黒いヘドロの様なものをとんでもない勢いと質量で、下へと吐き出してしまう。…………ばっちぃ。



「おぉ、やっぱ胃袋に限界あるのね。慌てて口閉じたみたいだけど……、アユティナ様の神秘をそのまま叩き込まれた感覚はどうかな?」


「ティアラ!」


「ごめんフアナ。ちょっと遅くなっちゃった。」



そう言いながら羽ばたきの音と共に現れるのは、私の旦那様。少し後方へと視線を向けてみれば、至る所に空間が開かれ、そこから大量の神秘が込められた様々な物品が吐き出されている。位置的にゴジケサが設置した固定砲台、いや口を覆いかぶさるようにおいていたのだろう。


役目を終えたそれらを閉じながら、ティアラはゆっくりと槍を振るう。



「さ。私が前衛引き受けるから……。任せるよ?」


「ッ! もちろんです!!!」


「ぉぷ。ぉ前、お前か。私の溜め込んだご飯、吐き出させたのは……! ゆるさないッ!!!」


「あら、まだ元気そう、もっと胃洗浄しましょうねぇ!!!」



強い怒りを表しながら声を荒らげるゴジケサに、いつも通りの口調でそう叫ぶティアラ。瞬時にその姿が掻き消え、その拳と槍をぶつけることで再度出現する。そしてその背後からゴジケサを補助しようとまた光の柱を準備しようとするミサガナの複製体たち。


……ティアラにせっかく時間を作ってもらったのです。



(今こそティアラへの“愛”! それを世界に示すとき!)



魔力を編み上げ、自身の全身に循環させる。そして起動するのは時空間魔法。世界を構築するシステム自体に干渉するのではなく、そのシステムから自身を切り離す。感じる時間、それを徐々に遅くしていき、より私が扱える時間を増やす。


さっきまで目で追いきることが出来なかったティアラとゴジケサの動きが目で追えるようになって行く。


彼女が作ってくれたこの時間で、すべてを終わらせる。



起動するのは、神すら消し飛ばすことが出来ると謳われた『複合魔法』。その極意。



これを生み出したのは、3000年前の大陸の覇者。魔によって世界の平穏を保ち続けた男が編み出したもの。術式の複雑さと、組み上げるまでの必要時間の長さから実戦向きではないと評価されたソレを、ここに産み落とす。起動するのは、この世に存在するすべての属性を付与した魔力球。そのすべてを、ほんの一点。眼では視認できない程の小さな点に集約していく。魔力球の大きさ、込める魔力量、その圧縮率。そのすべてが同一でなければ、発動しない。


起こすのは、疑似的な“創世”。


その長い時間を魔の研鑽に使用したヘイカですら爪の先程しか生成できない世界。私程度では再現こそできても、視認できないレベルの欠片しか作り上げることが出来ない。けれど、世界が生み出すそのエネルギーは、神ですらも貫く御業となる。


この世に産声を上げた、もう一つの世界。それを全てエネルギーへと変換し、叩き込むのは、終焉への叫び。



「『終の極光(エルフィナンデ)』」



ティアラが離脱した瞬間に、叩き込むソレ。


一瞬で世界が、極光に呑まれていく。確実にゴジケサの腹部を貫いたそれは、私達の視界を塗りつぶしていった。






 ◇◆◇◆◇





(ブ……。)


(あ、うん。それは同意。絶対フアナのこと本気で怒らせたらダメだわ。)



圧倒的な光量の中で、タイタンとそう話す。すでに視界は確保できず、ただ白しか見えない様な状態。あのとんでもない威力の魔法のせいで、ちょっと目がやられちゃった感じですね……。ゴジケサが口を閉じてくれたおかげで、私も空間を閉じることが出来た。余剰分の神秘を体と目の保護に使ってるから耐えられてるけど、コレ見ただけで死ぬ人いるんじゃないの?


いやとんでもない魔法使えることは知ってたけど、これほどとは……。怖すぎ。時間さえあったらどうにでもなるってのは本当だったんですね。



(……ブ?)


(あ、ほんとだ。なんか羽ばたき音とちょっとした悲鳴聞こえたね。)



タイタンの指摘からちょっと目に廻し神秘を多くして、周囲の様子を探ってみると……。なんか光の中でエレナが大暴れをしていた。この光で埋め尽くされた世界の中だから、多分直感だけで敵がどこにいるとかを把握して切り飛ばしてる感じだね、うん。それでちょうどさっき本体に向かって【終槍ディフェクト】をぶち当てて、『あ、これやっぱ本体だ。めった刺しにしておこ~』となってるところだ。


神もこの光には耐えられなかったようで、視界が奪われた隙に分身体全滅どころか本体までボロボロにされるとか……。いと哀れ!


