6 仮面の男
悪役令嬢や聖女が登場してくる話が大好きで、読んでいるうちに楽しくなって、自分でも書いてみたくなり挑戦しています。
2作目はSFものです。
舞台は宇宙ですが、内容は恋愛中心かな?
今回は恋愛要素全くない話ですが……。
最後までお付き合いいただければうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
アキラはボトルから声の主へと視線を上げた。
眺めの黒髪、長身の細見。
全身を覆うような黒い服に白衣を羽織っていて、一瞬、聖職者のようにアキラには見えた。
一番特徴的なのが顔というかその表情だった。
微笑むように細められ固定されたような三日月を思わせる目。しかも、不健康そうに色が白く、その表情は仮面のように感じられる。
「セレスシャルだよね。君」
男が間合いを詰めてくるのでアキラは横っ飛びにベンチから離れる。
今までの経験から『こいつはやばい!』とアキラの頭の中で警告音が鳴り響いている。
「そんなに怖がらないでくれ。私はここで医学を研究しているんだが、セレスシャルに興味があってね。
長年調べているけれど、変化前のセレスシャルに会うのは初めてだよ」
絡みつくような視線で身体中を見られている感覚に嫌悪感と恐怖が湧く。
アキラは視線を振り払うように腕を大きく振ると男を無視して歩き出す。
後ろから見られていると思うだけでぞっとする。
男はあきらめずに付いてきているのが感覚でわかる。
どうしてくれよう……、アキラが考えを巡らせながらも歩き続けていると後ろから左腕をつかまれた。
「話をしたいのだが、私の研究室へ来てくれないかね?」
男の丁寧にこちらに許可を取るような口ぶりなのに有無を言わせない威圧的な態度。
怒りが恐怖を振り払ったかのような拒絶の言葉がアキラの口から飛び出る。
「いやだ!! 離せ! てめえ、気持ち悪いんだよ!」
男の表情がほんの少しだけ変わるが、手は離さない。
アキラは振りほどこうとするが逆に男に引き寄せられる。
「君は……セレスシャルのことを知らないのかな?」
ぼそっと囁かれ、アキラははじかれたようにめちゃくちゃに暴れて男の手から逃げようとする。
「何をしているんだ!」
近くにいた研究者らしい人達が集まってくる。
「ダグラス、その子は嫌がっている。離しなさい!」
「君達にはわからないだろうが、この子は貴重なサンプルなんだよ」
「だからと言って何をしてもいいわけではないだろう!」
数人のおじさん研究者達が男を引き離す。
そのうちのひとりがアキラに近寄ると「もう行きなさい」と一緒に歩きだすように促してくれる。
歩きながらハンカチを渡される。
「怖かったね。君、泣いてるよ」
おじさん研究者に指摘され、アキラが目元に指をやると濡れている。
「……ありがとうございます」
涙を拭いてハンカチを返そうとすると「あげるよ」と言われる。
「後であいつによこせって言われそうだからね」
後ろで数人に囲まれてまだ騒いでいる男をちらりと見ておじさんは言った。
「……ありがとうございます」
おじさんは駐車場まで送ってくれ「怖い思いをさせてすまなかったね」と謝ってくれた。
読んで下さりありがとうございます。
次も頑張ります!