そう考えていると、ようやくフアナの魔法によって生じた光が収まってくる。このまま押し切ってもいいけれど、相手が追い込まれた時に何をしてくるのか解らない以上、こっちも万全の体制でいるべきだろう。私もちょっと神秘量が不安だし、エレナは多分視力を失った状態で飛び回ってた。フアナもさっきの魔法で流石に息切れしてるみたいだし……、少しでも回復する時間が必要だ。


二人に集まるように指示を出しながら、下半身を吹き飛ばされ地面へ落下していくゴジケサに向かって【鋼の槍】を“射出”。地面に叩きつけながら、その周囲を大きく囲う様に、【鋼の槍】を突き刺し、檻を作っておく。私の意図を察してくれたのか、同様に全力でミサガナを叩き落としたエレナ、檻をさらに強化するように魔法を行使したフアナと合流する。



「申し訳ございません、ぶっつけ本番でしたのでちょっと狙いがズレてしまいましたわ。頭部を狙えば確殺出来ていたものを……。」


「うにゃ、前ミサガナとやった時心臓ぶっ壊して溶岩の中に叩き込んだけどなんか生きてたから多分難しかったと思う。とりあえずナイス攻撃。」


「そうね。でも正直打つ前に目を閉じろとかは言ってほしかったわ。おかげさまで私もこの子も完全に目が焼ききれちゃったんだけど。」


「あ、ごめんなさい。す、すぐに回復しますわね。」



エレナが余剰分の活力をフアナに送り、フアナがそれを魔力に変換することで回復魔法を起動。私達を癒しの力が包み込んでいく。若干ヤバかった私の眼も少しずつ治って行き、世界に元通りの光が戻ってくる。……というかエレナたち、完全に目がやられた状態で戦えるとかヤバいわよね。その“勘”便利すぎん?



「……それで、どうするのティアラ。致命傷をかなり叩き込んだけど、確殺出来たって思えないんだけど。」


「それも“勘”? まぁ心臓吹き飛ばしても生きてるからな……。たぶん相手の“神秘”削り切るか、相手の体全部吹き飛ばすかぐらいしないと無理っぽい。フアナ、さっきのアレもう一度出来る?」


「できなくはないですが……。かなり制御が難しく消費魔力も多いです。狙いを定めきれるとはとても、何度も打てるものではありませんし……。」


「了解。……んじゃまぁ削り切る方針で行きましょうか。」



私とエレナの全力。そこにフアナのアレをぶち込めば消し飛ばせるような気もするが、フアナ的にはかなり博打になるようだ。私に対して言葉を濁すと言うことは、かなりあの魔法が難しいのだと理解できる。たぶんあれミスって味方に当たればオリアナさんでも難しそうなやつだし、フレンドリーファイアを避けるためにも“消し飛ばす”作戦は一旦保留にしておこう


となれば残るは持久戦、相手が神とは言えない様なレベルまでその神秘を削り取り、不死性を取り除いた後にぶち殺してしまえばいいだけ。どれだけかかるか解らないけれど、こっちの方が確実に殺し切れる。



そう考えながら、地上へ。即席で作り上げた檻の中へと、全員で降り立つ。



待っていたのは、息も絶え絶えと言った表情の2柱。ミサガナの方はエレナにめった刺しにされたせいで体中から神秘が溢れ出ているし、ゴジケサの方は下半身を全て失っている。けれどまだ生きている所、流石神って感じなのだろう。



「う~ん、二人ともいい顔になったねぇ? 年貢の納め時、なんじゃない?」


「ッ! 家畜風情が!」


「おおこわい、ならもっと噛みついてあげるッ!!!」



見た目はかなりボロボロだが、感じる神秘量は依然として多い。それを示すようにミサガナの傷がどんどんとふさがっているし、ゴジケサの下半身も再生を始めている。まともに動けなさそうな今のうちに、ダメージを稼いでおくに限るだろう。そう判断し、動き出す私達。


けれどその攻撃が到達するよりも速く、奴らが持っていた神秘たちが、爆発する。吹き飛ばされることはなかったが、足の進みを止めるのには十分な威力だった。



「……ミサガナ。」


「ッ! ……わかったわよ。受け入れるわ。」


「ふふ、そうでなくっちゃ。」



奴らがそういった瞬間……、ゴジケサの口が大きく開かれ……。



ミサガナが、補食される。



不味いと思ったときにはもう遅く。神が、飲み込まれてしまった。


始まるのは、原作と同じ“合一化”。


既に私がシナリオを全て破壊してしまったようなものだけど……、収まる場所は同じなのか。2柱の神が、一つの存在へと変化していく。私が空間から鋼の槍、エレナが斬撃を飛ばし、フアナも魔法での攻撃を行うが、一切効果が見えない。


神を飲み込んだ神は、徐々にその肉体を作り替えていく。“吸収と分身”。“補食と放出”。両方の権能が同時に機能し、混ざり合っていく。食べたモノを放出し、放出したものを吸収し、その力で分身を生成し、それを捕食する。延々と成長し、神としての神秘を濁らせ続ける真の化け物が。この大陸を食らい尽くす邪神が今、産み落とされた。





『あは、これが……。アタシ。』





肉体の大きさは大きく人から外れ、3m程。これまで純粋な神秘以外を貪り食っていたせいか、体中の至るとこから様々な生物の特徴が飛び出ている。両生類の舌の様なものや、何かの蹄、人の手や足の様なものが飛び出ており、かろうじて人の女性の体形は保ってはいるが、どう足掻いても“神”の見た目ではないだろう。


二人とも元の見た目は神としてまぁ頷けるような体を持っていたのに、これじゃもう誰がどう見てもバケモノだ。


頭部には大きく伸びた角、爛々と輝く赤い目。両手の先からは様々な生物の爪が太く長く伸びている。そして自身の新しい肉体に喜んでいるのか、大きく歪んだ口。その奥には不揃いな牙たちが無数に。


感じる神秘も……、だんだんと淀み、“神秘”ではなくなっていく。総量自体は確かに上がっているが、すでに眼前の存在は、神ではない。



『力が、溢れ出てくる。あは、こうならもっと、早く一緒になってるんだった。……ちょうどいい家畜がいるし、ちょっと試そう。とっても光栄ね、喜んで死になさいな。』



奴がそういった瞬間、その体に蠢く“何か”が脈動し、その指に集まる。大きく振るわれたそこから発せられるのは、不揃いな斬撃。けれどその威力と速度は、決して油断出来るものではない。致死の、一撃。



(ッ!)



即座にフアナが圧縮していた魔力を解放し、炎と氷の斬撃を飛ばし相殺しようとするが、一切弱まらずに消し飛ばされてしまう。その間に私とエレナが同時に動き、体内に眠る力を全て槍に叩き込むことで迎撃しようとするが……。一瞬だけ拮抗し、そのまま吹き飛ばされてしまう。


ギリギリ時間を稼げたのか、フアナがもう一度斬撃の魔法を連続して放つことでなんとか打消しには成功したけど、思いっきり押し込まれてしまった。無理矢理地面に槍を突き立てながら勢いを殺し、何とかフアナよりも後ろに下がらずに済んだけど……。ちょっとまずいかも。



「む、無茶苦茶強くなってない……? あのまま無理矢理押し切った方が良かったか。」


「ティアラ! どうする!?」



エレナの声で、思考を廻す。


なんか思ってる以上に強いんだけど……。これもしかしてアレか? 原作じゃまだ6,7年後だしその間もせっせとクソ女神がいろんな場所から神秘以外の力を吸収した上に、最終決戦直前に大地から無理矢理力を吸い上げた後に合体したもんだからから、とてつもなく神秘が濁ってたけど、今はまだそこまでしてないせいで神秘の質がそれよりもマシなのか? 神の力である神秘はそれ相応に強いし、もしかして原作よりも強くなっちゃったタイプ?


ぴゃぁ、どうしよ。



(多分、時間経過で一回弾けるはずだ。今の奴はどんどんと大きくなっていく力に酔っている。神秘が神秘じゃ無くなって行ってることも、それが及ぼす結果も理解せずにどんどん増やしてる。)



つまりどっかのタイミングで、完全に神格がぶっ壊れるタイミングが来る。そしたら大幅に弱体化するはず。


……けどそこまでどんどんと強くなっていくわけで、正直ちょっと持つ気がしないね。うん。くっそ! これが原作とかだったらもっと一杯人が居て、ローテとか組みながら何とか出来たかもしれないのに! ティアラちゃんバカ! なんで木っ端みじんに壊しちゃったの!



「ティアラ、このままじゃ勝てない。たぶん後ろで控えてくれてるママたちを入れて互角レベル。どんどん強くなってるし、決めるなら早くしないと。」


「ですわね、ヘイカやアユティナ神も見ていらっしゃるとは思うので“もしも”のことは起きそうにありませんが決断は早い方が良いかと。スタミナなどの問題もありますし。」



どうやら二人とも同じ考えの様で、最低でも後ろで見守ってくれてる二人を入れてどうにか時間を稼ぐべきという方針のようだ。確かに、そっちの方が確実性があって良さそうなんだけど……。


うん。やっぱり最初の予定通り、三人で全部決着付けたいよね。


オリアナさんたちに頼っちゃうのは自分たちで出来ませんでしたって泣きついてるようなものだからちょっとやだし、ヘイカとかアユティナ様に頼っちゃうのはもうなんかダメじゃん? あの人ら規格外だからさぁ。それに、クソ女神どもも自分の力に酔っているのか一人で楽しくしてくれてるみたいだし、まだちょっと考える時間はあるのよ。この間になんかすごくいいアイデアが……。


あ、せや。



「あっちが合体したのなら、こっちも合体すればいいんじゃね?」


「「…………え?」」


「うんうん、流石ティアラちゃん大天才。」



昔偉い人が言ってた『変態には変態をぶつけるんだよ!』と同じように、『合体には合体で抵抗』すればいいのだ。幸いティアラちゃんはタイタンといっつも合体してるから、その辺への知識は万全! というか神秘っていう万能不思議ちゃんパワーがあるから何とかなるはず!


というわけで行くぞタイタン! いったん分離! そこから神秘大解放ッ!



「「えっ! ちょ! まじでやるの!?」ですの!?」



私を中心に、莫大な神秘が起き上がり、点を貫く柱が形成されていく。


明らかにアユティナ様から【面白そうだし頑張れー!】という声援と共に大量の神秘を送って頂いたような気がするが、とりあえず気にしないでおこう。そんなことよりも今は合体だ!


私、フアナ、エレナの体が少しずつ神秘へと溶けていき、新しい体が生み出されていく。あと普通に範囲内に居ちゃったタイタンとエレナの愛馬も対象となるようで、すべての肉体と精神が合わさり、一つの体へと集約されていくのが、理解できた。



タイタンとの合一化よりも、より密接に、強く結びつく感覚。




全身の細胞一つ一つが、神秘に満たされ、私を素体とし、完全に“人”を超える。




私達を追う様に地上から飛び出してきたオリンディクスと、ディフェクト。


その二本の槍を手に取り……、この神秘すべてを、吹き飛ばす。


現れるのは、幼子の肉体ではなく、完成した大人の姿。


三人の特徴を受け継ぎ、三色の髪を靡かせ、黒と白の巨大な2対の翼をもつ存在。



人を越えた究極の存在。合体超人の、完成だ。




「しゃぁ! 大成功! やってやるぜぇ!!!」




(あっあっあっ! ティアラと、ティアラと一つにッ!!!)

(……ダイレクトに感情伝わってくるからもうちょっと静かにできない?)

(ブブブ(お前も大変やな。))

(プ……(いえいえ、そちらこそ……。))




……ちょっと! 今ティアラちゃん体動かしてるんだから、静かにしてくださーい。あとフアナ。あんまり興奮するんだったら分離するからね? わかった?



((((はーい))))



ならよし。んじゃ、名前は何にしようかな? 一応このまえアユティナ様と合体したときみたいな“アユティアラ”みたいなのはあるんだけど、そうなるとタイタンとエレナの愛馬ちゃんの名前もいれないとだよね。……というか愛馬ちゃん? くん? の名前私知らなかったや。今更だけどなんて言うの?



(プププ(あ、自分ビエントって言います。いつもウチの主人がお世話に……))

(ブ(こいつにそんなの言わなくていいぞ。ティアラだし。))



あ~! タイタンいけないんだー! そんな子はおやつ抜きにするんだからね! ……というか普段の合一化の時よりもすごく思考が解り易くなってるよね。エレナも『え、ビエントそんな喋り方だったの?』って驚いてるし。……っと、そうなるとなんか名前がごっちゃになっちゃうな。


あ、いいの思いついた。これでいい? あ、大丈夫。よかった。んじゃ、気を取り直しまして……!




「天が呼ぶ! 地が呼ぶ! 人が呼ぶ! 悪を倒せと私を呼ぶ!」


「黒颯のエレティコ・ティアラフォーム! ここに爆誕、ってね!!!」




さぁクソ女神ども! ぶっ殺してやんよ!





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